Matterportとは——3Dバーチャル内覧の基礎知識
Matterport(マターポート)は、専用カメラや対応スマートフォンで空間をスキャンし、インターネット上に「3Dデジタルツイン(実空間の完全な仮想複製)」を作成するクラウドサービスです。内覧者はブラウザ上でドールハウスビュー(部屋全体を俯瞰した3D表示)・ウォークスルービュー(自分で歩き回る体験)・平面図ビューの3モードを自由に切り替えながら、物件の間取りや奥行きを体感できます。
従来の写真撮影・360度パノラマと最も大きく異なる点は「空間の寸法情報が自動取得される」ことです。内覧者はスクリーン上の任意の2点間の実寸を計測でき、「ソファが入るか」「冷蔵庫置き場の幅は足りるか」を自分で確認できます。この自己解決型の体験が、後述する問い合わせ品質の向上に直結しています。
公開データで確認できる導入効果
Matterportの効果については、出典のはっきりしない数値がインターネット上に多数流通しています。ここでは出典をたどれる公開データだけを整理し、それぞれ「誰が・いつ・どの市場で」計測したものかを明記します。
① 成約価格と成約期間(米国MLSデータの統計分析)
| 指標 | 3Dツアーあり物件の結果 |
|---|---|
| 成約価格 | 4〜9%高い(市場により差) |
| 成約までの期間 | 最大31%短い(南部市場) |
| 別分析(同一都市圏700件) | 成約が20%速い・成約価格が4.8%高い |
- 調査期間:2016年11月〜2019年11月
- 対象:米国4市場(南部・南西部・北西部・中西部)のMLS掲載143,575件(うち3Dツアー付きは3,935件)
- 実施者:Kelley Anderson氏、K.T. Manis博士(テキサス工科大学)
- 出典:Matterport 公表資料
② 問い合わせ数(豪州ポータルの集計)
| 指標 | 3Dツアーあり物件の結果 |
|---|---|
| 電話での問い合わせ | 95%増 |
| メールでの問い合わせ | 65%増 |
- 出典:オーストラリアの不動産ポータル realestate.com.au(2016年)/Matterport 公表資料
③ 買主・売主の意識調査
| 質問 | 回答 |
|---|---|
| 3Dツアーがあれば現地を見ずに購入してもよい | 買主の55% |
| 3Dツアーを提供する仲介会社に乗り換えたい | 買主・売主の約80% |
| 3Dツアーがあると購入意欲が高まる | 買主の92% |
- 調査時期:2020年1月/対象:米国の不動産購入者1,000名・売却者1,000名/実施者:Matterport
- 出典:Matterport 公表資料
これらの数値の読み方
上記はいずれも米国・豪州市場のデータです。 商習慣・ポータルサイトの構造・仲介の仕組みが日本とは異なるため、日本国内および個別物件で同等の効果を保証するものではありません。ROCKEDGEでは効果を断定的な数値でお約束することはしていません。
一方で、これらのデータに共通する傾向は日本でも実務感覚と一致します。3Dツアーで間取りや状態を十分に把握してから連絡してくる見込み客は、「とりあえず内覧してみる」層よりも意思決定が速い、という点です。自社での効果は、後述の方法で実際に計測することをおすすめします。
コスト構造——導入費用と回収期間の試算
初期費用の内訳
| 項目 | 費用の目安 |
|---|---|
| Matterport Pro3カメラ(購入) | 約60万〜75万円 |
| 同カメラ(レンタル・1物件あたり) | 3万5,000〜5万円/物件 |
| スキャン撮影代行(専門業者に依頼) | 3万5,000〜4万円/物件 |
| Matterportクラウドサブスクリプション | 約5,800円〜/月(スターター)〜 約30,000円〜/月(プロ) |
カメラを自社購入する場合、月間5物件以上をコンスタントに撮影できれば1年以内に撮影代行費用との差額を回収できる計算です。物件数が少ない場合は「代行依頼+サブスクなし」で運用するほうがコストを抑えられます。
効果は「自社の数値」で検証する
