この記事でわかること
- 隣から苦情の電話が来たとき、今日から今週で取るべき対処の順番
- 越境してきた枝を自分で切れる条件(令和5年4月1日施行の改正民法233条)と、根との扱いの違い
- 自分の空き家の草木が隣家へ越境しているときに求められる対応
- 放置した場合の「管理不全空家等」「特定空家等」への段階的な措置と、固定資産税の負担が増える仕組み
- 除草・伐採・害虫駆除の費用の目安の幅と、見積もりで確認すべき点
夏の空き家で草・虫・においの苦情を受けたら、まず現地確認と記録、次に応急の草刈り、その後に再発防止の管理計画という順番で進めるのが現実的です。
7月から9月は、空き家に関するご相談がもっとも増える時期です。梅雨明けからの猛暑と夕立で草は一か月で膝丈を超え、藪蚊が湧き、軒下や戸袋にスズメバチが巣を作ります。台風や豪雨で枝が折れて隣家の屋根に落ちることもあります。そしてお盆の帰省で久しぶりに実家を見て、想像以上の状態に言葉を失う——そんな夏を、多くの所有者の方が迎えています。
ROCKEDGE住まい相談室に寄せられた相談から
「遠方に住んでいるが、実家の隣の方から『垣根が越えてきて洗濯物が干せない、庭から異臭がする』と電話があった。すぐには行けず、どうすればいいのか分からない」——夏場に寄せられるご相談は、たいていこの形をしています。そして現地を見ると、越境しているのは生垣の一部だけ、においの原因は水回りの排水トラップ(下水のにおいを止める水のたまり)が蒸発して切れていただけ、というケースが少なくありません。応急の刈り込みと、全ての蛇口・トイレの通水で収まることも多く、原因さえ分かれば大ごとではない、という場合が実際にはかなりあります。
苦情の電話を受けたら、今日から今週で何をすればいい?
Q: 隣から苦情の電話が来ました。まず何をすべきですか? A: 謝罪や反論を急ぐ前に、現地の状態を確認して記録することが先です。 何がどこまで越境しているか、においの発生源はどこかが分からないままでは、有効な手も打てず、相手にも説明できません。
以下の順番で進めるのが現実的です。
- その場では「確認して折り返す」と伝える。 電話口で「切っていいですよ」「うちは関係ない」と即答しないこと。状況を把握してから答えるほうが、結果的に話が早く収まります。
- 現地を確認し、写真と日付を記録する。 遠方で行けない場合は、親族・知人・空き家管理サービス・シルバー人材センターなどに依頼して撮影してもらいます。境界付近は特に、越境の有無が分かる角度で撮っておきます。
- 原因を切り分ける。 草の繁茂、樹木の越境、ハチの巣、獣の侵入、排水トラップの封水切れによる下水臭、床下や畳のカビ臭では、必要な対処も費用もまったく違います。
- 応急処置を手配する。 草刈りとハチの巣の駆除は、危険が及ぶため優先度が高い項目です。においについては、全ての蛇口・トイレを数分ずつ通水するだけで改善することがあります。
- 近隣へ結果を報告する。 「いつ、誰が、何をしたか」を一言伝えるだけで、関係の悪化はかなり防げます。連絡先を伝えておくと、次に何かあったとき苦情ではなく相談として届きます。
- 再発防止の段取りを決める。 夏場は年1回の草刈りでは足りないことが多く、6月・8月・10月など複数回に分けるほうが結果的に費用を抑えられる場合があります。
除草・伐採・害虫駆除の費用はどのくらいかかる?
費用は面積・草丈・搬出のしやすさ・処分量・地域によって大きく変わります。以下はあくまで幅としての目安であり、単一の金額を前提に判断しないでください。
| 作業 | 費用の目安(幅) | 変動する主な要因 |
|---|---|---|
| 草刈り(100㎡程度) | 1万〜5万円程度 | 草丈、傾斜、重機の可否、刈草の処分量 |
| 樹木の伐採(1本) | 数千円〜数万円程度 | 幹の太さ、高さ、電線・隣家との距離 |
| 大径木・高所作業を伴う伐採 | 10万円を超えることもある | クレーンや高所作業車の要否 |
| ハチの巣の駆除 | 1万〜数万円程度 | 巣の位置、大きさ、種類 |
| 刈草・伐採枝の処分 | 別途加算されることが多い | 量と処分場までの距離 |
見積もりを取る際は、処分費・出張費が含まれているか、作業範囲がどこまでかを必ず書面で確認してください。自治体によってはハチの巣の駆除費用や空き家の除却に補助制度を設けている場合があるため、物件所在地の市区町村へ確認する価値があります(2026年7月現在、制度の有無や内容は自治体ごとに異なります)。
隣から越境してきた枝は自分で切ってよい?——民法233条の改正
Q: 隣の空き家から伸びてきた枝を、自分で切ってもいいですか? A: 原則は竹木の所有者に切除させますが、令和5年4月1日施行の改正民法233条により、一定の場合には越境された側が自ら切り取れるようになりました。
民法233条第1項は、隣地の竹木の枝が境界線を越えるとき、その竹木の所有者に枝を切除させることができると定めています。従来はこれが徹底されており、相手が応じなければ訴訟を経る必要がありました。
改正後の同条第3項では、次のいずれかに当てはまるとき、越境された土地の所有者が自ら枝を切り取れることになりました。
- 竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、相当の期間内に切除しないとき
- 竹木の所有者を知ることができず、またはその所在を知ることができないとき
- 急迫の事情があるとき
「相当の期間」が何日なのかは条文に書かれておらず、枝の量や作業の手間、相手の状況によって変わります。何日待てば足りるかを自己判断で決め打ちせず、催告した日付と内容が残る形(配達証明付き内容証明郵便など)で通知しておくのが安全です。なお、台風で折れかけた枝が落下しそうな場合などは、3号の「急迫の事情」にあたり得ます。
枝と根では扱いが違う
| 越境してきた「枝」 | 越境してきた「根」 | |
|---|---|---|
| 原則 | 竹木の所有者に切除させる(233条1項) | 越境された側が自ら切り取れる(233条4項) |
| 自ら切れる場合 | 催告後に切除されない/所有者不明・所在不明/急迫の事情(233条3項) | 従来から条件なし |
根については改正前から自分で切り取ることが認められており、ここは変わっていません。混同しやすい点なので、枝と根は別物として整理してください。なお、切除にかかった費用を竹木の所有者へ請求できると一般に解されていますが、実際に回収できるかどうかは個別の事情によります。
自分の空き家の木が隣家へ越境しているときは?
