配偶者も同居の相続人もいないときは、別居の親族でも実家の土地を330㎡まで80%減額できます

実家で親がひとり暮らしをしていて、自分は別のところに住んでいる——そんな方に関わる話です。相続税の計算では、土地の評価額を大きく下げられる仕組みがあり、一定の条件を満たせば別居していた親族でも使えます。通称「家なき子」特例と呼ばれ、名前のとおり「自分の持ち家がないこと」が鍵になります。

何が変わったのか

亡くなった方(被相続人)に配偶者がおらず、同居していた相続人もいない場合、別居していた親族が実家の敷地を相続しても、330㎡までの部分について評価額を80%減額できます。つまり土地の評価が5分の1まで下がる計算になり、相続税の負担に直結します。

ただし誰でも使えるわけではありません。確認されている要件は3つです。ひとつ目は、相続が始まる前の3年以内に、自分や配偶者、一定の親族などが持っている家屋に住んでいないこと。ふたつ目は、相続が始まった時に住んでいる家屋を、過去に自分が所有したことがないこと。みっつ目は、申告期限までその宅地を持ち続けていることです。

言いかえると、ずっと賃貸に住んでいて実家に戻る余地がある人を想定した仕組みです。自分の持ち家がある方、あるいは家族名義の家に住んでいる方は、この特例の対象から外れる可能性があります。

首都圏の住まいへの影響

東京・埼玉・神奈川・千葉は土地の評価額が高くなりやすい地域です。同じ80%の減額でも、土地の値段が高いほど金額としての効果は大きくなります。実家が首都圏にある方にとっては、この特例を使えるかどうかで申告の中身が変わってくる場面があります。

一方で、面積の上限は330㎡です。敷地がこれより広い場合、超えた部分は減額の対象になりません。首都圏では330㎡以内に収まる住宅地も多いですが、郊外のまとまった敷地では上限を超えることもあります。

注意したいのは「持ち家がないこと」という条件です。首都圏で働きながらマイホームを買った方、配偶者名義の家に住んでいる方は、要件に当てはまらないことがあります。実家をどう引き継ぐかを考えるときは、早い段階でご自身の住まいの状況を整理しておくと判断がしやすくなります。

いつ・何を確認すればいいか

  • まず、亡くなった方に配偶者がいたか、同居していた相続人がいたかを確認します。どちらかがいる場合、この特例の前提から外れます
  • 相続が始まる前の3年以内に、自分や配偶者、一定の親族などが持っている家屋に住んでいなかったかを確認します。賃貸契約書や住民票の履歴が手がかりになります
  • いま住んでいる家屋を、過去に自分が所有していたことがないかを確認します
  • 申告期限までその宅地を持ち続ける必要があります。最新の期限や細かい判定は、国税庁 No.4124(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4124.htm)で確認し、適用の可否は税理士にご相談ください

よくある質問

Q. 実家を出て賃貸に住んでいます。この特例は使えますか。

A. 亡くなった方に配偶者も同居していた相続人もおらず、相続が始まる前の3年以内に自分や配偶者、一定の親族などが持っている家屋に住んでいなければ、330㎡まで80%の減額を受けられる可能性があります。ただし、いま住んでいる家屋を過去に自分が所有したことがないこと、申告期限までその宅地を持ち続けることも必要です。ご自身が当てはまるかどうかは、税理士にご確認ください。

Q. 自分の持ち家があるのですが、対象になりますか。

A. この特例は「持ち家がないこと」が条件になっています。相続が始まる前の3年以内に、自分や配偶者、一定の親族などが持っている家屋に住んでいた場合は、要件を満たさないことになります。名義が誰になっているかによって判断が分かれるため、個別の事情は税理士にご相談ください。

Q. 相続したあと、すぐに売ってもかまいませんか。

A. 要件のひとつに「申告期限までその宅地を保有していること」があります。期限より前に手放すと、この要件を満たさなくなる点に注意が必要です。具体的な期限や手続きの流れは、国税庁 No.4124 と税理士でご確認ください。名義の変更(登記)については司法書士や弁護士が窓口になります。