この記事でわかること
- 空き家売却の全体の流れ(名義確認から引き渡しまでの7ステップ)
- 空き家売却にかかる費用の内訳と相場の目安
- 空き家を売って利益が出たときの税金(譲渡所得税)の計算方法
- 税負担を抑える特例(3000万円特別控除・取得費加算)の使いどころ
- 確定申告の手順と、売却前の片付け・残置物処分のポイント
- 多くの方がつまずく「空き家売却のよくある失敗と注意点」
相続した実家や、誰も住まなくなった空き家。「売りたいけれど、何から手をつければいいかわからない」というご相談を、私は業界24年のなかで数えきれないほど受けてきました。空き家の売却は、名義(登記)・費用・税金・特例の4つを順番に押さえれば、決して難しいものではありません。本記事では、不動産コンサルタントの視点から、空き家売却の全体像をやさしく整理します。
空き家売却の流れ(7ステップ)
空き家の売却は、大きく次の流れで進みます。住んでいた家の売却と違い、名義の確認が最初の関門になる点が特徴です。
- 名義(登記)の確認 — 誰の名義になっているかを登記事項証明書で確認します。亡くなった方の名義のままでは売却できません。
- 相続登記 — 相続した空き家なら、法務局で名義を相続人へ変更します(2024年4月から義務化)。
- 不動産会社の査定 — 複数社に査定を依頼し、価格と売却方針を比較します。
- 媒介契約の締結 — 売却を依頼する不動産会社と契約します。
- 売却活動(販売・内見対応) — 広告掲載や購入希望者の内見に対応します。
- 売買契約・引き渡し — 買主と契約し、残金決済・引き渡しを行います。
- 確定申告 — 利益が出た場合や特例を使う場合は、翌年に確定申告します。
ここで言う「相続登記」とは、亡くなった方の名義を相続人の名義へ変更する法務局での手続きのことです。これを飛ばして売却を進めることはできないため、最初に名義を整えることが空き家売却のスタート地点になります。
Q. 名義変更(相続登記)はいつまでにすればいい? A. 2024年4月の義務化により、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内が期限です。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります(不動産登記法第164条)。すぐ分割が決まらない場合は「相続人申告登記」で義務を果たせます。
相続登記の詳しい手順は、相続不動産の手続きと売却・活用法とあわせてご確認ください。
空き家売却にかかる費用の内訳と相場
空き家を売るときにかかる費用は、大きく「売るためにかかる費用」と「利益に対する税金」に分かれます。まず前者を整理します。
| 費用項目 | 金額の目安(2026年現在) | 備考 |
|---|---|---|
| 仲介手数料 | 売却価格 × 3% + 6万円 + 消費税 | 売却価格400万円超の場合の上限額 |
| 印紙税 | 数千円〜数万円 | 売買契約書に貼付。売却価格で変動 |
| 抵当権抹消などの登記費用 | 1件あたり1,000円+司法書士報酬 | ローンが残っていた場合など |
| 相続登記の費用 | 登録免許税(評価額の0.4%)+司法書士報酬8万〜15万円程度 | 名義が亡くなった方のままの場合 |
| 解体費(更地にする場合) | 木造で1坪あたり3万〜5万円程度 | 構造・立地・処分費で変動 |
| 残置物の処分費 | 数万円〜数十万円 | 家財の量による |
| ハウスクリーニング | 数万円程度 | 任意 |
仲介手数料は「売却価格 × 3% + 6万円 + 消費税」が一つの基準です(宅地建物取引業法に基づく上限・売却価格400万円超の場合)。たとえば2,000万円で売れた場合、仲介手数料の上限は66万円+消費税となります。
