「親の介護を10年やったのに、兄弟と平等な相続分なのは納得できない」——遺産分割協議でよく出る不満です。法律上、こうしたケースを救済する仕組みが寄与分(民法904条の2)です。
ただし、寄与分が認められるハードルは想像以上に高く、通常の親孝行レベルでは認められません。実務での認められ方を整理します。
寄与分の3類型
1. 家事従事型(事業手伝い)
被相続人の事業に無償または低報酬で従事した場合。
- 農業・自営業を継続的に手伝った
- 家業の経理を長年担当した
2. 財産出資型
被相続人に金銭を渡した・財産を譲渡したケース。
- 親の自宅購入に頭金を出した
- 親の借金を肩代わりした
3. 療養看護型(介護)
被相続人の介護を無償または低報酬で継続的に行った場合。
- 認知症の親を10年間自宅で介護
- 寝たきりの親の食事・排泄ケアを毎日
認められるための要件
寄与分が認められるには以下を満たす必要があります:
- 特別の寄与であること(通常の親族関係を超える)
- 無償または低報酬であること(給与をもらっていれば寄与分なし)
- 継続性があること(数か月では不十分)
- 被相続人の財産維持・増加への貢献が客観的に示せること
介護型の算定例
家裁実務での介護型寄与分の算定式(一例):
寄与分 ≒ 介護の日当 × 介護日数 × 裁量割合(0.5〜0.8)
たとえば、要介護3の親を5年間自宅介護した場合:
- 介護報酬基準で日当8,000円
- 日数 5年 × 365日 = 1,825日
- 裁量割合 0.7
- 寄与分 ≒ 8,000円 × 1,825日 × 0.7 ≒ 約1,022万円
ただし家裁の判断は事案ごとに変動します。
必要書類・証拠
寄与分主張には以下のような客観的証拠が必要です:
- 介護日記・写真・動画
- 医療機関の診断書・要介護認定通知
- 介護費用の領収書(自費購入したもの)
- 通院・通所の付き添い記録
- 訪問看護・デイサービスの利用記録(介護量の客観化)
- 仕事を休んだ・退職した証拠
「何もない状態からの主張は通りにくい」のが実務の現実です。介護を始めた時点から記録をつけることが望まれます。
特別寄与料(民法1050条)
2019年7月施行の改正民法で新設された制度。相続人ではない親族(例: 長男の妻)が被相続人の介護をした場合、相続人に対して特別寄与料を請求できます。
- 請求期間: 相続開始・相続人を知った時から6か月以内、または相続開始から1年以内
- 期限が短いため、迅速な対応が必要
主張の進め方
- 遺産分割協議で任意の合意を目指す(最善)
- 不調なら家庭裁判所の遺産分割調停へ
- 調停不成立で遺産分割審判
家裁実務は書面の証拠を重視します。感情論ではなく、客観的な記録で主張を支える必要があります。
まとめ
寄与分は「介護を頑張ったご褒美」のような曖昧な制度ではなく、特別性・無償性・継続性・客観性を満たす必要があります。介護を始めた段階から記録をつける、領収書を保管する、医療機関の証明を取るなど、証拠化を意識した行動が大切です。
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