3Dツアーの費用対効果は、撮影費そのものよりも「現地対応がどれだけ減るか」で決まります。検討者が事前に間取りと状態を把握したうえで来場するため、条件が明らかに合わない物件への案内が減り、担当者の移動時間を別の業務に振り向けられます。
ただしその削減幅は、取扱物件の種別・エリア・営業体制によって大きく変わります。他社の削減率をそのまま自社に当てはめず、次の手順で自社の数値を取ってください。
- 同じ条件・同じ価格帯の物件を「3Dツアーあり」「なし」に分けて掲載する
- 掲載後30日間の問い合わせ数・現地案内の回数・成約までの日数を記録する
- 3〜6ヶ月・10件以上たまった時点で平均を比較し、撮影コストと見合うか判断する
この検証を先に回しておくと、カメラを自社購入するかどうかの判断材料にもなります。
物件種別ごとの効果差——何に使うと最も効果的か
すべての物件でMatterportが同等の効果を発揮するわけではありません。物件の特性に応じて優先度を判断することが重要です。
効果が特に高い物件タイプ
- 中古戸建(築15年以上): 間取りの複雑さや経年劣化の状態が把握しやすく、「現地に行かないと不安」という心理的障壁を下げる効果が大きい
- 収益・投資用物件: 遠方在住の投資家向けに効果的。東京物件を大阪・名古屋・九州在住の投資家に販売する際、現地訪問の手間がなくなることで商圏が実質的に全国に拡大する
- 高額物件(5,000万円以上): 購入検討期間が長く「何度も見返せる」ことへのニーズが高い。夫婦・家族での合意形成にも役立つ
- リノベーション済み物件: 改修のクオリティを余すなく伝えられ、価格プレミアムの訴求力が上がる
効果が限定的なケース
- 土地のみの売買(建物スキャンの対象がない)
- 築1〜2年の新築で写真品質が既に高い場合
- 1Kや1Rの小型賃貸(写真3〜5枚で十分な場合)
賃貸管理・空き家活用への応用
売買仲介だけでなく、賃貸管理や空き家対策の文脈でもMatterportの活用が広がっています。
賃貸管理での活用例
空室募集中の部屋を3Dスキャンしておくことで、以下のメリットが生まれます。
- 退去時・入居時の「現況記録」として活用し、原状回復トラブルを未然防止
- 客付け仲介会社への情報提供がURLひとつで完結
- 遠隔地に住む法人担当者が社宅として検討する際の決定打になる
空き家・古民家の活用例
管理が難しい遠隔地の空き家でも、一度スキャンしてしまえば「デジタルで保存された状態記録」として機能します。将来の売却・賃貸・リノベーション業者への見積もり依頼時に「とりあえず見に行く」往復コストを削減できます。
ROCKEDGEでは空き家の活用・売却相談に際してこうしたデジタル調査の手法も取り入れており、遠方オーナーの方でも状況を正確に把握した上での意思決定をサポートしています。
導入前に確認すべきチェックリスト
Matterportを効果的に運用するには、撮影技術だけでなく運用フローの整備が必要です。導入前に以下の点を確認してください。
撮影・掲載フロー
- スキャン担当者の教育・習熟期間(最低5〜10物件の練習が必要)
- 掲載サイトのMatterport埋め込み対応可否(SUUMO・LIFULL等は対応済み、自社サイトは確認要)
- 撮影許可に関するオーナー・売主への事前説明
データ管理
- クラウド上のデータ保管期間(プランによって異なる)
- 売却・成約後のデータ削除ポリシー
- 個人情報保護の観点から、室内写真の公開範囲の設定
費用対効果の定期検証
- 3Dツアー付き物件と非掲載物件の成約期間・問い合わせ数を月次で比較
- 撮影コストが回収できているかの確認(3〜6ヶ月で検証が目安)
詳細は専門家へご相談ください。
ROCKEDGEへご相談ください
東京・銀座を拠点に、1都3県(東京・埼玉・神奈川・千葉)で不動産売買・賃貸管理・リフォーム・相続不動産対応まで、住まいに関する総合的なご相談を承ります。
- 売買仲介・賃貸管理
- リノベーション・各種リフォーム
- 相続不動産・空き家管理
- 防犯カメラ・特殊清掃(SONAIE)
- Matterport 3Dバーチャルツアー撮影