この記事でわかること
- 親が元気なうちに「実家をどうするか(住む・貸す・売る)」を家族で決めておく大切さ
- 相続後に空き家のまま放置すると、固定資産税や管理の負担、特定空家のリスクが生じる理由
- 生前に売るときの「マイホーム3,000万円控除」と、相続後の「空き家特例」の違い
- 売却前に進めておける準備(残置物の整理・境界の確認・登記名義の確認)の手順
- 判断能力があるうちでないと、不動産の売買が難しくなる理由(認知症による「凍結」)
結論を先に言うと、生前の実家じまいは「空き家になる前に・元気なうちに」動くほど、家族はもめにくく、税金も抑えやすく、選べる道が広がります。生前売却と相続後売却の違いを知り、今できる一歩から始めましょう。
先月、ご相談者様から実際にこんなお話を伺いました。70代のお母様がお一人で暮らす実家について、東京在住の娘さんが「母はまだ元気だけれど、自分は戻る予定がない。将来この家をどうすればいいのか不安で」と来られたのです。お母様もお元気なうちに話しておきたいというお気持ちで、ご家族そろってご相談に。結果として、「あと数年は母が住み、その後は売る」という方針を家族で共有でき、娘さんは「先延ばしにしていた不安が軽くなった」とおっしゃっていました。亡くなってからでは選べない準備が、元気な今だからこそできる——これが生前の実家じまいの核心です。
なぜ「元気なうちに」家族で話し合うことが大切なの?
実家の今後には、大きく分けて「①住み続ける」「②貸す」「③売る」の三つの道があります。どれが正解かはご家庭ごとに違いますが、共通して言えるのは、親御さんの判断能力がしっかりしているうちでないと選べなくなるということです。
特に注意したいのが「認知症による資産の凍結」です。認知症などで判断能力が十分でないと判断されると、ご本人名義の不動産は、原則としてご家族でも勝手に売ることができなくなります。売却するには家庭裁判所で「成年後見人」(ご本人に代わって財産を管理する人)を選ぶ手続きが必要になり、時間も手間もかかります。後見人がついても、自宅の売却には家庭裁判所の許可が必要で、思うように進まないこともあります。
つまり、「元気なうちに売買契約まで進められる」こと自体が、生前準備の大きなメリットです。家族会議では、次の3つを話し合っておくと安心です。
- 親はいつまで実家に住みたいか(終の住処にするか、いずれ住み替えるか)
- 子は将来その家に戻る可能性があるか
- 住まなくなったとき、貸すのか・売るのか
「まだ早い」と感じるくらいの時期が、実はちょうどよいタイミングです。
相続後に空き家のまま放置すると、どんなリスクがあるの?
「とりあえず相続してから考える」と先延ばしにすると、誰も住まない実家が空き家になりがちです。空き家を放置すると、次のような負担が生じます。
| リスク | 内容 |
|---|---|
| 固定資産税の負担 | 誰も住まなくても毎年かかり続ける |
| 管理の手間 | 草刈り・通水・換気など。遠方だと交通費も |
| 老朽化・近隣トラブル | 雨漏り、シロアリ、倒壊や不法投棄の不安 |
| 特定空家のリスク | 行政の指導・勧告の対象になる場合がある |
特に知っておきたいのが「特定空家」です。**「空家等対策の推進に関する特別措置法」**にもとづき、倒壊の恐れや衛生上著しく問題があるなどと判断された空き家は「特定空家」に指定されることがあります。さらに2023年の法改正で、放置すれば特定空家になる恐れのある状態を「管理不全空家」として、より早い段階で指導できる仕組みも加わりました(2026年5月現在)。
これらに指定されて市区町村から勧告を受けると、住宅が建つ土地の固定資産税を軽くする「住宅用地の特例」が外れ、土地の固定資産税が上がってしまうことがあります。空き家は「持っているだけでお金と手間が出ていく」状態になりやすいのです。
生前に売る「3,000万円控除」と相続後の「空き家特例」は何が違うの?
実家を売るときに気になるのが税金です。マイホームや空き家を売って利益(譲渡所得)が出ると所得税・住民税がかかりますが、一定の要件を満たすと大きな控除が使える特例があります。代表的な2つを比べてみましょう。
① 生前に親自身が売る場合:マイホームを売ったときの3,000万円特別控除(国税庁 タックスアンサー No.3302) ご本人が住んでいる(または住まなくなって一定期間内の)自宅を売ったとき、譲渡所得から最高3,000万円を差し引ける特例です。親御さんが元気なうちにご自身で売るなら、こちらが基本になります。
② 相続後に子が売る場合:被相続人の居住用財産(空き家)に係る3,000万円特別控除(国税庁 タックスアンサー No.3306) 親が一人暮らしだった家を相続した人が、一定の期間内・要件のもとで売った場合に使える特例です。昭和56年5月31日以前に建てられた家であることや、相続開始からの期限、一定の耐震基準を満たすか取り壊して売ることなど、細かな要件があります。
どちらが向いているかは、家の状態・住んでいる人・タイミングで変わります。要件はいずれも複雑で年度によって扱いが変わることもあるため、適用できるかどうかは必ず税理士や税務署に確認してください(2026年5月現在)。「生前に売るか・相続後に売るか」で使える特例も結果も変わる——この違いを早めに知っておくこと自体が、立派な準備です。
売却前に、今から進めておける準備の手順は?
実際に売る・売らないを決める前でも、進めておける下ごしらえがあります。元気なうちに少しずつ片づけておくと、いざというときの家族の負担が大きく減ります。
- 登記名義の確認:その家が誰の名義になっているかを「登記事項証明書」で確認します。古い家だと、すでに亡くなった祖父母名義のまま、ということも珍しくありません。なお相続登記は2024年4月から義務化されており、相続を知った日から原則3年以内の申請が求められます(法務省)。
- 権利関係・住宅ローンの確認:抵当権(借金の担保)が残っていないかも見ておきます。
- 境界の確認:隣の土地との境目がはっきりしているか確認します。境界があいまいだと売却前に測量が必要になることがあるため、早めの確認が安心です。
- 残置物(家財)の整理:家具・写真・思い出の品は、親子で一緒に少しずつ。生前に「これは残す・これは処分」を本人と決められるのは、今だけの利点です。
- 査定で「いくらで売れそうか」を知る:相場を知ると、住む・貸す・売るの判断がぐっと現実的になります。
ROCKEDGEでは、こうした生前の段階から中立の立場で査定や売却のご相談に応じ、必要に応じて提携する税理士・司法書士とも連携しながら伴走しています。「まだ売ると決めていないけれど、選択肢を整理したい」という段階のご相談こそ歓迎しています。
よくある「順番」の悩み——何から始めればいい?
「やることが多すぎて動けない」という方は、まず次の一歩だけで十分です。
- 今日できること:家族で「実家を将来どうしたいか」を一度話題にする
- 今月できること:登記事項証明書を取り、名義と権利関係を確認する
- 数か月のうちに:相場を知るために査定を受け、特例が使えそうか専門家に相談する
完璧に進めようとせず、「話し合う→確かめる→相談する」の順で十分です。早く動くほど、家族はもめにくく、税金面の選択肢も広がります。
なお、ここで触れた特例の要件・期限・税額は制度改正や個別の事情によって変わります。**ご家庭ごとに最適な進め方は異なるため、詳細は税理士・司法書士・不動産の専門家へご相談ください。**生前の実家じまいは、不安をなくすための前向きな準備です。元気な今だからこそ、一歩を踏み出しておきましょう。
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