「祖父の名義のままだった実家を、父が亡くなったので整理したい」——これはまさに数次相続の現場です。複数世代の相続が未処理のまま重なっており、登記・税務・遺産分割協議の全てが複雑化します。
数次相続と代襲相続の違い
混同されやすいですが、実務上は別物です。
| 概念 | 状況 | 法的取扱 |
|---|---|---|
| 代襲相続 | 被相続人の死亡前にその子が死亡 | 孫が直接相続人(民法887条2項) |
| 数次相続 | 被相続人の死亡後に相続人が死亡 | 二段階の相続が連続発生 |
代襲相続は1回の相続として処理されますが、数次相続は複数の相続を順番に整理する必要があります。
数次相続の典型例
- 1995年: 祖父死亡(一次相続)→ 登記未了
- 2024年: 父死亡(二次相続)→ 父名義にもなっていない物件を子が相続
この場合、登記簿上の所有者は依然として「祖父」。子は祖父→父→自分の3段階を一気に整理する必要があります。
必要な戸籍書類
数次相続では戸籍収集だけで時間がかかります。
- 祖父の出生から死亡までの全戸籍
- 一次相続人(父・叔父叔母等)全員の戸籍
- 父の出生から死亡までの全戸籍
- 二次相続人(自分・兄弟等)全員の戸籍
- 一次相続人で既に死亡している人がいれば、その人の戸籍も全て
地方の旧戸籍は手書きで判読困難なケースもあり、司法書士に依頼するのが実務的です。
中間省略登記
数次相続では、登記実務として中間省略登記が認められる場合があります。
- 通常: 祖父→父→子と2回登記が必要
- 中間省略: 祖父→子と1回で登記
要件は「中間取得者(父)が単独相続している」など限定的で、遺産分割協議書の書き方も特殊です。司法書士に相談した上で活用するのが安全です。
相次相続控除(相続税)
10年以内に2回相続が発生した場合、二次相続の相続税から一定額を控除できる制度があります(相続税法20条)。
- 第一相続から第二相続までの経過年数に応じた控除率
- 第一相続で課税済の財産に対する二重課税を緩和
数次相続では、被相続人(父)が祖父の相続税を納めていた場合、子は相次相続控除を活用できる可能性があります。
進め方
- 登記簿で現所有者を確認
- 祖父・父それぞれの全戸籍を収集
- 全段階の相続人を確定
- 現存する全相続人で遺産分割協議
- 遺産分割協議書作成(中間省略登記の検討)
- 法務局で相続登記申請
- 必要に応じて相続税申告(相次相続控除の検討)
まとめ
数次相続は「相続が連鎖して放置されている」結果として発生します。3年以内の相続登記義務化(2027年3月31日が施行前相続の期限)により、未登記のまま放置するリスクが大きくなりました。
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