この記事でわかること
- 財産目録とは何か、なぜ「元気な今」つくっておくと家族が助かるのか
- 財産目録に書き出す項目の一覧(プラスの財産・マイナスの財産・そのまま使えるテンプレ)
- 不動産の所在地と評価額を、登記事項証明書と固定資産税の課税明細書で確認する手順
- 借入金や連帯保証を漏らさず把握しておくと、相続放棄の判断に役立つ理由
- 家族と共有し定期的に更新することで、相続が起きたときの混乱や争いを減らせる仕組み
財産目録とは、亡くなったあとに引き継がれる財産(プラスもマイナスも)を一枚に書き出した「財産の棚卸し表」です。亡くなってからでは家族が探し回ることになります。生前準備はここから始まります。
先月、ご相談者様から実際にこんなお話を受けました。70代のお父様が「自分が元気なうちに、子どもたちがもめないようにしておきたい」と来られたのですが、いざ財産を書き出そうとすると「どこの銀行に口座があったか、自分でも全部は思い出せない」とおっしゃる。古い定期預金や、昔加入した生命保険、地方にある亡き親名義のままの土地まで出てきました。これを一覧にしただけで、ご本人もご家族も「これで安心して話し合える」と表情が和らぎました。財産目録は、難しい相続対策の前の、いちばん最初の一歩なのです。
財産目録とは?なぜ生前につくると家族が助かるのか
財産目録とは、その人が持っている財産と負債(借金など)をすべて一覧にした書類です。法律で「必ずこの様式で」と決まったものではなく、メモ書きから始めて構いません。
大切なのは「亡くなってからは本人に聞けない」という点です。相続が起きると、家族は通帳・保険証券・登記簿などを一から探すことになります。見落としがあれば、後から借金が発覚したり、知らない土地が出てきて手続きをやり直したりします。
元気な今だからこそできることは多く、早く動くほど次の3つの面で有利になります。
- 選択肢が多い:贈与や遺言、不動産の整理など、生前にしか選べない対策を検討できる
- 家族がもめにくい:何がどれだけあるかを家族が共有でき、「隠している」という疑いが生まれにくい
- 税金を抑えやすい:全体像が見えるため、相続税がかかりそうかを早めに把握し、専門家に相談できる
なお、相続税には「3,000万円+600万円×法定相続人の数」という基礎控除があり、財産の合計がこの範囲なら相続税はかからないのが原則です(2026年5月現在)。財産目録で総額の見当をつけておくと、申告が必要かどうかの判断にも役立ちます。
財産目録に書き出す項目|そのまま使えるテンプレート
まずは「プラスの財産」と「マイナスの財産」に分けて書き出します。以下の表をそのまま写して、空欄を埋めていけば財産目録になります。
| 区分 | 項目 | 書く内容の例 | 確認する書類 |
|---|---|---|---|
| プラス | 不動産 | 自宅・土地・実家の所在地、面積、評価額 | 登記事項証明書、固定資産税の課税明細書 |
| プラス | 預貯金 | 銀行名・支店・口座番号・おおよその残高 | 通帳、残高証明書 |
| プラス | 有価証券 | 株式・投資信託・国債の銘柄と数量 | 証券会社の取引報告書 |
| プラス | 生命保険 | 保険会社名・証券番号・受取人 | 保険証券 |
| プラス | その他 | 自動車、貴金属、貸付金、暗号資産など | 車検証、契約書 |
| マイナス | 借入金 | 住宅ローン、カードローンの残高 | 返済予定表、契約書 |
| マイナス | 連帯保証 | 誰のどんな借金を保証しているか | 保証契約書 |
| マイナス | 未払い | 未納の税金、医療費など | 請求書、納税通知書 |
ポイントは、金額を完璧に書く必要はないということです。「だいたいの残高」「○○銀行に口座あり」というレベルでも、家族が後で探す手がかりになれば十分役立ちます。まず埋められるところから埋め、空欄は「要確認」と書いておきましょう。
不動産の所在地と評価額を確認する手順
不動産は財産の中でも金額が大きく、分けにくいため、特にていねいに書き出します。確認は次の順番で進めます。
