この記事でわかること
- 相続放棄の原則期限は「自分のために相続が始まったことを知った時から3か月」だということ(民法915条)
- 3か月以内に決められないときは、家庭裁判所に「熟慮期間(じゅくりょきかん)の伸長」をお願いできること
- あとから借金を知った場合など、3か月を過ぎても放棄が認められた裁判例があること
- 故人の財産を使ったり処分したりすると、放棄できなくなってしまうこと(民法921条)
- 「もう手遅れかも」と諦める前に、何をすればいいかの具体的な次の一歩
相続放棄の期限は原則3か月ですが、過ぎても諦めるのは早いです。判断できない事情があれば期限の延長を申し立てられ、借金を後から知ったケースなどでは例外的に放棄が認められることもあります(2026年5月現在)。
先月、ご相談者様から実際にこんなお話を伺いました。お父様を亡くされた50代の女性で、「四十九日も終わってバタバタが落ち着いた頃に、知らない消費者金融から督促状が届いた。父が亡くなってもう4か月。3か月を過ぎているから、もう借金を背負うしかないのでしょうか…」と、声を震わせていらっしゃいました。結論からお伝えすると、このケースは諦めるには早すぎました。「借金の存在を知った時」を起算点(きさんてん=数え始める日)と考える余地があり、まだ打つ手があったのです。この記事では、業界24年の不動産コンサルタントの視点から、3か月を過ぎてしまった方・過ぎそうな方が「次に何をすればいいか」を、はじめての方にもわかるよう丁寧にお伝えします。
そもそも相続放棄の「3か月」はいつから数える?
相続放棄とは、亡くなった方(被相続人)の財産も借金も「いっさい受け継ぎません」と家庭裁判所に申し出る手続きです。プラスの財産よりも借金のほうが多いときに、自分の生活を守るための大切な選択肢です。
この相続放棄には期限があります。民法915条で「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」と定められています。この3か月間を「熟慮期間(じゅくりょきかん)」と呼びます。じっくり考えて決めるための期間、という意味です。
ここで多くの方が誤解しがちなのが、「亡くなった日から3か月」だと思い込んでしまうことです。正確には**「自分が相続人になったことを知った時から」**数えます。
| 数え始める日(起算点) | 具体例 |
|---|---|
| 死亡を知った日 | 同居の家族が亡くなった場合など |
| 自分が相続人だと知った日 | 先順位の相続人が放棄し、自分に順番が回ってきたと知った日 |
| 借金の存在を知った日 | 財産は何もないと思っていたら、後日督促状が届いた場合(※後述) |
つまり、必ずしも「死亡日=スタート」ではありません。ご自身の状況によっては、スタート地点が後ろにずれることがあるのです。ここを正しく理解することが、最初の一歩になります。
3か月以内に決められないときは「期間の延長」を申し立てられる
「財産がどれくらいあるか調べきれない」「遠方の不動産や預金の調査に時間がかかる」——こうした事情で3か月以内に判断できないことは珍しくありません。
そんなときは、家庭裁判所に「熟慮期間の伸長(しんちょう)」を申し立てることができます。これは「決める期限をもう少し延ばしてください」とお願いする手続きです。
申し立ての手順(番号付きで具体的に)
- 申立先を確認する:亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。
- 必要書類をそろえる:申立書、被相続人の戸籍(除籍)謄本、申立人の戸籍謄本などが基本です。
- 収入印紙・郵便切手を準備する:相続人1人あたり収入印紙800円分と、連絡用の郵便切手が必要です(2026年5月現在)。
- 期限が来る前に提出する:ここが最重要です。3か月が過ぎてからでは原則申し立てできません。
延長が認められると、さらに数か月の調査期間が与えられます。「間に合わないかも」と感じたら、放棄するかどうか迷っている段階でも、まず延長を申し立てておくのが安全です。
ポイント:延長の申し立ては「期限内」に行うのが鉄則です。「もう少し考えたい」だけでも、期限ギリギリではなく余裕をもって動きましょう。
3か月を過ぎても放棄が認められるケースはある?
