この記事でわかること
- 相続税評価額(路線価ベース)が「時価の約8割」を目安にした“税金計算用の価格”である理由
- 実際に売れる価格(実勢価格)が評価額と一致しない仕組み
- 相続不動産の査定で失敗しないための具体的な5つのコツ
- 査定の前に整理しておくべき権利関係(共有・未登記・境界)の話
- 「査定額が高い会社=良い会社」とは限らない理由と、もめないための次の一歩
まず結論:相続税評価額と売却価格は「別物」です
相続税評価額は路線価をもとに時価の約8割を目安に決められた“税金を計算するための価格”で、実際に売れる価格とは別物です。失敗しない査定のコツは、権利関係を整えてから、根拠(取引事例)のある査定を複数社で比べることです。
「相続した実家、相続税の書類には3,000万円と書いてあったのに、不動産会社に聞いたら『3,800万円くらいで売れそう』と言われた。どっちが本当なの?」——こうした戸惑いは、はじめて相続を経験する方からとてもよくいただきます。
先月も、ご相談者様から実際にこんなお話を受けました。お父様を亡くされた40代のごきょうだい3人で、地方都市の一戸建てを相続されたケースです。相続税の申告書に載っていた評価額は約2,400万円。ところが「この金額で3人で分ければ公平だろう」と話を進めようとしたところ、一番下の弟さんが「いやいや、ネットで調べたらこの辺りは3,000万円台で売り出されている。2,400万円で計算するのは損だ」と言い出し、空気が険悪になってしまった、と。
実はこれ、どちらも“正しい”数字なのです。評価額と売却価格は、目的も計算方法もまったく違う、別々のものさしだからです。この違いを家族全員が理解しておくだけで、もめごとの多くは防げます。順番に、やさしく見ていきましょう。
相続税評価額とは?時価の約8割が目安の「税金用の価格」
評価額は「税金を計算するためだけの価格」
相続税評価額とは、相続税という税金がいくらかかるかを計算するために、国が決めたルールで算出する価格です。土地の場合、多くは「路線価(その道路に面した土地1㎡あたりの価格。国税庁が毎年公表)」をもとに計算します(国税庁 タックスアンサー No.4602)。
ここで大事なのが、この路線価は意図的に低めに設定されているという点です。国税庁は路線価を、地価公示価格(国が公表する標準的な時価の目安)のおおむね80%(8割)水準を目安に定めています(2026年5月現在)。
Q:なぜ評価額は時価より低く決められているの? A: 土地の値段は日々動くため、申告のタイミングによって税額が不公平にならないよう、あらかじめ余裕(バッファ)を持たせて低めに設定されているためです。納税者が極端に不利にならないようにする配慮、とイメージしてください。
数字で見るとわかりやすい
ざっくりとしたイメージは次の通りです。
| ものさし | 何のための価格か | おおよその水準 |
|---|---|---|
| 地価公示価格 | 時価の目安(国が公表) | 100% |
| 相続税評価額(路線価) | 相続税の計算用 | 約80% |
| 固定資産税評価額 | 固定資産税の計算用 | 約70% |
| 実勢価格(売却価格) | 実際に売買される価格 | 市場の需給で変動 |
つまり、相続税の書類に2,400万円と書いてあっても、それは「税金の世界での価格」。現実の市場で売ったらいくらになるか、とは最初から目的が違うわけです。これを知らずに「評価額=売値」と思い込むと、先ほどのごきょうだいのように話がこじれてしまいます。
売却価格(実勢価格)はどう決まるのか
実勢価格は「買いたい人がいくら出すか」で決まる
一方、実際に売れる価格=実勢価格は、税金のルールではなく「その物件を、買いたい人が、いくらまでなら出すか」という市場の需給で決まります。同じエリア・同じ広さでも、
- 駅やスーパーへの距離、日当たり、道路付け
- 建物の築年数や傷み具合、リフォームの必要性
- 売り出す時期(春の引っ越しシーズンは動きやすい等)
- 周辺で最近いくらで売れたか(取引事例)
こうした要素で上下します。だからこそ、評価額が低めに出ていても実勢価格のほうが高くなることは珍しくありませんし、逆に、駅から遠く買い手が少ない土地では評価額より安くしか売れないこともあります。
「評価額=売値」ではない、を家族で共有する
ここがもめないための最大のポイントです。相続不動産は現金と違って「分けにくく・すぐ現金化しにくい」ため、それ自体が争いの火種になりがちです。誰か一人が住み続けるのか、貸すのか、売って現金で分けるのか——方針を決めるには、まず「評価額」と「実勢価格」は別物だと家族全員が腹落ちしている必要があります。
