この記事でわかること
- 相続した不動産の名義変更(相続登記)が2024年4月1日から義務になったこと、いつまでに何をすればよいか
- 自分で相続登記をする場合の手順を番号順に(戸籍集め→遺産分割協議書→申請まで)
- 必要書類の一覧と、登録免許税(固定資産税評価額×0.4%)など費用のめやす
- 司法書士に頼んだほうがよい「判断の分かれ目」
- 名義変更を放置するとどうなるか(過料・売却できない・もめる)
相続した不動産の名義変更(相続登記)とは、亡くなった人の名義のままになっている土地・建物を、相続する人の名前に書き換える手続きです。2024年4月1日から義務になり、不動産を相続したことを知った日から3年以内の申請が必要です(2026年5月現在)。
先月、ご相談者様から実際にいただいたケースをご紹介します。お父様が10年前に亡くなり、ご実家の名義がそのままになっていた、という60代の女性からのご相談でした。「売ろうと思って不動産会社に行ったら『名義がお父様のままだと売れません』と言われて、初めて慌てた」とのこと。さらに調べると、すでに亡くなっていたお母様や、疎遠なご兄弟も相続人に含まれ、関係者が当初の想定より増えていました。早めに動いていれば数枚の戸籍で済んだものが、放置した10年のあいだに手続きが何倍も複雑になっていたのです。これは決して特別な例ではありません。
業界24年の不動産コンサルタントの立場から申し上げると、相続登記は「難しそう」と感じて後回しにする方が本当に多い手続きです。でも、全体像と次の一歩さえ分かれば、決して怖いものではありません。この記事で、はじめての方にも丸わかりになるよう、できるだけやさしい言葉で順に解説します。
相続登記はいつまでに? 義務化と期限をやさしく解説
「相続登記」とは、不動産の持ち主の名前を、亡くなった人から相続する人へ書き換える手続きのことです。法務局(登記を扱う国の役所)で行います。
2024年4月1日から、この相続登記が義務になりました。根拠となるのは不動産登記法76条の2という法律です。ポイントは次のとおりです。
- 期限:不動産を相続したこと(自分が相続人になり、その不動産を取得したこと)を知った日から3年以内に申請する
- 過去の相続も対象:2024年4月1日より前に相続した不動産も義務の対象です。この場合は「2027年3月31日まで」が期限のめやすになります
- 守らないと:正当な理由がないのに申請しないと、10万円以下の過料(罰金に似たペナルティ)の対象になることがあります
「正当な理由」とは、たとえば相続人がとても多くて戸籍集めに時間がかかる、相続人同士で争いがあって決まらない、といった事情が想定されています。「忙しかった」「知らなかった」は理由になりにくいので注意が必要です。
Q:期限の3年って、いつから数えるの? A:基本は「自分がその不動産を相続で取得したと知った日」からです。多くの場合は亡くなった日や、遺産分割の話し合いがまとまった日が起点になります。判断に迷うときは法務局や専門家に確認すると確実です。
放置するとどうなる? 名義変更しない3つのリスク
名義をそのままにしておくと、次のような困りごとが起きます。
- 過料の対象になる:前述のとおり、10万円以下の過料の可能性があります。
- 売りたくても売れない・貸せない・担保にできない:不動産は名義人本人でないと売却や担保設定ができません。いざ現金が必要になっても動かせません。
- 時間がたつほど相続人が増えて、もめやすくなる:放置するうちに相続人の誰かが亡くなると、その人の子や配偶者へと相続が広がります(これを「数次相続」と呼びます)。会ったこともない親戚と話し合う事態になり、全員の同意(実印・印鑑証明)を集めるのが一気に大変になります。
冒頭のご相談者様のように、「売ろうとした瞬間に名義の壁にぶつかる」のはよくあるパターンです。とくに、ご実家を相続したものの誰も住まない・使わないという場合、早めに名義を整えておくことが、後々の選択肢(住む・貸す・売る)を広げる第一歩になります。
自分で相続登記をする手順(番号順)
ここからは、ご自身で手続きする場合の流れを順番に説明します。落ち着いて1つずつ進めれば、はじめての方でも対応できます。
ステップ1:相続人を確定する(戸籍を集める) 亡くなった人(被相続人)の**出生から死亡までの連続した戸籍(戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍)**を集めます。これで「相続人が誰か」を法的に確定します。本籍地のある市区町村役場で取得します。本籍が何度も移っている場合は、さかのぼって複数の役所に請求が必要です。
ステップ2:誰がどの不動産を相続するか決める 遺言書があればその内容に従います。遺言書がなければ、相続人全員で遺産分割協議(誰が何を相続するかの話し合い)を行い、合意内容を遺産分割協議書にまとめます。相続人全員の署名と実印の押印、印鑑証明書が必要です。
