この記事でわかること
- 仲介・買取・空き家バンク・空き家専門業者の違いを「売れるまでの期間」と「手元に残る金額」で比べる基準
- 空き家バンク経由と一般流通(REINS)のどちらに出すべきかを、立地と価格帯で判断する考え方
- 残置物あり・境界未確定・越境ありの空き家を実際に扱える依頼先の見分け方
- 媒介契約3種類の選び方と、居住者がいない空き家に特有の内見・鍵の取り決め
- 「空き家専門」をうたう業者を免許番号と実績開示で確認する手順
- 買い手が付かない立地で、解体・引き取り・相続土地国庫帰属制度を検討する順番
空き家の売却をどこに頼むのがいいかは、物件の価格帯と状態で決まります。市場で値が付く物件は仲介、期間を優先するなら買取、低価格帯や地方は空き家バンク併用が基本線です(2026年10月現在)。
ROCKEDGE住まい相談室には、「親の家を相続したが、地元の不動産会社に相談したら『この立地では扱えない』と言われ、次にどこへ行けばいいのか分からない」というご相談が少なくありません。家財がそのまま残り、隣地との境界杭も見当たらず、草木が隣家へ越境している——という状態で、どこから手を付けるか迷われる方が多くいらっしゃいます。依頼先選びは「会社の規模」ではなく、その物件の弱点を処理できるかで決まります。
仲介と買取はどちらがいい?「売れるまでの期間」と「手元に残る金額」で比べる
2軸で並べると判断しやすい
| 依頼先 | 売れるまでの期間の目安 | 手元に残る金額の傾向 | 向いているケース |
|---|---|---|---|
| 仲介(宅建業者に買主を探してもらう) | 買主が現れるまで不確定。長期化もある | 市場価格に近い成約が狙えるが、仲介手数料と契約不適合責任が残る | 需要のある立地、再建築可能、値付けできる物件 |
| 買取(宅建業者が自ら買主になる) | 条件が合えば数週間〜1〜2か月程度で決済に進めることが多い | 再販コストとリスクを買主が負うため、仲介で狙える水準を下回る傾向 | 期限がある、遠方、残置物や瑕疵を抱えたまま手放したい |
| 空き家バンク(自治体の情報提供制度) | 掲載期間が長引くことがある | 当事者間に近い取引で費用は抑えやすいが、契約実務の安全性は要確認 | 低価格帯、移住需要がある地域 |
| 空き家専門業者(再生・活用を前提に扱う事業者) | 買取型か仲介型かで変わる | 条件次第。業態の見極めが必須 | 再生前提で値が付く、残置物処理まで一括で頼みたい |
Q: 仲介と買取で、結局どちらが手元に残りますか? A: 一般には仲介のほうが成約価格は高くなりますが、空き家は保有期間中に固定資産税・火災保険・草刈りや通水などの管理費が発生し続けます。売却までの期間が長引けば、その分が差額を削ります。価格差と保有コストの総額を並べて比べるのが正しい比較の仕方です。
手数料は価格帯で変わる
売買の媒介報酬の上限は、売買価格400万円超の場合「価格×3%+6万円」(別途消費税)が原則です。これに加えて、2024年7月1日施行の制度改正により、価格800万円以下の「低廉な空家等」の売買の媒介では、30万円の1.1倍(33万円)を上限として報酬を受け取れることになりました。空き家は調査や現地対応の手間が価格に比例しないため設けられた特例です。
同時に、この特例による報酬額は媒介契約の締結に際してあらかじめ説明し、合意しておく必要があることが通達に明記されています。低価格帯の空き家を依頼するときは、契約前に報酬額の提示があるかを確認してください。説明なしに後から請求してくる相手は、その一点で候補から外して構いません。
空き家バンクと一般流通(REINS)はどちらが向く?立地と価格帯で判断する
REINS(指定流通機構)は宅建業者が物件情報を登録・共有する仕組みで、全国の業者が買主を探せます。空き家バンクは自治体が運営し、移住希望者などに情報を提供する制度で、国土交通省が民間事業者と連携した「全国版空き家・空き地バンク」により横断検索もできます。
判断の目安は次のとおりです。