- 登記事項証明書を取る:その不動産の正確な所在地・地番・面積・名義人・抵当権の有無がわかります。法務局の窓口やオンラインで請求できます。住所(住居表示)と登記上の地番は違うことがあるため、ここで正式な表記を確認します。
- 固定資産税の課税明細書を見る:毎年春ごろに市区町村から届く固定資産税の通知に同封されています。ここに記載された「固定資産税評価額(価格)」が、評価額のおおよその目安になります。
- 評価額を目録に書き写す:所在地・地番・面積・固定資産税評価額をセットで記入します。実家など、まだ親名義のままになっている不動産があれば、それも忘れずに書き出します。
注意したいのは、固定資産税評価額は相続税を計算するときの「土地の評価」とは方法が異なる点です。土地の相続税評価には路線価などを使うため、正確な税額は税理士など専門家への確認が必要です。財産目録の段階では「規模感をつかむ」ことを目的にすれば十分です。
不動産がからむ生前対策では、「認知症になると本人の意思確認ができず、実家が売れなくなる(凍結する)」というリスクが見落とされがちです。元気なうちに査定で価値を把握し、空き家になりそうな家を整理しておくと、選択肢が大きく広がります。ROCKEDGEでは、生前の段階からの査定や売却の検討、税理士・司法書士との連携まで、特定の手法を押し付けず中立的にご一緒します。「まだ何も決めていないけれど整理から始めたい」という段階で、気軽にご相談いただける窓口です。
借金・連帯保証を漏らさず把握する|相続放棄の判断材料になる
財産目録というとプラスの財産に目が向きがちですが、実はマイナスの財産(負債)こそ生前に書き出しておく価値があります。
相続では、預貯金や不動産だけでなく、借入金や連帯保証といった負債も引き継がれます。中でも連帯保証は契約書が手元になく、家族がまったく知らないまま相続後に請求が来る、という事態が起こりがちです。
ここで関わってくるのが「相続放棄」です。相続放棄とは、プラスもマイナスもすべて引き継がない手続きで、家庭裁判所に申し立てます。原則として「自分が相続人になったことを知った時から3か月以内」に判断する必要があります(2026年5月現在)。
この3か月という限られた期間で「財産より借金のほうが多いから放棄すべきか」を判断するには、何がどれだけあるかが分かっていなければ動けません。生前に負債と連帯保証まで書き出した財産目録があれば、家族はこの重い判断を落ち着いて下せます。負債を隠さず一覧にしておくことは、家族を守る準備でもあるのです。
家族と共有し、定期的に更新する
財産目録は、つくって引き出しにしまって終わりではありません。家族と共有し、年に1回など節目で見直してこそ力を発揮します。
- 保管場所を家族に伝える:目録そのものや通帳・証券の保管場所を、信頼できる家族に伝えておく
- 大きな変化があったら更新する:口座の解約、不動産の売買、保険の見直しなどがあったら書き換える
- 年1回の棚卸し:誕生日やお正月など、決まった時期に見直す習慣にする
「全部を一度に完璧に」と考えると手が止まります。まずは表を印刷し、思いつくものから書き込む——その一歩が、家族の安心につながります。
相続は一人ひとり事情が異なり、税額や手続きの要否も家庭ごとに違います。判断に迷う部分は、税理士・司法書士などの専門家へご相談ください。財産目録づくりは、その相談を実りあるものにする土台になります。
よくある質問(FAQ)
ここから先は、財産目録づくりでよく寄せられる質問にお答えします。
まとめ
財産目録は、元気な今だからつくれる「家族へのいちばん最初の贈り物」です。完璧でなくて構いません。表を1枚用意し、預貯金・不動産・保険・借入金を思いつくところから書き出してみてください。次の一歩は、不動産の課税明細書を手元に出して評価額を書き写すこと。そこから生前準備は具体的に動き始めます。
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