もし「不動産で分けると不公平になりそう」「誰が住むかでもめそう」という不安があるなら、**売却して現金で公平に分ける方法(換価分割=相続した不動産を売り、その代金を相続人で分け合う方法)**も有力な選択肢になります。現金は1円単位できれいに分けられるので、不公平感が出にくいのです。
私たちROCKEDGEでは、こうした「売るべきか・残すべきか」の段階から、中立な立場で査定をお出しし、必要に応じて提携の税理士・司法書士とも連携しながらワンストップでご相談に伴走しています。「どこに相談すればいいかも分からない」という最初の一歩から、お気軽にお声がけください。
相続不動産の査定で失敗しない5つのコツ
コツ1:必ず複数社の査定を比べ、「根拠」を確認する
1社だけの査定では、その金額が高いのか安いのか判断できません。複数社に査定を依頼し、金額そのものより“なぜその金額なのか”の根拠を確認しましょう。
- 「近所のこの物件が、いつ、いくらで売れた」という取引事例を示しているか
- 国土交通省の不動産取引価格情報など、公的なデータを踏まえているか
- 高い・安いの理由を、素人にも分かる言葉で説明してくれるか
根拠を語れない査定額は、ただの“当て推量”か、契約欲しさの“盛った数字”の可能性があります。
コツ2:査定額の「高さ」だけで業者を選ばない
意外な落とし穴がこれです。査定額がいちばん高い会社を選ぶと、かえって売れ残ることがあります。
Q:高く査定してくれた会社に頼めば、高く売れるのでは? A: 査定額は「売れる保証」ではありません。契約を取りたいために相場より高い金額を提示し、いざ売り出すと買い手がつかず、結局は何度も値下げ——というケースは実際にあります。長く売れ残った物件は「何か問題があるのでは」と見られ、さらに売りにくくなる悪循環に陥りがちです。
大切なのは「高い数字」より「売り切れる、根拠のある適正な数字」です。
コツ3:査定の前に「権利関係」を整える
相続不動産は、権利関係が整っていないと正確な査定も売却もできません。査定の“前提”として、次の3つを確認しておきましょう。
- 共有になっていないか:複数の相続人で共有すると、売却には原則として全員の同意が必要になります。誰がどう引き継ぐかを先に決めておくとスムーズです。
- 未登記の建物がないか:増築部分などが登記されていないと、売買の手続きで支障が出ることがあります。
- 境界(土地の境目)が確定しているか:隣地との境界があいまいだと、買い手が安心して買えず、査定が下がる・売却が長引く原因になります。
なお、2024年4月1日から相続登記(亡くなった方名義の不動産を相続人名義に変える手続き)が義務化されています(法務省)。名義がご本人のままだと売却もできませんので、早めの整理をおすすめします。
コツ4:「評価額」を売り出し価格にしない
繰り返しになりますが、相続税評価額は税金用の価格です。これをそのまま売り出し価格にすると、相場より安く手放して損をしたり、逆に高すぎて売れ残ったりします。売り出し価格は、必ず実勢価格(取引事例)をもとに決める——これが鉄則です。
コツ5:中立な立場で相談できる相手を、早めに入れる
家族だけで金額や分け方を話し合うと、どうしても「言い出しにくい」「不公平に感じる」といった感情がからみ、こじれやすくなります。早い段階で、利害のない中立な専門家を“間に入れる”ことが、もめない最大のコツだと、24年この仕事をしてきて実感しています。第三者が客観的な数字と選択肢を示すだけで、感情論が落ち着き、前向きな話し合いに変わることがとても多いのです。
まとめ:もめないための次の一歩
最後に要点を整理します。
- 相続税評価額は「税金用の価格」で、路線価をもとに時価の約8割が目安(2026年5月現在)
- 実際に売れる価格(実勢価格)は市場の需給で決まり、評価額とは一致しない
- 査定は複数社で根拠(取引事例)を比較し、金額の高さだけで選ばない
- 査定の前に共有・未登記・境界などの権利関係を整える
- もめないコツは、評価額=売値ではないことを家族で共有し、早めに中立な専門家を入れること
なお、ここで述べた評価の仕組みや進め方は一般的な目安です。個別の事情(物件の状態・家族構成・税務の特例など)により最適な方法は異なるため、詳細は税理士・司法書士・不動産会社などの専門家へご相談ください。
「うちの場合はどうすればいいの?」という最初のモヤモヤの段階で構いません。中立な複数査定の取り方も含めて、いつでもお手伝いします。
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