この記事でわかること
- 普通借家契約と定期借家契約の「更新」の違い(更新できるか/期間満了で終わるか)
- 普通借家で貸主が更新を拒むには「正当事由」が必要な理由(借地借家法28条)
- 定期借家契約に必要な「書面(電磁的記録を含む)」と「事前の書面説明」の手続き
- 契約期間が1年以上の定期借家で必要になる「期間満了の通知」のタイミング
- 借主・貸主それぞれにとってのメリットとデメリット、契約前に確認すべきポイント
結論を先にお伝えします。 普通借家契約は正当事由がなければ貸主側から更新を拒めず原則更新される契約、定期借家契約は契約期間の満了で更新されず確定的に終了する契約です。両者は「更新の有無」が決定的に違い、契約時の手続きと注意点も大きく異なります(2026年5月現在)。
賃貸契約は「住む期間の安心」に直結します。定期借家であることに気づかないまま入居し、更新時に退去を求められて困るケースは実際に見られます。契約の種類を入居前に理解しておくことで、こうした不安を避けられます。本記事では、中立的な立場で2つの契約の違いを整理します。
普通借家契約とは? 原則更新される契約
普通借家契約とは、契約期間が満了しても原則として契約が更新され、借主が住み続けられる一般的な賃貸借契約です。多くの賃貸住宅で採用されてきた形です。
ポイントは、貸主(大家側)から契約の更新を拒んだり、期間途中で解約を申し入れたりするには「正当事由」が必要だという点です。これは借地借家法第28条に定められています。正当事由の有無は、次のような事情を総合的に考慮して判断されるとされています。
- 貸主・借主それぞれが建物の使用を必要とする事情
- 賃貸借に関するこれまでの経過
- 建物の利用状況や建物の現況
- 立退料(財産上の給付)の申し出の有無や額
つまり「貸主の都合で出ていってほしい」と言うだけでは更新拒絶は認められにくく、借主の居住の安定が法律で手厚く守られています。これが普通借家契約の最大の特徴です。
Q: 普通借家契約は期間が決まっていても更新されるの?
A: はい。たとえば「2年契約」であっても、期間満了時に貸主側から正当事由をもって更新拒絶をしない限り、原則として契約は更新され、住み続けられます。なお契約期間を1年未満と定めた普通借家契約は「期間の定めがない契約」とみなされる点にも注意が必要です(借地借家法29条)。
定期借家契約とは? 更新がなく期間満了で終了する契約
定期借家契約(定期建物賃貸借)とは、あらかじめ定めた契約期間が満了すると、更新されることなく確定的に契約が終了する契約です。借地借家法第38条に基づく仕組みで、2000年に導入されました。
普通借家契約と違い、正当事由の有無に関係なく、期間満了をもって契約が終了します。そのため貸主にとっては「定めた期間が来れば確実に明け渡してもらえる」点が大きな特徴です。一方、借主は期間満了後に当然には住み続けられないため、契約内容の確認がより重要になります。
ただし、期間満了後に貸主・借主の双方が合意すれば、改めて「再契約」を結んで住み続けることは可能です。これは法律上の「更新」ではなく、新たな契約の締結という位置づけです。
定期借家契約に必要な「書面」と「事前説明」の手続き
定期借家契約は、借主にとって更新がないという重い効果を持つため、成立のために普通借家契約にはない厳格な手続きが法律で定められています(借地借家法38条)。手続きを欠くと、定期借家としての効力が認められない場合があります。
| 手続き | 内容 |
|---|---|
| 契約の方法 | 書面(電磁的記録によるものを含む)によって契約を結ぶ必要がある |
| 事前の説明 | 契約に先立ち、貸主が借主に対し「更新がなく期間満了で終了する」旨を記載した書面(電磁的方法による提供を含む)を交付して説明する必要がある |
| 説明書面 | この事前説明の書面は、契約書とは別の独立した書面であることが求められる |
なお、書面・説明を電磁的方法で行えるようにする扱いは、デジタル化に対応した近年の制度運用によるものです(2026年5月現在)。
Q: 事前説明がなかった場合はどうなる?
A: 貸主が契約前に「更新がなく終了する」旨の書面交付・説明をしていなかった場合、その契約は定期借家としての「更新がない」という定めの効力が認められず、普通借家契約と同様に扱われる可能性があります。契約時に「事前説明の書面」を受け取ったか、契約書と別に交付されていたかは、入居後のトラブル防止のうえで重要な確認ポイントです。
契約期間が1年以上のときの「期間満了の通知」
定期借家契約で契約期間が1年以上ある場合、貸主には期間満了をもって契約が終了することを借主に知らせる「通知」の義務があります(借地借家法38条)。
- 通知の時期: 期間満了の1年前から6か月前までの間に、借主へ「期間の満了により契約が終了する」旨を通知する
- 通知を怠った場合: 貸主は、原則として期間満了による契約終了を借主に対抗できない(=すぐには明け渡しを求めにくい)
- ただし、通知期間を過ぎてから通知した場合でも、その通知の日から6か月を経過すれば、契約終了を借主に対抗できるとされています
借主の立場では、この通知が来たら退去や転居の準備を始める目安になります。逆に、契約期間が1年未満の定期借家ではこの通知義務はありません。
借主・貸主それぞれのメリット・デメリット
同じ「定期借家」でも、立場によって意味合いが変わります。
借主にとって
| メリット | デメリット |
|---|---|
| 普通借家より家賃が割安に設定される場合がある | 期間満了で原則退去となり、住み続けられる保証がない |
| 短期間だけ借りたいニーズに合いやすい | 再契約は貸主の意向次第で、家賃改定の可能性もある |
| 良質な物件が市場に出やすくなる | 長期の生活設計が立てにくい場合がある |
貸主にとって
| メリット | デメリット |
|---|---|
| 期間満了で確実に明け渡しを受けられる | 事前説明・書面・通知など手続きの負担が大きい |
| 転勤による留守宅など期間限定の賃貸に使いやすい | 手続き不備で定期借家の効力が認められないリスク |
| 入居者を一定期間で見直せる | 借主が集まりにくく空室リスクが高まる場合がある |
賃貸借契約は条文や手続きが複雑で、契約書の文言ひとつで住める期間が変わってきます。「自分の契約がどちらなのか分からない」「事前説明を受けた記憶がない」といった不安がある場合は、契約前後を問わず、早めに不動産の専門家に契約書を見てもらうことをおすすめします。ROCKEDGEでも、賃貸契約に関する個別のご相談を承っています。
最後に大切な点を。本記事は2026年5月現在の借地借家法の一般的な内容をまとめたものです。正当事由の判断や通知義務の適用は、個別の事情や契約内容によって結論が異なります。具体的な対応を検討される際は、契約書の現物をもとに、弁護士・宅地建物取引士などの専門家へご相談ください。
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