この記事でわかること
- 相続した実家の「売る・貸す・住む・空き家のまま持つ」4つの選択肢それぞれのメリットと、かかるお金(コスト)の違い
- 空き家のまま放置すると、なぜ税金や管理の負担が重くなるのか(特定空家のリスク)
- 売るときに使える「取得費加算」と「空き家3000万円特別控除」の期限と要件のポイント
- 貸すときに必要なリフォーム費用や、賃貸経営でつまずきやすい注意点
- 何から手をつければいいか分からない人のための、後悔しない判断の進め方(迷ったらまず査定から)
相続した実家は、立地・築年数・あなたの生活拠点・税金の負担を総合的に見て決めるのが後悔しないコツです。中でも「売る・貸す・住む・空き家のまま」の4択は、お金のかかり方が大きく違います。
先月、ご相談者様から実際に受けたケースをご紹介します。地方にあるご実家を相続された40代の姉妹が、「思い出があるから手放したくない。でも誰も住む予定はないし、固定資産税だけ毎年払い続けるのもつらい」と悩んでいらっしゃいました。話を伺うと、築40年で耐震性にも不安があり、賃貸に出すにも大きなリフォームが必要な状態。最終的には、まず現状を正しく知るために査定を受け、姉妹で「売って現金で公平に分ける(換価分割)」という結論に落ち着き、わだかまりなく相続を終えられました。大切なのは、感情と数字の両方を一度テーブルに並べて見ることです。この記事では、その判断の地図をお渡しします。
相続した実家、選択肢は大きく4つ
まず全体像をつかみましょう。相続した実家の使い道は、次の4つに整理できます。
| 選択肢 | 向いている人 | 主なメリット | 主なコスト・リスク |
|---|---|---|---|
| 売る | 誰も住まず、現金で公平に分けたい | まとまった現金化・維持費ゼロ・税の特例が使える | 譲渡所得税、仲介手数料、思い出を手放す心理面 |
| 貸す | 立地が良く、長く資産として持ちたい | 家賃収入が得られる | リフォーム費、空室・滞納リスク、管理の手間 |
| 住む(自分で使う) | その家に住む・使う予定がある | 住居費の節約、思い出を守れる | 修繕費、ローン残債があれば返済 |
| 空き家のまま持つ | まだ決められない | 急いで決めなくてよい | 固定資産税・管理費が出続ける、特定空家リスク |
ここで覚えておきたいのは、「決めない(空き家のまま)」も一つの選択であり、しかも一番お金が静かに出ていく選択になりがちだ、という点です。次の章で詳しく見ていきます。
空き家のまま放置するとどうなる?
「とりあえずそのままに」が一番危ない、というのが業界24年で何度も見てきた現実です。
人が住まない家でも、毎年かかるお金があります。固定資産税・都市計画税、火災保険、庭木の手入れや通水などの管理費です。誰も使っていないのに、年間で数万円〜数十万円が出ていきます。
さらに注意したいのが**特定空家(とくていあきや)**です。これは、空家等対策の推進に関する特別措置法に基づき、倒壊の危険や著しく衛生上有害といった状態の空き家を市区町村が指定する制度です。指定を受けて改善の勧告に従わないと、土地にかかる固定資産税を安くしてくれる「住宅用地の特例」が外れ、**固定資産税が大きく上がる(最大で約6倍になり得る)**ことがあります(2026年5月現在)。
Q: 空き家を放置すると、相続登記もしなくて大丈夫ですか? A: いいえ。2024年4月1日から相続登記の申請が義務化されました。相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記しないと、正当な理由なく怠った場合に過料の対象となり得ます。名義を放置すると、いざ売ろうとしたときに手続きが一気に複雑になります。
つまり「空き家のまま」は、お金が出続け、リスクが積み上がる時間でもあります。
「売る」を選ぶときに知っておきたい税金の特例