- 都市部・住宅需要のある郊外/価格帯が数百万円以上 → 一般流通(REINS)が主軸。買主の母数が大きく、価格競争が働きます
- 人口減少地域・農地付き・再建築や接道に難あり/価格帯が低い → 空き家バンクを併用。移住・二拠点・DIY目的の買主は一般流通に現れにくいため
- どちらとも言えない → 併用が合理的。バンク掲載と媒介契約は排他ではありませんが、一般媒介以外では他業者への重複依頼が制限されるため、バンク掲載が媒介契約の内容と矛盾しないかを契約前に確認します
空き家バンクは「情報提供の場」であり、契約書の作成・重要事項説明・代金決済の安全確保までを自治体が担うわけではありません。バンク経由で買主が見つかった場合も、契約実務は宅建業者に入ってもらう前提で考えてください。
残置物あり・境界未確定・越境ありの空き家は、扱える依頼先が限られる
この3つは、依頼先を絞り込む実質的なフィルターになります。見積や査定の前に、次の質問をそのままぶつけてください。
確認すべき3つの質問
- 残置物「家財・仏壇・家電・物置の中身が残ったままですが、現況のまま売却を進められますか。処分を手配する場合、誰が発注者になり、費用はいくらで、売却代金から精算できますか」
- 境界「境界標が見当たりません。測量士・土地家屋調査士との連携はありますか。確定測量をせずに公簿売買で進める場合、どの条文でリスクを分配しますか」
- 越境「樹木・ブロック塀・庇が隣地に越境しています。隣地所有者との覚書作成まで対応できますか」
ここで「現地を見てから」ではなく**「それは買主側で」「うちでは扱っていない」と返ってくる場合、その依頼先では止まります**。空き家の売却が進まない原因の多くは価格ではなく、この3点が宙に浮いたままになることです。
なお、相続した空き家は名義が亡くなった方のままでは売却できません。相続登記は2024年4月1日から申請が義務化され、不動産の取得を知った日から3年以内の申請が必要です(不動産登記法第76条の2第1項)。正当な理由なく怠った場合は10万円以下の過料の対象とされています(同法第164条第1項)。登記が未了なら、売却活動と並行して司法書士へ依頼する段取りが要ります。
媒介契約はどれを選ぶ?空き家特有の内見・鍵の取り決め
3種類の違い
| 種類 | 他業者への重複依頼 | 自分で買主を見つけた場合 | REINS登録 | 業務処理状況の報告 |
|---|---|---|---|---|
| 一般媒介 | 可 | 直接契約できる | 義務なし | 義務なし |
| 専任媒介 | 不可 | 直接契約できる | 契約日の翌日から7日以内(休業日を含まない) | 2週間に1回以上 |
| 専属専任媒介 | 不可 | 不可(業者を通す) | 契約日の翌日から5日以内(休業日を含まない) | 1週間に1回以上 |
有効期間は専任・専属専任のいずれも3か月以内です。
Q: 空き家ではどれを選ぶべきですか? A: 遠方の空き家や難あり物件では、専任媒介が実務的に機能しやすいです。鍵の預託・現地対応・残置物処理・近隣説明といった手間を1社に集約でき、報告義務で進捗が見えるためです。逆に、需要が強く複数社が積極的な立地なら一般媒介で競わせる余地があります。専属専任は自己発見取引ができないため、親族や近隣への譲渡可能性が残る空き家では避けたほうが無難です。
鍵と内見のルールは書面にする
居住者がいない空き家では、以下を媒介契約書または覚書に明記してもらいます。口頭で済ませると、後から「誰が入ったか分からない」状態になります。
- 鍵の本数と預託先、返却時期、紛失時の負担
- 売主の立会いなしで内見させるか(無立会いを認めるなら、業者の同行を必須とするか)
- 内見の事前連絡の方法と期限
- 通電・通水・ブレーカーの扱い(内見のために復旧するか、現況のままとするか)
- 内見時の事故・破損があった場合の連絡と責任分担
- 近隣への説明の有無(売却を知られたくない場合は特に取り決める)
「空き家専門」をうたう業者はどう確認する?
