相続税の基礎控除完全解説|3,000万円+600万円×法定相続人数の計算方法

相続税の基礎控除(相続税法15条)の仕組みと計算方法を徹底解説。法定相続人の数え方・申告要否の判定フロー・課税遺産総額の計算手順・2015年改正前後の比較まで網羅。

「うちは相続税がかかるのか」——相続が発生したとき、多くの方が最初に気になる疑問です。その判断の起点となるのが相続税の基礎控除(相続税法15条)です。遺産の総額が基礎控除額以下であれば、相続税の申告自体が不要になります。

この記事のポイント
  • 基礎控除 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数(相続税法15条)。
  • 課税遺産総額(遺産総額 − 非課税財産 − 債務 − 葬儀費用 − 基礎控除)が0以下なら申告不要。
  • 養子は実子がいれば1人まで、実子がいなければ2人まで法定相続人として算入可能。
  • 2015年(平成27年)改正で基礎控除が6割に引き下げられており、以前より課税対象層が広い。
  • 申告期限は相続開始を知った日の翌日から10か月以内(相続税法27条)。

基礎控除額の計算式

相続税法15条の規定

相続税の総額を計算する場合においては、同一の被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した全ての者に係る相続税の課税価格の合計額から、3,000万円と600万円に当該被相続人の相続人の数を乗じて算出した金額との合計額を控除する。

計算式:

基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

計算例

法定相続人の構成人数基礎控除額
配偶者のみ1人3,600万円
配偶者+子1人2人4,200万円
配偶者+子2人3人4,800万円
配偶者+子3人4人5,400万円
子2人(配偶者なし)2人4,200万円

法定相続人の数え方

基本的な法定相続人の範囲(民法887条〜890条)

相続順位と法定相続人は以下のとおりです。

順位相続人備考
常に配偶者婚姻届のある配偶者のみ(内縁は不可)
第1順位子(直系卑属)養子・認知した子も含む
第2順位父母(直系尊属)第1順位の相続人がいない場合
第3順位兄弟姉妹第1・2順位の相続人がいない場合

相続放棄者・相続欠格者の扱い

相続放棄した人は初めから相続人でなかったものとみなされますが、相続税の基礎控除の計算上は法定相続人の数に含めます(相続税法15条2項)。これは相続放棄による基礎控除額の減少を防ぐための規定です。

養子の算入制限

ケース算入できる養子の数
実子がいる場合1人まで
実子がいない場合2人まで

特別養子縁組(民法817条の2)による養子および配偶者の実子(連れ子養子)は、実子として扱われます。

相続税申告の要否を判定するフロー

① 遺産総額を概算する

② 非課税財産・債務・葬儀費用を差し引く

③ 基礎控除額(3,000万円+600万円×相続人数)を計算する

④ ②の金額 > ③の金額 → 申告必要
   ②の金額 ≤ ③の金額 → 申告不要

注意:配偶者の税額軽減・小規模宅地等の特例

「配偶者の税額軽減」(相続税法19条の2)や「小規模宅地等の特例」(措置法69条の4)を適用する場合は、最終的な納税額がゼロでも申告が必要です。特例を受けるには申告書の提出が要件となっています。

課税遺産総額の計算手順

ステップ1:相続財産の総額を計算する

財産の種類具体例
本来の相続財産不動産・現金・預貯金・有価証券・貴金属・骨董品
みなし相続財産死亡保険金(被相続人負担分)・死亡退職金
生前贈与財産相続開始前3年以内(2024年1月1日以降の贈与は順次7年に延長)の贈与財産
相続時精算課税相続時精算課税制度を選択した贈与財産

ステップ2:非課税財産・債務等を差し引く

非課税財産の例

  • 生命保険金の非課税枠:500万円 × 法定相続人の数
  • 死亡退職金の非課税枠:500万円 × 法定相続人の数
  • 墓地・墓石・仏壇・仏具(日常礼拝用)
  • 国・地方公共団体・特定公益法人への寄附財産

差し引ける債務・費用

  • 被相続人の借入金・未払税金
  • 葬儀費用(香典返しは除く、初七日費用は含む)

ステップ3:課税遺産総額を求める

課税遺産総額 = 相続財産合計 − 非課税財産 − 債務 − 葬儀費用 − 基礎控除額

この金額がプラスであれば相続税の申告が必要です。

2015年改正前後の比較

2015年(平成27年)1月1日の改正で基礎控除が大幅に引き下げられました。

項目改正前(〜2014年12月31日)改正後(2015年1月1日〜)
定額部分5,000万円3,000万円
比例部分(相続人1人あたり)1,000万円600万円
相続人3人の場合の基礎控除8,000万円4,800万円

改正により基礎控除額は約6割に圧縮されました。この改正を機に、特に都市部の一般家庭でも相続税の申告が必要になるケースが急増しています。国税庁の統計では、課税対象となる相続の割合が改正前の約4%から改正後は約8〜9%に倍増しています。

申告期限と手続き

申告・納付期限

相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内(相続税法27条)

例:2026年3月10日に被相続人が死亡 → 2027年1月10日が期限

申告先

被相続人の死亡時の住所地を管轄する税務署(相続人の住所地ではない点に注意)

延納・物納

一括納付が困難な場合は、延納(最長20年・利子税あり)または物納(不動産等による現物納付)の申請ができます。いずれも申告期限までに申請が必要です。

まとめ:まず遺産総額の概算を

相続税の心配をするより先に、「遺産の総額が基礎控除を超えるかどうか」の概算を立てることが最初のステップです。

  1. 不動産の場合:固定資産税評価証明書で評価額を把握する(相続税評価は路線価ベースで計算)
  2. 金融資産:死亡日時点の残高証明書を金融機関に請求する
  3. 概算で基礎控除を超えそうなら、相続税専門の税理士に早めに相談する

申告期限の10か月は短く、戸籍収集・遺産分割・申告書作成と並行して進める必要があります。当社でも相続不動産の評価・売却に関する初回相談を無料でお受けしています。お問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。

よくある質問

相続税の基礎控除はいくらですか?
3,000万円+600万円×法定相続人の数です(相続税法15条)。例えば法定相続人が配偶者と子2人の計3人であれば、3,000万円+600万円×3=4,800万円が基礎控除額です。
養子がいる場合、法定相続人の数に何人まで算入できますか?
実子がいる場合は養子1人まで、実子がいない場合は養子2人まで算入できます(相続税法15条2項)。これは相続税対策のための過度な養子縁組を防ぐための規定です。
相続税の申告期限はいつですか?
相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です(相続税法27条)。例えば2026年1月15日に被相続人が亡くなった場合、2026年11月15日が申告・納付期限です。
生命保険金は相続税の課税対象になりますか?
死亡保険金(被相続人が保険料を負担していたもの)はみなし相続財産として課税対象になります。ただし「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があります(相続税法12条1項5号)。

出典・参考