相続の生前準備、何から始める?元気なうちにやるべきこと完全ロードマップ

相続の生前準備を「財産の把握→分け方→納税資金→判断能力への備え」の4ステップで解説。基礎控除3,000万円+600万円×法定相続人の概算法、遺言・生前贈与・家族信託の比較、認知症による不動産の凍結リスクと年代別の進め方を、業界24年のコンサルタントがやさしく解説します(2026年6月現在)。

この記事でわかること

  • 相続の生前準備を「①財産の把握 → ②分け方の意思表示 → ③納税資金の準備 → ④認知症・判断能力への備え」の4ステップで整理する方法
  • 最初の一歩である「財産目録(財産の棚卸しリスト)」の作り方と、なぜそれが出発点になるのか
  • 遺言書・生前贈与・家族信託・生命保険など主な対策の違いと位置づけ(一覧比較)
  • 相続税がかかるかどうかを、基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人)から自分で概算する考え方
  • 50代・60代・70代の年代別に「いつ・何を・どの順で」進めるかの目安と、専門家を入れるタイミング

結論:生前準備は「元気な今」しかできない。まず財産の棚卸しから

相続の生前準備は、財産を一覧にして把握し、分け方を意思表示し、納税資金を備え、判断能力の低下に先回りする——この4ステップで進めます。早く動くほど選べる手は多く、家族はもめにくくなります(2026年5月現在)。

「相続」と聞くと、亡くなった後の手続きを思い浮かべる方が多いのですが、本当に効くのは「起きる前」の準備です。亡くなった後ではもう選べない手が、元気な今ならいくつも残っています。

先月、ご相談者様から実際に受けたケースをご紹介します。70代のお父様名義の実家について、娘さんから「父が最近もの忘れが増えてきて、将来この家を売れるのか不安」とのご相談でした。実はこれは典型的な「凍結リスク」です。判断能力が大きく低下すると、本人名義の不動産は本人の意思で売却できなくなり、家庭裁判所が選ぶ後見人を通すしか方法がなくなります。幸いこのお父様はまだお元気で会話も明瞭だったため、ご本人を交えて「元気なうちにできる選択肢」を一緒に整理できました。これこそ、生前準備の価値です。

生前準備の全体像ロードマップ(いつ・何を・どの順で)

まず全体像をつかみましょう。下の表が、この記事全体の地図です。各対策の詳しい中身は、それぞれ別の記事で深掘りしていきます。

段階年代の目安やることこの段階のゴール
STEP1 把握50代〜財産目録づくり(不動産・預貯金・有価証券・負債)「我が家に何があるか」を家族と共有できる状態
STEP2 分け方60代〜遺言書・生前贈与の検討、家族との話し合い「誰に何を」の意思を形に残す
STEP3 納税資金60代〜相続税の概算、生命保険などで現金を用意「払うお金」が足りるか見える状態
STEP4 判断能力への備え60〜70代家族信託・任意後見など凍結リスク対策認知症になっても財産が動かせる仕組み

順番が大切です。分け方(STEP2)や納税資金(STEP3)を考えるにも、まず「何があるか」(STEP1)が分かっていなければ始まりません。だからこそ、最初の一歩は財産の棚卸しなのです。

STEP1:最初の一歩は「財産目録」。なぜここから始めるのか

財産目録とは、持っている財産と借金を一覧にしたリストです。難しく考えず、家計の「持ち物リスト」だと思ってください。

棚卸しする項目は大きく4つです。

  1. 不動産:自宅・土地・実家・別荘など。固定資産税の通知書(毎年春に届く納税通知書)に評価額が載っています
  2. 預貯金:銀行・ゆうちょの口座をすべて。使っていない口座も忘れずに
  3. 有価証券:株式・投資信託・国債など
  4. 負債(マイナスの財産):住宅ローン・借入金・保証債務。プラスだけでなくマイナスも必ず書く