空き家特有なのが、解体費と残置物の処分費です。古い家屋は建物に価値がつかず「古家付き土地」または「更地」として売ることが多く、その場合は解体や片付けの費用を見込む必要があります。解体費は木造で1坪あたり3万〜5万円程度が目安ですが、立地(重機が入れるか)や廃材の処分費で大きく変わるため、必ず複数業者の見積りで確認してください。
Q. 売却の相場はどう調べればいい? A. 国土交通省の「不動産情報ライブラリ」や、同種の物件の成約事例から目安をつかめますが、空き家は劣化具合・残置物・接道状況で評価が大きく変わります。最終的には現地を見た不動産会社の査定で確認するのが確実です。
空き家を売って利益が出たときの税金(譲渡所得税)
空き家を売って**利益(譲渡所得)**が出ると、その利益に対して所得税・住民税(譲渡所得税)がかかります。譲渡所得は次の式で計算します。
譲渡所得 = 売却価格 −(取得費 + 譲渡費用)
- 取得費:その不動産を買ったときの価格や購入諸費用。建物は減価償却を差し引きます。取得費が不明な場合は、売却価格の5%を概算取得費として使えます。
- 譲渡費用:売却のためにかかった費用(仲介手数料・印紙税・解体費など)。
税率は所有期間で変わります(2026年現在)。
| 所有期間 | 区分 | 税率(所得税+住民税+復興税) |
|---|---|---|
| 5年以下 | 短期譲渡所得 | 約39.63% |
| 5年超 | 長期譲渡所得 | 約20.315% |
ここで相続した空き家には大きなポイントがあります。取得費も所有期間も、亡くなった方(被相続人)のものを引き継ぐという点です。親が何十年も前に取得した家なら、相続してすぐ売っても「長期譲渡所得(約20.315%)」になるケースが多くなります。
注意したいのが、先述の「取得費が不明」のケースです。古い家は購入時の契約書が残っておらず、概算取得費(売却価格の5%)しか使えないと、利益が大きく計算され税負担が増えがちです。後述の特例で抑えられるかが重要になります。
税負担を抑える特例(3000万円特別控除・取得費加算)
空き家売却の税金は、特例を使えるかどうかで大きく変わります。代表的な2つを押さえましょう。
① 被相続人の居住用財産(空き家)の3000万円特別控除
一定の条件を満たす相続空き家を売ると、譲渡所得から最大3000万円を控除できます(租税特別措置法第35条第3項)。主な条件は次のとおりです。
- 被相続人が相続開始直前まで一人で居住していた家屋であること
- 昭和56年5月31日以前に建築された旧耐震基準の家屋であること
- 相続開始から3年を経過する年の12月31日までに売却すること
- 売却前に耐震改修するか、取り壊して更地にすること
- 売却価格が1億円以下であること
- 相続後に賃貸などに使っていないこと
なお2024年1月以降の譲渡では、相続人が3人以上の場合の控除上限は2000万円に引き下げられています。詳しい条件とチェックリストは空き家の3000万円特別控除を使い切るで解説しています。
② 相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例
相続税を納めた方が、相続税の申告期限の翌日から3年以内にその不動産を売却した場合、納めた相続税の一部を取得費に加算できる特例です(租税特別措置法第39条)。取得費が増えるぶん譲渡所得が下がり、譲渡所得税が軽くなります。
この2つは要件が異なり、併用できる場合とできない場合があります。どちらが有利かは個別事情によるため、税理士への試算をおすすめします。
確定申告の手順
空き家を売って利益が出た場合、または特例を使う場合は確定申告が必要です。売却した年の翌年の2月16日〜3月15日に、所轄の税務署または国税庁のe-Taxで申告します。
主な必要書類は次のとおりです。
- 譲渡所得の内訳書(税務署の書式)
- 売買契約書の写し(購入時・売却時)
- 取得費・譲渡費用がわかる領収書
- 3000万円特別控除を使う場合:被相続人居住用家屋等確認書(市区町村が発行)、登記事項証明書 など
