この記事でわかること
- 遺産分割の4つの方法(現物分割・代償分割・換価分割・共有分割)の意味と違い
- それぞれのメリット・注意点を一覧で比較(どんな家族に向くか)
- 「共有」が後々もめやすい理由と、その避け方
- 不動産が主な遺産で相続人が複数いるときの現実的な選び方
- 何から手をつければいいか、最初の一歩
不動産は「分けにくく・現金化しにくい」ため、相続人が複数いるときは、売って現金で公平に分ける**換価分割(かんかぶんかつ)か、一人が引き継いで他の人にお金を払う代償分割(だいしょうぶんかつ)**が選ばれやすい方法です。「共有」は手軽ですが、後々もめる火種になりやすいので注意が必要です。
先月、ご相談者様から実際にうかがったケースです。ご兄弟3人で、お父様が遺した実家(評価額およそ2,400万円)をどう分けるかで話が止まっていました。長男さんは「とりあえず3人の名義(共有)にして、いつか考えよう」とおっしゃっていましたが、私は一度立ち止まることをおすすめしました。共有のまま時間が経つと、売るにも貸すにも全員の同意が必要になり、次の世代に持ち越したときには相続人が枝分かれして収拾がつかなくなるからです。最終的にこのご家族は売却して現金で3等分する形を選ばれ、「もやもやが残らずに済んだ」と安心されていました。
この記事では、業界24年の不動産コンサルタントの立場から、4つの方法を中立にわかりやすく解説します。
そもそも遺産分割とは?4つの方法の全体像
遺産分割とは、亡くなった方(被相続人)が遺した財産を、相続人で具体的に分け合うことです。法律(民法906条)は、遺産分割の基準として「遺産に属する物または権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする」と定めています。つまり、機械的に半分こするのではなく、財産の性質と各人の事情の両方を見て決めなさいという考え方です。
分け方には、大きく次の4つがあります。
| 方法 | どう分けるか | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 現物分割 | 財産をそのままの形で分ける(土地はA、預金はB など) | 財産の種類が多く、価値が近い形で分けられるとき |
| 代償分割 | 一人が不動産などを取得し、他の人に代償金(お金)を払う | 不動産を残したい人がいて、その人に支払い資金があるとき |
| 換価分割 | 財産を売却し、得たお金を相続人で分ける | 不動産が主な遺産で、公平に分けたいとき |
| 共有分割 | 一つの財産を複数人の共有名義にする | 一見手軽だが、長期保有には不向き(後述) |
どれか一つに絞る必要はなく、「預金は現物分割、実家は換価分割」のように組み合わせることもできます。
現物分割|財産をそのままの形で分ける
現物分割は、最もシンプルな方法です。たとえば「自宅は配偶者、預貯金は長男、株式は長女」のように、財産を種類ごとにそのまま振り分けます。
メリット
- 売却や現金化の手間がいらない
- 思い出のある不動産をそのまま残せる
注意点
- 財産の価値がぴったり同じになることはまれで、金額の差(不公平感)が出やすい
- 不動産しか主だった財産がない場合は、そもそも分けようがない
「実家は欲しいけれど、その分だけ他の人の取り分が減ってしまう」――この差をお金で埋めるのが、次の代償分割です。
代償分割|一人が取得し、他の人へお金を払う
代償分割は、一人が不動産などを取得する代わりに、その人が自分のお金で他の相続人に「代償金」を支払う方法です。
たとえば評価額2,400万円の実家を長男が単独で相続し、弟・妹にそれぞれ800万円ずつ支払えば、3人とも実質800万円相当を受け取ったことになり公平が保てます。
メリット
- 不動産を売らずに残せる(住み続けたい人がいるとき有効)
- 共有にせず、名義を一人にまとめられる
注意点
- 取得する人にまとまった支払い資金が必要。これが最大のハードルです
- 不動産の評価額をいくらと見るかで、もめやすい(高く見れば代償金が増える)
なお、代償分割で支払う代償金の扱いについては、相続税の課税価格の計算方法が定められています(国税庁 タックスアンサー No.4173)。金額が大きくなりやすいので、税理士への確認をおすすめします。
換価分割|売って現金で公平に分ける
換価分割は、遺産(主に不動産)を売却し、得られた現金を相続人で分ける方法です。不動産が主な遺産で相続人が複数いるケースで、現実的に最も公平を保ちやすい選択肢です。
メリット
- 1円単位で公平に分けられ、不公平感が残りにくい
- 「誰が住む・誰が管理する」という負担を将来に残さない
- 代償金のように手元資金を用意しなくてよい
注意点
- 希望価格で売れるとは限らず、売却までに時間がかかることがある
- 売却で利益が出た場合は譲渡所得税(売って得た利益にかかる税金)がかかることがある
- 思い出のある家を手放す心理的な抵抗
「分けにくい不動産を、分けやすい現金に変える」という意味で、家族がもめにくい方法です。実際、相続不動産は分割も現金化もしづらく、それが争いの火種になりがちです。だからこそ、感情がこじれる前に、査定・売却・税理士や司法書士との連携までをワンストップで中立的に伴走できる窓口に早めに相談しておくと安心です。ROCKEDGEでも、どの方法がご家族に合うかという段階から、立場に偏らずご一緒に考えています。
共有分割|手軽だが「もめる火種」になりやすい
共有分割は、一つの不動産を「長男3分の1、次男3分の1、長女3分の1」のように複数人の共有名義にする方法です。話し合いがまとまらないとき、とりあえずの結論として選ばれがちですが、私は安易な共有はおすすめしていません。
理由は、共有不動産は売却・建替え・大規模リフォームに共有者全員の同意が必要になるからです。一人でも反対すれば動かせません。さらに、共有者の誰かが亡くなると、その持分がまたその子へ相続され、年月とともに共有者がねずみ算式に増えて、最終的には「会ったこともない親戚」と話し合わなければ何もできない、という事態に陥りがちです。
Q: 共有はなぜ「もめる火種」と言われるの? A: その時点では平等で円満に見えても、将来「売りたい人」と「売りたくない人」が必ず分かれ、全員の同意がそろわず塩漬けになるからです。次の世代に問題を先送りしてしまう点が、最大の注意点です。
どうしても共有にする場合でも、「いつ・どうなったら売るか」をあらかじめ話し合っておくと、もめごとを減らせます。
もめないための進め方|最初の一歩
はじめて相続を経験する方が、何から手をつければいいか分からないのは当然です。次の順序で進めると整理しやすくなります。
- 財産と相続人を一覧にする(誰が相続人で、何があるかを書き出す)
- 不動産の今のおおよその価値を把握する(査定を取る)
- 4つの方法のどれが家族の事情に合うかを比較する
- 早い段階で中立な専門家を間に入れる(感情的な対立を防ぐクッション役)
- 決まった内容を遺産分割協議書にまとめる
特に4つ目が、もめないための一番のコツです。当事者だけで話すと「言い出しにくい」「不公平だと感じても口に出せない」といった感情がたまりがちです。利害のない第三者が間に入るだけで、冷静に話し合える場が生まれます。
なお、2024年4月1日から相続登記(不動産の名義変更)の申請が義務化されました。相続で不動産を取得したことを知った日から原則3年以内の登記申請が必要です(詳しくは法務省の案内をご確認ください)。分け方を決めたら、名義変更まで忘れずに進めましょう。
ここで挙げた金額・税の取り扱いや手続きは、ご家族構成や財産の内容など個別の事情によって異なります。実際の判断にあたっては、税理士・司法書士などの専門家へご相談ください(2026年5月現在の制度にもとづく一般的な解説です)。
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