ここまでは「越境された側」の話ですが、遠方の実家を持つ方の多くは、逆に切除を求められる立場になります。自分の敷地の竹木の枝が隣地へ越境していれば、隣家から切除を請求され得る立場であり、催告を受けて相当の期間内に対応しなければ、隣家が自ら切り取ることを受け入れる結果になります。
さらに、枝が折れて隣家の車や屋根を傷つけた場合、民法717条第2項は、竹木の栽植または支持に瑕疵があるときに工作物責任の規定を準用すると定めています。責任を負うかどうかは瑕疵の有無や個別の事情によって判断されますが、「空き家だから関係ない」とはならない、という点は押さえておいてください。台風シーズンを前に、隣家側へ張り出した枝と、屋根や外壁の浮き・剥がれを確認しておく意味はここにあります。
放置し続けるとどうなる?管理不全空家等と固定資産税
空家等対策の推進に関する特別措置法(平成26年法律第127号)は、令和5年法律第50号による改正が令和5年12月13日に施行され、「管理不全空家等」という区分が新たに設けられました。放置すれば特定空家等になるおそれのある状態の空き家が対象です。
| 区分 | 市区町村が取り得る措置 |
|---|---|
| 管理不全空家等(法13条) | 指導 → 改善されない場合に勧告 |
| 特定空家等(法22条) | 助言・指導 → 勧告 → 命令 → 行政代執行 |
ここで所有者にとって影響が大きいのが、勧告を受けると、その敷地が固定資産税の住宅用地特例の対象から外れるという点です。地方税法349条の3の2は、住宅用地の定義から「空家法13条2項により勧告がされた管理不全空家等」と「空家法22条2項により勧告がされた特定空家等」の敷地を明文で除外しています。住宅用地特例は、住宅が建っている土地の固定資産税の課税標準を、200㎡以下の小規模住宅用地で6分の1に軽減する制度です。これが外れると税額は相応に上がります。ただし負担調整措置などがあるため「必ず6倍になる」わけではなく、実際の増加幅は土地の評価額や自治体によって異なります。
とはいえ、いきなり勧告が出るわけではありません。夏に草木が繁茂した程度で直ちに管理不全空家等とされるのではなく、通常は指導という段階があり、そこで対応すれば勧告には至らないのが一般的な流れです。**近隣からの苦情は、行政の指導より前に届く「早めの合図」**と捉えるほうが実態に近いといえます。
ROCKEDGE住まい相談室では、こうした夏場の苦情対応から、その後の管理・活用・売却まで、どれか一つに寄せることなく、まず現状を整理するところからご相談を承っています。「まだ売る気はないが、この夏をどう乗り切るか決めたい」という段階のご相談も少なくありません。
管理する・活かす・手放す——夏を越えたあとに考える3つの道
苦情への応急対応が済んだら、次に考えるのは「この空き家をどうするか」です。ここに唯一の正解はありません。判断材料を並べます。
1. 管理を続ける
将来使う予定がある、思い入れがある、相続人間で結論が出ていない場合の選択肢です。年間の管理コスト(草刈り複数回、通水、通風、固定資産税、火災保険)を実額で洗い出し、それを何年払い続けられるかを確認してください。維持そのものは正当な判断ですが、費用の見通しを持たないまま続けると、数年後に選択肢が狭まります。
2. 活用する(賃貸・駐車場・地域利用など)
修繕費を投じても回収できる立地かが分かれ目です。修繕見積もりと近隣の賃料相場を突き合わせ、何年で回収できるかを試算します。建物の傷みが進んでいる場合、更地にして土地として活用するほうが合理的なこともあります。
3. 手放す(売却)
管理の手間と費用から解放される一方、価格は立地と状態に強く左右されます。夏に草木が繁茂した状態のままでは内見時の印象が下がるため、売却を検討する場合でも、まず草刈りと片付けが先になります。
判断に迷うときは、**「あと3年、今と同じ手間と費用をかけられるか」**を基準にすると整理しやすくなります。かけられるなら管理か活用、難しいなら売却を含めて検討する、という順です。
なお、本記事の内容は2026年7月現在の一般的な整理です。越境の程度や境界の位置、建物の状態、相続の状況、自治体の運用によって取り得る手段は変わり、個別の事情により結論も異なります。実際の対応にあたっては、市区町村の空き家担当窓口や、弁護士・司法書士・税理士などの専門家へご相談ください。
空き家のお悩みはROCKEDGEの無料相談へ
ROCKEDGEでは空き家に関するご相談を承っています。「何から手をつければいいか分からない」という段階からお気軽にご連絡ください。数多くの相談に対応してきた知見をもとに、あなたの状況に合った選択肢を中立的な立場でご提案します。
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