「空き家専門」は法的な資格でも許可区分でもありません。名乗るだけなら誰でもできるため、次の2点を自分で確かめます。
1. 宅地建物取引業の免許番号を照合する
媒介や買取を業として行うには宅地建物取引業の免許が必要です。サイトやチラシに記載された免許番号(「国土交通大臣(○)第○○○○○号」「○○県知事(○)第○○○○号」)を、国土交通省の「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」で照合してください。商号・免許番号・所在地から検索でき、記載どおりの業者が存在するかを確認できます。かっこ内の数字は免許の更新回数(1回の有効期間は5年)で、業歴の目安にもなります。
免許番号の記載自体がない、照合しても出てこない、商号や所在地が一致しない場合は、その時点で依頼先から外します。
2. 取扱実績の開示を求める
「年間○○件」という総数ではなく、自分の物件と条件が重なる実績を聞きます。
- 同じ市区町村または近隣での空き家の成約件数と、直近の時期
- 残置物処理を伴う取引、境界未確定のまま成約させた取引の有無と、その処理方法
- 買取の場合、自社で買い取るのか転売先に流すのか(買主が誰になるかを明言できるか)
- 仲介と買取の両方を提示し、それぞれの手取り見込みを並べて示せるか
実績の内訳を具体的に答えられない、買取の主体を曖昧にする、片方の選択肢しか示さない場合は、判断材料が足りません。ROCKEDGE住まい相談室では、残置物・境界・越境を抱えた空き家について、仲介と買取のどちらが手元に残るかを条件ごとに整理したご相談を無料で承っています。他社の査定書をお持ちいただいての比較検討でも構いません。
なお、売却できた場合の税負担にも関わる制度として、相続した空き家の譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例があります(2016年4月1日から2027年12月31日までの譲渡、相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却、売却代金1億円以下などの要件)。2024年1月1日以後の譲渡で相続人が3人以上の場合は控除額が2,000万円までとなります。適用の可否は要件の確認が必要なため、売却方法を決める前に税務署または税理士へ確認してください。
買い手が付かない立地では何をすればいい?検討の順番
値付けして市場に出しても反応がない立地では、次の順で検討します。順番を飛ばすと損をします。
第1順位:価格と売り方を変えて再挑戦する
- 価格を下げる前に、依頼先と媒介契約の種類を変える(一般媒介で放置されていたなら専任へ、など)
- 空き家バンクへ掲載する/農地付き空き家として出す
- 隣地所有者・近隣の事業者・借家人候補に直接当たる(接道や日当たりの改善になる隣地は、第三者より高く買う動機があります)
- 建物を残したまま「現況渡し・契約不適合責任免責」で出す
第2順位:解体して土地として売る
解体費を自己負担することになりますが、建物に値が付かず、むしろ買主の除却リスクになっている場合は土地のほうが売れます。注意点として、建物を取り壊すと固定資産税の住宅用地特例が外れ、翌年度から土地の税額が上がります。売却の見込みが立たないまま先に解体すると、負担だけが残ります。解体の前に「解体したら買う」という買主の見込みがあるかを確認してください。
また、2023年12月13日に施行された改正空家法では、「管理不全空家等」として市区町村長から勧告を受けた場合、固定資産税の住宅用地特例が解除される仕組みが設けられています。放置を続ける選択にもコストが生じる点は認識しておく必要があります。
第3順位:引き取り・寄付・譲渡を探る
- 自治体への寄付(受け入れ要件は自治体ごとに異なり、受け付けられないことも多い)
- 隣地所有者や地域団体への無償譲渡(譲渡側・取得側の税務を事前確認)
- 有償で引き取るサービス(費用の内訳と、引き取り後の管理責任の移転が書面で明確かを確認)
第4順位:相続土地国庫帰属制度を検討する
2023年4月27日に開始された制度で、相続等で取得した土地を一定の要件のもとで国庫に帰属させることができます。審査手数料は土地1筆当たり14,000円です。
ただし要件は厳しく、建物がある土地、担保権や使用収益権が設定されている土地、土壌汚染されている土地、境界が明らかでない土地・所有権の存否や範囲に争いがある土地は申請が却下されます。さらに、承認された場合は国有地の種目ごとに10年分の標準的な管理費用を考慮して算定された負担金の納付が必要です。
つまり、建物を解体し、境界を確定させてからでないと申請できない制度です。だからこそ検討は最後になります。解体費と測量費を投じた後で負担金まで納めるより、第1〜第3順位のどこかで引き取り手が見つかるほうが負担は軽く済みます。
空き家の売却は、物件の価格帯・立地・状態(残置物・境界・越境)・相続登記の有無・適用できる税制で、最適な依頼先が入れ替わります。ここで示したのは判断の枠組みであり、個別の事情により結論は異なります。具体的な手続きや税務・法務の判断については、宅地建物取引業者、司法書士、税理士など該当分野の専門家へご相談ください。
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