なぜここからなのか。理由はシンプルで、全体が見えないと、税金がかかるのか・どう分ければ公平か・現金は足りるかが何も判断できないからです。特に不動産は金額が大きく、現金のように簡単に分けられないため、早めの把握がそのまま家族のもめごと防止につながります。

リストは完璧でなくて構いません。まずは分かる範囲で書き出し、年に一度見直す。これだけで準備は大きく前進します。

STEP2:分け方の意思表示——主な対策を一覧で比較

財産が見えたら、「誰に何を渡すか」の意思を形にします。主な手段を比べてみましょう。

対策ざっくり言うと向いている場面注意点
遺言書「誰に何を」を書面で残す分け方を確実に指定したい形式の不備で無効になることがある。専門家確認が安心
生前贈与生きているうちに渡す早めに少しずつ移したい贈与税の扱いに注意。制度選択が重要
家族信託財産の管理を家族に託す仕組み認知症後も実家を動かしたい契約設計が専門的。司法書士等と組む
生命保険受取人に現金を直接残す納税資金や代償金を用意したい非課税枠の範囲を確認

ポイントを補足します。

  • 遺言書:自分で書く自筆証書遺言は、法務局で保管してもらえる制度(自筆証書遺言書保管制度、2020年7月開始)を使うと、紛失や偽造のリスクを減らせます
  • 生前贈与:毎年110万円までの基礎控除を使う暦年贈与のほか、相続時精算課税制度(2024年の改正で年110万円の基礎控除が新設)など複数の選択肢があります。どれが有利かは家族構成や財産額で変わるため、税理士への確認が安心です
  • 生命保険:「500万円×法定相続人の数」までが相続税の非課税枠です。現金をピンポイントで渡せるため、不動産を継ぐ人が他の相続人に払う代償金の原資にも使えます

STEP3:相続税がかかる?基礎控除から自分で概算する

「うちは相続税がかかるの?」——多くの方が最初に気にする点です。判断の出発点が基礎控除です。

基礎控除 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

例えば法定相続人が配偶者と子2人の計3人なら、3,000万円+600万円×3=4,800万円。財産の合計額がこの範囲に収まれば、相続税はかからないのが基本です(2026年5月現在)。

ここで効いてくるのが、STEP1の財産目録です。自宅の評価額(固定資産税通知書の額が目安。実際の相続税評価は別計算ですが概算には使えます)と預貯金などを足し、基礎控除と比べてみる。これだけで「課税の心配がある家か」のおおよその見当がつきます。

なお自宅の土地は、一定要件を満たすと評価額を大きく下げられる小規模宅地等の特例といった制度もあります。適用には細かい要件があるため、概算で課税ラインに近いと感じたら、早めに税理士へ相談するのが安全です。

STEP4:見落としがちな「凍結リスク」と年代別の進め方

最後に、不動産で最も注意したいのが冒頭の事例にもあった凍結リスクです。判断能力が大きく低下すると、本人名義の家は本人の意思では売れなくなります。元気なうちなら、家族信託や任意後見制度(任意後見契約に関する法律に基づく、自分で後見人を選んでおける仕組み)といった備えが選べます。

年代別の目安はこうです。

  • 50代:STEP1の財産目録づくりに着手。情報を集める時期
  • 60代:遺言書や生前贈与を具体化。納税資金の試算も。専門家に一度相談しておくと安心
  • 70代:実行と仕上げ。凍結リスク対策は判断能力があるうちに

不動産が絡む生前対策は、査定・売却の判断、税理士・司法書士との連携など、複数の専門領域がまたがります。ROCKEDGEでは、生前の段階から実家の査定や将来の売却・活用の見通し、必要に応じた税理士・司法書士へのおつなぎまで、特定の手法を押し付けず中立的に伴走しています。「まだ売ると決めていないが、選択肢だけ知っておきたい」という段階こそ、相談に向いています。

生前準備は、家族への最後の思いやりです。ただし制度には一つひとつ要件や注意点があり、最適な手は家庭ごとに異なります。個別の事情により結論は変わるため、実行前には必ず税理士・司法書士などの専門家へご確認ください。