ステップ3:必要書類をそろえる おもな必要書類は次のとおりです(ケースにより増減します)。
| 書類 | どこで取る |
|---|---|
| 被相続人の出生〜死亡までの戸籍一式 | 本籍地の市区町村役場 |
| 被相続人の住民票の除票 | 最後の住所地の役場 |
| 相続人全員の戸籍謄本 | 各相続人の本籍地の役場 |
| 不動産を取得する人の住民票 | 住所地の役場 |
| 遺産分割協議書+相続人全員の印鑑証明書 | 自分で作成/役場 |
| 固定資産評価証明書(または固定資産税の課税明細書) | 不動産がある市区町村役場 |
ステップ4:登記申請書を作り、登録免許税を計算する 申請書の様式や記載例は、法務局のホームページで公開されています。登録免許税(登記のときに納める税金)は、**固定資産税評価額×0.4%**で計算します。たとえば評価額1,000万円の不動産なら、1,000万円×0.4%=4万円です。
ステップ5:法務局へ申請する 不動産の所在地を管轄する法務局へ、書類一式を提出します。窓口・郵送・オンラインのいずれでも可能です。不備がなければ、おおむね1〜2週間ほどで名義変更が完了します。書き方や添付書類は、法務局の無料相談(予約制のことが多い)で事前に確認すると安心です。
費用はいくら? 自分でやる場合と司法書士に頼む場合
費用の中心は次の2つです。
- 登録免許税:固定資産税評価額×0.4%(必ずかかる税金)
- 戸籍・証明書の取得費用:1通あたり数百円。枚数が多いと数千〜1万円程度になることも
ご自身で行えば、専門家への報酬はかかりません。一方、司法書士(登記の専門家)に依頼すると、上記に加えて報酬がかかります。金額は不動産の数や相続人の人数、難易度によって幅があるため、依頼前に見積もりを取りましょう。
Q:自分でやるのと司法書士、どちらが得ですか? A:相続人が少なく、書類も集めやすいシンプルなケースなら、ご自身でやって費用を抑えるのも十分現実的です。一方、後述のように関係が複雑なケースでは、専門家報酬を払っても「確実・短時間・もめない」メリットのほうが大きくなります。
司法書士に頼むべき? 判断の分かれ目
次のいずれかに当てはまる場合は、司法書士に依頼したほうが安心です。
- 相続人が多い・疎遠・行方不明:戸籍を大量にさかのぼる必要があり、全員の同意を集めるのが難しい
- 数次相続が起きている:相続人がさらに亡くなり、関係者が枝分かれしている
- 不動産が複数・遠方にある:管轄の法務局が分かれ、書類も増える
- 平日に動く時間が取れない:役所・法務局は基本的に平日昼間のみ。何度も足を運ぶのが負担
- 遺言書の有効性や分け方でもめそう:話し合いが難航しそうなケース
はじめての相続は、ただでさえ気持ちの整理がつかない時期です。無理にすべてをご自身で抱えず、「ここは任せたほうが早い」と感じたら専門家を頼ってください。
なお、相続した不動産を「住まない・使わない」ため最終的に売却を考えている場合は、登記と売却をまとめて相談できると手続きがスムーズです。とくに、相続不動産は分けにくく現金化しにくいため、相続人同士で公平に分けたいときは、いったん売って現金で分ける換価分割という方法が有力な選択肢になります。ROCKEDGEでは、査定から売却、そして司法書士・税理士との連携まで、中立的な立場でワンストップでお手伝いしています。「まず全体像を整理したい」という段階のご相談も歓迎していますので、迷ったらお気軽にお声がけください。
家族でもめないための工夫
相続不動産は「分けにくい・現金化しにくい」ため、争いの火種になりやすい財産です。実務の現場で感じるのは、もめる原因の多くが「お金そのもの」より「不公平感」や「言い出しにくさ」だということです。
- 早めに全体像を共有する:誰がどの財産を、どんな考えで希望しているのか、早い段階でテーブルに出す
- 中立の専門家を間に入れる:身内だけだと感情が先に立ちます。第三者が入るだけで冷静に話せることが多いです
- 分けにくい不動産は「売って現金で分ける」も選択肢に:物理的に割れない不動産は、換価分割で公平に分けると納得感が出やすい
「言い出したら角が立つ」と感じる話こそ、中立の専門家を早めに入れることが、結果的にもめない最大のコツです。
相続登記の手続きや必要書類は、不動産の状況やご家族の事情によって一つひとつ異なります。この記事は一般的な流れを示すものですので、ご自身のケースの具体的な進め方については、法務局や司法書士・税理士などの専門家に確認しながら進めてください(2026年5月現在の制度にもとづいています)。
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