最も多い失敗が、「特例で税金がゼロになるから申告しなくていい」という誤解です。特例は確定申告をして初めて適用されます。申告を忘れると特例が使えず、本来の税率で課税されてしまうため注意してください。
売却前の片付け・残置物の処分
空き家を売る前に避けて通れないのが、家財・残置物の片付けです。家具・家電・仏壇・大量の日用品などが残ったままだと、内見の印象が悪く、買主も価格交渉に入りやすくなります。
- 自分で処分:時間はかかるが費用を抑えられる。自治体の粗大ごみ回収を利用。
- 不用品回収・遺品整理業者に依頼:数万円〜数十万円。短期間で片付く。
- 古家付き土地・現状渡しで売却:解体や片付けを買主側に委ねる方法。価格は下がりやすい。
仏壇や神棚など供養が必要なものは、菩提寺や専門業者に相談するのが安心です。片付けの費用と手間、売却価格への影響を天秤にかけて方針を決めましょう。
空き家売却でよくある失敗と注意点
実務で繰り返し見てきた「つまずきポイント」を挙げます。多くは時間の制約に関わるものです。
① 名義変更(相続登記)を後回しにする
名義が亡くなった方のままでは売れません。放置するうちに相続人が増え、いざ売ろうとしたら「相続人が十数人」という事態にもなりかねません。相続が発生したら、まず登記を整えることが第一歩です。
② 3000万円特別控除の「3年」の期限を過ぎる
3000万円特別控除には「相続開始から3年を経過する年の12月31日まで」という期限があります。耐震改修や解体、売却活動には数か月単位の時間がかかるため、期限から逆算したスケジュールが欠かせません。
③ 取得費がわからず税負担が膨らむ
購入時の契約書が見つからないと、概算取得費(売却価格の5%)しか使えず利益が大きく計算されます。古い書類でも探す価値があります。
④ 「特定空家」に指定され固定資産税が上がる
管理されず放置された空き家は、市区町村から「特定空家」に指定され、固定資産税の住宅用地特例(最大6分の1)が外れて税負担が増えることがあります。詳しくは特定空家の指定を回避する方法をご覧ください。
⑤ 売る・貸す・解体の判断を先送りにする
空き家は持っているだけで固定資産税・管理の手間・劣化が進みます。活用の選択肢は空き家活用の選択肢で整理していますが、いずれにせよ早めの方針決定が損失を防ぎます。
売るか・貸すか・解体か
空き家の出口は、大きく「売却」「賃貸活用」「解体して土地活用・売却」の3つです。
- 売却が向くケース:早く現金化したい、相続人で分けたい、維持の負担が大きい
- 賃貸が向くケース:立地に賃貸需要があり、修繕すれば貸せる、長期保有したい
- 解体が向くケース:建物の劣化が激しい、更地のほうが売れやすい立地
特に相続人が複数いる場合は、売却して現金で分ける「換価分割」が選ばれることが多くあります。判断に迷う段階で、エリアの相場と需要の両面から比較することをおすすめします。
まとめ:空き家売却は「名義→費用→税金→特例」の順で
空き家売却は、①名義(相続登記)を整える → ②費用の見積りを取る → ③税金(譲渡所得)を試算する → ④使える特例を確認するという順番で進めれば、迷わず動けます。そのうえで、3000万円特別控除の3年期限など、時間制約のある手続きから逆算してスケジュールを組むことが、税負担と手間を最小化する鍵です。
空き家は、放置するほど維持費がかさみ、特例の期限も近づきます。「いつか」ではなく「今」方針を決めることが、結果的にいちばん得をする選択になります。
個別事情により取扱は異なります。税務・登記の詳細は税理士・司法書士などの専門家へご相談ください。
空き家の売却をROCKEDGEに相談する
ROCKEDGEでは、相続した空き家の売却について、相続登記・費用の試算・税特例の確認・売却活動まで、専門家チームと連携してサポートします。「名義がそのままで何から始めればいいかわからない」という段階から、お気軽にご相談ください。
対応エリア: 東京・埼玉・神奈川・千葉(1都3県)