誰も住む予定がなく、相続人が複数いて公平に分けたい——そんなときに有力なのが換価分割(かんかぶんかつ)、つまり不動産を売ってお金にしてから分ける方法です。不動産は「分けにくい・現金化しにくい」ため争いの火種になりやすいのですが、現金なら1円単位で公平に分けられます。
売却益(譲渡所得)には税金がかかりますが、相続不動産には負担を軽くする2つの特例があります。
1. 取得費加算の特例 相続税を納めた人が、一定期間内に相続財産を売ると、支払った相続税の一部を「取得費」に上乗せでき、売却益が圧縮されて税金が軽くなります。期限は、相続税の申告期限(相続開始から原則10か月)の翌日以後3年以内。つまりおおよそ相続開始から3年10か月以内が目安です。
2. 空き家の3000万円特別控除 亡くなった方が一人で住んでいた家を相続し、一定の要件(昭和56年5月31日以前に建てられた家であること、売却までに耐震改修するか取り壊すこと、など)を満たして売ると、譲渡所得から最大3000万円を差し引ける制度です。適用には期限や細かな要件があるため、使えるかどうかは早めの確認が肝心です。
これらは併用に制限があったり、要件が細かかったりします。「使えるはず」と思い込まず、税理士に確認するのが安全です。
「貸す」「住む」を選ぶときの現実的なコスト
貸す場合は家賃という収入が魅力ですが、入居者に貸せる状態にするための原状回復・リフォーム費用が先に必要です。築年数が古い家ほど、水回りの交換や内装で数百万円かかることも珍しくありません。さらに、空室で家賃が入らないリスク、家賃の滞納、設備故障の修繕、管理会社への委託費など、賃貸経営は「ほったらかしで儲かる」ものではありません。立地が良く需要が見込める場合に検討する選択肢です。
住む(自分で使う)場合は、住居費が浮き、思い出のある家を守れる安心感があります。一方で、古い家は耐震・断熱・設備の更新に費用がかかります。通勤・通学や今の生活拠点から無理がないか、リフォーム費用を払ってでも住み続ける価値があるかを冷静に見ましょう。
後悔しないための判断フロー
迷ったら、次の順番で考えると整理しやすくなります。
- 現状を知る:まず登記の名義・築年数・立地・おおよその市場価値を確認する。ここが全ての土台です。
- 使う予定があるか:相続人の誰かが住む・使う予定があるなら「住む」を軸に検討。
- 貸せる立地・状態か:賃貸需要があり、リフォーム費を回収できる見込みがあれば「貸す」。
- 誰も使わず、公平に分けたいか:それなら「売る(換価分割)」が現実的。税の特例の期限にも注意。
- どうしても今決められない:その場合も、空き家の維持費とリスクが続くことを理解したうえで期限を区切る。
判断の第一歩は、感情ではなく「現状把握」です。とはいえ、家族それぞれに思いがあり、誰かが「売ろう」と言い出しにくいのもよく分かります。そんなときこそ、中立の専門家を早めに入れることが、もめない最大のコツです。第三者が数字を整理すると、「不公平だ」という感情の対立が、冷静な話し合いに変わりやすくなります。
ROCKEDGEでは、まず無理に売却を勧めることなく、現状の査定(今いくらで売れそうか)から、必要に応じて税理士・司法書士と連携した手続きまで、中立の立場でワンストップでお手伝いしています。「売る・貸す・住む」を決める前の、現状を知るための査定だけでもお気軽にご相談ください。
なお、相続不動産の判断は、家族構成・税負担・物件の状態など個別の事情によって最適解が大きく異なります。具体的な手続きや税額については、税理士・司法書士などの専門家へご相談ください。
まとめ
相続した実家は、「売る・貸す・住む・空き家のまま」のどれが正解かは家庭ごとに違います。共通して言えるのは、放置が最もコストとリスクを生みやすいこと、そして判断の出発点は「現状把握」だということです。税の特例には期限があるため、迷っている時間も実はコストになっています。まずは現状を知るところから、一歩を踏み出してみてください。
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