この記事でわかること
- 共有名義の不動産を「丸ごと売る」には共有者全員の同意が必要だということ(民法251条)
- 「自分の持分だけ」なら一人でも売れるが、買い手が限られ価格も下がりやすいこと
- 連絡が取れない共有者がいる場合に使える、2023年4月施行の新しい仕組み
- もめずに共有を解消する手順(話し合い→共有物分割請求→最終的に「売って現金で分ける」方法)
- 共有のまま放置すると将来どんな困りごとが起きるのか
「共有名義の相続不動産」とは、亡くなった方の家や土地を、複数の相続人が「持分(もちぶん/全体の何分の1か)」で一緒に持っている状態のことです。結論から言うと、建物や土地を「全部まとめて売る」には共有者全員の同意が必要で、同意が得られないときは「自分の持分だけ売る」か「共有物分割請求」で解消するのが基本の流れです。 まずは全体像を、はじめての方にもわかるようにやさしく整理していきます。
先月、ご相談者様から実際にこんなご相談を受けました。お父様が遺した実家を、3人のごきょうだいが3分の1ずつ相続して10年。長男は「住む人もいないし売りたい」、次男は「思い出があるから残したい」、長女は遠方で「もうどうでもいい、関わりたくない」。意見がバラバラのまま固定資産税だけを長男が立て替え続け、関係がぎくしゃくしていました。「兄弟げんかにしたくない。でも前に進めたい」——こうしたお気持ちの方は本当に多いです。共有不動産の悩みは、お金の問題であると同時に「家族の問題」でもあるのです。
共有名義の不動産を売るには「全員の同意」が必要
不動産を共有しているとき、その不動産に大きな変更を加えたり、第三者に売却(処分)したりするには、共有者全員の同意が必要です。これは民法251条で定められています。1人でも「売りたくない」という人がいれば、家や土地を丸ごと売ることはできません。
| やりたいこと | 必要な同意 | 根拠 |
|---|---|---|
| 不動産を全部売る・建て替える | 共有者「全員」 | 民法251条 |
| 大規模な改修(軽微でない変更) | 共有者「全員」 | 民法251条 |
| 賃貸に出すなどの「管理」 | 持分の「過半数」 | 民法252条 |
| 自分の持分だけ売る | 自分1人でOK | 持分の処分は自由 |
ここでつまずく方がとても多いのですが、ポイントは「家を丸ごと売るのは全員一致、でも自分の取り分(持分)を手放すのは自分だけで決められる」という違いです。次の章で詳しく見ていきましょう。
「自分の持分だけ」なら一人でも売れる
実は、自分が持っている持分(たとえば3分の1)だけなら、ほかの共有者の同意がなくても、自分の判断で売ったり譲ったりできます。これは「持分は各自の財産だから、自由に処分してよい」という考え方によるものです。
ただし、ここには大きな注意点があります。
- 買い手がほとんどいない:「他人と共有する家の3分の1」だけを欲しがる一般の人はまず現れません。買うのは共有持分を専門に扱う業者が中心になります。
- 価格が下がりやすい:自由に使えない・売りにくい権利のため、本来の価値(時価の3分の1)より大きく値引きされるのが一般的です。
- 新たなトラブルの火種になりやすい:第三者の業者が共有者として入ってくると、残った家族と業者の間で対立が生じることがあります。
Q:共有者に黙って自分の持分を売ってもいいですか? A:法律上は同意なしで売れます。ただし、知らないうちに見知らぬ業者が共有者になると家族関係が一気にこじれます。私の経験では、持分の単独売却は「最後の手段」。まずは家族で話し合うことを強くおすすめします。
連絡が取れない共有者がいるとき(2023年4月の新ルール)
「相続人の1人が行方不明」「遠い親戚が共有者だが連絡先がわからない」——こうしたケースは珍しくありません。2023年(令和5年)4月1日に施行された改正民法では、こうした所在等不明共有者がいる場合に使える新しい仕組みが整備されました。
- 持分の取得(民法262条の2):裁判所に申し立てて、所在不明の共有者の持分を、他の共有者がお金を払って取得できる制度。
- 持分の譲渡権限の付与(民法262条の3):所在不明の共有者の持分も含めて、不動産全体を第三者にまとめて売れるように、裁判所が他の共有者へ権限を与える制度。
これらは裁判所への申し立てが必要で、専門的な手続きになります。「連絡が取れない人がいるから一生売れない」とあきらめる必要はなくなりました(2026年5月現在)。該当しそうな場合は、早めに司法書士・弁護士などの専門家に相談しましょう。
もめずに共有を解消する「共有物分割請求」
話し合っても意見がまとまらないとき、共有関係そのものを解消するための手続きが「共有物分割請求」です。流れは次の3ステップで考えるとわかりやすいです。
- まず話し合い(協議分割):共有者全員で「どう分けるか」を話し合います。いちばん穏やかで、費用もかからない方法です。
- まとまらなければ調停・訴訟(裁判分割):協議が整わない場合、裁判所に共有物分割を求めます(民法258条)。
- 最終的に「売って分ける」(換価分割):現物では公平に分けられないと判断されると、裁判所の手続きで不動産を売却し、その代金を持分に応じて分ける方法がとられることがあります。
分け方には大きく3種類あります。
| 分け方 | 内容 | 向いているケース |
|---|---|---|
| 現物分割 | 土地を物理的に分ける | 広い土地など |
| 代償分割 | 1人が取得し、他へ現金を支払う | 1人が住み続けたい |
| 換価分割 | 売って現金で分ける | 全員が公平を望む・住む人がいない |
ここで知っておいてほしいのは、「売って現金で分ける(換価分割)」は、もめにくく公平性が高いという点です。不動産は「分けにくく・現金化しにくい」ため争いの火種になりやすいのですが、いったん現金にしてしまえば、1円単位で持分どおりに公平に分けられます。冒頭の3きょうだいのケースも、最終的には「全員同意のうえで売却し、3等分する」ことで、わだかまりなく解決に向かいました。
なお、こうした売却は「査定」「価格交渉」「税理士・司法書士との連携」まで一気通貫で進める必要があります。私たちROCKEDGEでは、特定の誰かの味方ではなく中立の立場で査定から売却、専門家連携までをワンストップでお手伝いしています。「家族の間に第三者が入ったほうが冷静に話せる」という声は多く、もめないための有効な一手です。
共有のまま放置すると、どうなるか
「とりあえず今は困っていないから」と共有のまま放置するのは、おすすめできません。時間がたつほど解決が難しくなるからです。
- 相続のたびに共有者が増える:共有者が亡くなると、その持分がさらに子・孫へ相続され、共有者が雪だるま式に増えます。会ったこともない親戚と共有、という事態に陥りがちです。
- 意思統一ができず、何もできない:建て替えも売却も全員同意が必要なため、人数が増えるほど合意は困難に。空き家のまま朽ちていくことも。
- 費用と責任だけが残る:固定資産税や管理の負担を、誰か1人が抱え続ける不公平が生まれます。
だからこそ、共有はできるだけ早く解消するのが望ましいのです。元気なうちに、関係が良好なうちに動くほど、選べる選択肢は多くなります。
なお、個別の事情(相続人の人数・関係性・物件の状態・税金の有無など)によって最適な進め方は大きく変わります。共有名義の不動産でお悩みのときは、判断を先延ばしにせず、早めに不動産と相続の両方に詳しい専門家へご相談ください。
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