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。3か月を過ぎても、放棄が認められた例は実際にあります。
最高裁判所は昭和59年4月27日の判決で、一定の場合には熟慮期間の起算点を後ろにずらして考える、という判断を示しています。かみくだいて言うと——
「相続財産がまったく無いと信じていて、そう信じることに無理もない事情があった場合は、借金などの存在を知った時から3か月を数える」
という考え方です。
冒頭の女性のケースがまさにこれにあたります。「父には財産も借金も無い」と信じていて、調べてもわからなかった。それなのに4か月後に突然督促状が届いた——この場合、「死亡を知った日」ではなく「督促状で借金を知った日」から3か月を数えられる可能性があるのです。
ただし、これはあくまで例外的な扱いです。「知らなかった」と言えば必ず認められるわけではなく、**「知らなかったことに無理もない事情があったか」**が個別に判断されます。だからこそ、自己判断で諦めず、また自己判断で「大丈夫だろう」と放置もせず、早めに専門家へ相談することが大切なのです。
やってはいけない!「単純承認」とみなされる行為
期限の話と同じくらい注意していただきたいのが、「うっかり相続を受け入れたことにされてしまう」落とし穴です。
民法921条では、相続人が相続財産の全部または一部を処分したときは、「単純承認(たんじゅんしょうにん)」をしたものとみなす、と定めています。単純承認とは「財産も借金も全部受け継ぎます」と認めることで、こうなるともう相続放棄はできません。
具体的に注意したい行為の例:
- 故人の預金を引き出して自分の生活費などに使う
- 故人の不動産や車を売却・名義変更する
- 故人宛ての賃料・配当などを受け取って使ってしまう
- 価値のある遺品を形見分けの範囲を超えて処分・売却する
「葬儀費用を故人の預金から支払う」など、社会通念上認められる範囲の支出は問題にならないとされる場合もありますが、線引きは微妙です。放棄を少しでも考えているなら、故人の財産には手をつけないことが大原則です。
一方で、相続には不動産という「分けにくい・現金化しにくい」財産がからむことも多く、これが家族の争いの火種になりがちです。「放棄するほどではないが、誰がどう引き継ぐかでもめている」という場合、不動産を売って現金で公平に分ける「換価分割(かんかぶんかつ)」が、もめない解決策になることもあります。ROCKEDGEでは、査定から売却、必要に応じた税理士・司法書士との連携まで、中立的な立場でワンストップにご一緒できます。「処分にあたるのか不安」という段階のご相談も歓迎です。
迷ったら何をすればいい?次の一歩チェックリスト
最後に、はじめての方が今日から動けるよう、順番に整理します。
- 「自分がいつ相続を知ったか」を書き出す:死亡日ではなく、相続人だと知った日・借金を知った日を確認します。
- 財産と借金をリストアップする:通帳、郵便物、督促状、不動産の権利証などを集めます。
- 3か月の期限を逆算する:間に合わなそうなら、期限内に「熟慮期間の伸長」を申し立てます。
- 故人の財産には手をつけない:放棄の可能性が少しでもあるうちは現状維持が安全です。
- 早めに専門家へ相談する:特に「3か月を過ぎている」「借金を後から知った」場合は、例外が使えるかの見極めが重要です。
相続は、感情の面でも「言い出しにくい」「不公平に感じる」といったしこりが残りやすいものです。早い段階で中立の専門家を間に入れることが、結果的に家族がもめない最大のコツだと、24年の現場で何度も実感してきました。
なお、相続放棄や熟慮期間の判断は、ご家族の人数・財産の状況・知った時期などの個別の事情により結論が大きく変わります。この記事は一般的な解説であり、具体的な手続きの可否は個別の事情により異なるため、詳細は弁護士・司法書士などの専門家へご相談ください。
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