相続のお悩みはROCKEDGEの無料相談へ

ROCKEDGEでは相続に関するご相談を承っています。「何から手をつければいいか分からない」という段階からお気軽にご連絡ください。業界24年の経験で、あなたの状況に合った選択肢を中立的な立場でご提案します。

対応エリア: 東京・埼玉・神奈川・千葉(1都3県)

無料相談はこちら → お問い合わせフォーム

よくある質問

生前準備は何歳から始めるべきですか?
決まった年齢はありませんが、財産目録づくりは50代からの着手が目安です。判断能力があるうちでないと選べない対策(家族信託・任意後見など)があるため、元気な今のうちに全体像をつかんでおくほど選択肢が広がります(2026年5月現在)。
財産目録には何を書けばよいですか?
不動産・預貯金・有価証券に加えて、住宅ローンや借入金などの負債(マイナスの財産)も必ず書きます。不動産の評価額は毎年春に届く固定資産税の納税通知書が目安になります。完璧でなくてよいので、分かる範囲で書き出し年1回見直すのが続けるコツです。
相続税がかかるかどうかは、どう見当をつければよいですか?
基礎控除『3,000万円+600万円×法定相続人の数』が判断の出発点です。相続人が3人なら4,800万円。財産合計がこの範囲に収まれば基本はかかりません。自宅評価額と預貯金を足して比べ、ラインに近ければ税理士へ早めの相談が安全です(2026年5月現在)。
認知症になると実家が売れなくなるとは、どういうことですか?
判断能力が大きく低下すると、本人名義の不動産は本人の意思で売却できなくなり、家庭裁判所が選ぶ後見人を通す必要が生じます。これを凍結リスクといいます。元気なうちなら家族信託や任意後見制度で先回りの備えが選べるため、早めの検討が重要です。
遺言書は自分で書いても大丈夫ですか?
自筆証書遺言として自分で書くことも可能ですが、形式の不備で無効になる例があります。法務局の自筆証書遺言書保管制度(2020年7月開始)を使えば紛失・偽造のリスクを減らせます。確実性を重視するなら、内容を専門家に確認してもらうと安心です。

出典・参考

関連記事

エンディングノートと遺言書はどう違う?法的効力と書くべき内容を整理

エンディングノートと遺言書はどう違う?法的効力と書くべき内容を整理

エンディングノートに法的効力はなく、財産の分け方を確実に残すには遺言書が必要です。自筆証書遺言書保管制度(2020年7月10日開始)や検認、相続税申告期限10か月など、生前準備の使い分けと注意点を不動産コンサルタントが整理します。

財産目録の作り方|生前にやる財産の棚卸しテンプレートと進め方

財産目録の作り方|生前にやる財産の棚卸しテンプレートと進め方

財産目録の作り方を生前準備の視点で解説。不動産・預貯金・借入金など書き出す項目のテンプレ、登記事項証明書と固定資産税課税明細書での評価額確認手順、相続放棄を3か月以内に判断するための負債把握まで具体的にご紹介します。

もめない相続のための家族会議の進め方|生前に話し合うべき5つのこと

もめない相続のための家族会議の進め方|生前に話し合うべき5つのこと

もめない相続は親が元気なうちの家族会議が鍵。生前に話し合うべき5つのこと(財産・分け方・実家・介護・葬儀)、言い出すきっかけ、中立の専門家を入れる効果、遺言書とエンディングノートでの残し方を不動産コンサルタントが解説します。

家族信託で実家の凍結を防ぐ|認知症で不動産が売れなくなる前の備え

家族信託で実家の凍結を防ぐ|認知症で不動産が売れなくなる前の備え

認知症で実家が売れなくなる「資産凍結」を防ぐ家族信託を、業界24年のコンサルタントが解説。委託者・受託者・受益者の役割、成年後見制度との違い、公正証書での作り方と手順、相談のタイミングまで、元気なうちにできる生前準備をやさしく整理します(2026年5月現在)。

LINEで相談