契約不適合責任とは?瑕疵担保責任からの改正点と売主の責任範囲

2020年4月施行の改正民法で瑕疵担保責任が契約不適合責任に変わりました。買主の4つの権利(追完・減額・賠償・解除)、不適合を知った時から1年以内の通知(民法566条)、免責特約と売主の責任範囲を不動産コンサルタントが解説します。

この記事でわかること

  • 2020年4月施行の改正民法で「瑕疵担保責任」が「契約不適合責任」に変わった理由と中身
  • 買主が売主に主張できる4つの権利(追完請求・代金減額請求・損害賠償・契約解除)
  • 「不適合を知った時から1年以内」の通知ルール(民法566条)の正しい意味
  • 個人間売買で「免責特約」を付ける際の注意点と、特約があっても売主が逃げられないケース
  • トラブルを未然に防ぐために契約前に確認すべきポイント

契約不適合責任とは?結論を先に

契約不適合責任とは、引き渡された不動産が「契約の内容に適合していない」場合に、売主が買主に対して負う責任のことです。2020年4月施行の改正民法(民法562条以下)により、従来の「瑕疵担保責任」を置き換える形で導入されました。

「瑕疵(かし)」という分かりにくい言葉が「契約内容との不適合」という基準に整理され、買主が使える権利も広がりました。雨漏り・シロアリ・地中埋設物・設備の故障など、「契約で約束した品質・状態と違った」と評価されれば、買主は売主に対して是正や減額を求められます。

先月、ご相談者様から実際にこんなケースを伺いました。中古戸建てを購入した直後に2階の天井から雨漏りが見つかり、「もう契約は終わったのだから売主には言えないのでは」と諦めかけておられたのです。私は業界24年の不動産コンサルタントの立場から、「契約書にどう書かれているか」と「いつ気づいたか」を一緒に確認しました。契約不適合責任は契約後すぐに消えるものではありません。まず事実関係と契約条項を整理することが、解決の第一歩になります。

瑕疵担保責任から契約不適合責任へ|何が変わった?

「隠れた瑕疵」の要件がなくなった

旧法の瑕疵担保責任では、「隠れた瑕疵(買主が通常の注意では気づけなかった欠陥)」であることが要件とされ、「隠れていたかどうか」をめぐって争いになりがちでした。

改正民法では、判断の基準が「契約の内容に適合しているか」に統一されました。つまり、契約書・重要事項説明・図面・チラシなどで示された内容と、引き渡された不動産の現状が食い違っていれば「不適合」と評価されます。「隠れていたか」ではなく「契約でどう約束したか」が出発点になった、という点が最大の変化です(2026年5月現在の解釈)。

買主の救済手段が整理・拡充された

旧法では原則として「損害賠償」と「契約解除」が中心でしたが、改正後は次の表のとおり救済手段が明文化されました。

区分旧:瑕疵担保責任新:契約不適合責任
判断基準隠れた瑕疵契約内容との不適合
追完請求(修補・代替物)明文なし民法562条で明記
代金減額請求限定的民法563条で明記
損害賠償あり(無過失責任)民法564条→415条(債務不履行の枠組み)
契約解除目的不達成の場合民法564条→541・542条

買主が使える4つの権利|契約不適合責任の中身は?

Q. 不動産に不適合が見つかったら、買主は何を請求できますか?

A. 改正民法では、買主は次の4つを状況に応じて主張できます。

  1. 追完請求(民法562条):「契約どおりに直してほしい」と求める権利。修補(補修)や代替物・不足分の引渡しを請求します。不動産では補修請求が中心です。
  2. 代金減額請求(民法563条):追完を催告しても応じてもらえない場合などに、不適合の程度に応じて代金の減額を求める権利です。
  3. 損害賠償請求(民法564条・415条):不適合によって生じた損害の賠償を求める権利。改正後は債務不履行の枠組みで判断され、原則として売主に帰責事由(落ち度)が必要とされます。
  4. 契約解除(民法564条・541条・542条):契約の目的を達成できないなど一定の場合に、契約そのものを解除できます。

請求の順序にも実務上のポイントがあります。まず追完(補修)を求め、それでも解決しないときに減額・賠償・解除へ進むのが基本的な流れです。いきなり解除を主張すると認められにくいことがあるため、書面での催告など手順を踏むことが大切です。

「不適合を知った時から1年以内」の通知とは?

期間の起算点を誤解しないこと

民法566条は、目的物の「種類または品質」に関する不適合について、買主が不適合を知った時から1年以内にその旨を売主へ通知しなければ、原則として権利を行使できなくなると定めています。

ここで誤解が多いのが起算点です。「引渡しから1年」ではなく、「不適合を知った時から1年」です。たとえば引渡しから2年後に初めてシロアリ被害に気づいた場合でも、気づいた時から1年以内に通知すれば権利を保てる可能性があります(消滅時効など別の期間制限はかかります)。

なお、この1年の通知ルールは「種類・品質」の不適合に関するものです。土地の面積不足など「数量」に関する不適合や、権利の不適合には、この規定はそのまま適用されません。

個人間売買の免責特約|売主はどこまで責任を限定できる?

特約による免責は原則有効、ただし例外がある

契約不適合責任の規定は、当事者の合意(特約)で変更できる「任意規定」です。そのため、個人どうしの売買では「現状有姿(げんじょうゆうし)で引き渡し、売主は契約不適合責任を負わない」といった免責特約を付けることがあり、原則として有効です。古い物件をそのままの状態で売買する場合などによく使われます。

ただし、ここに重要な落とし穴があります。

知っていて告げなかった事実は、特約があっても免責されない

民法572条は、売主が契約不適合責任を負わない旨の特約をしたときでも、売主が「知りながら告げなかった事実」については責任を免れないと定めています。たとえば、過去に床下浸水があったことや雨漏りの事実を知りながら買主に伝えなかった場合、「免責特約があるから」という理由だけでは責任を回避できません。

さらに、売主が宅地建物取引業者で買主が一般消費者の場合や、事業者と消費者の取引には、宅地建物取引業法・消費者契約法などによる保護が及ぶことがあり、買主に一方的に不利な免責特約が制限される場合があります。「個人間だから何でも免責にできる」と考えるのは危険です。

免責特約を入れる側(売主)も、外す側(買主)も、契約書の文言ひとつで責任範囲が大きく変わります。契約不適合をめぐるトラブルは、契約書のチェック段階で多くを防げます。ROCKEDGEでは契約書の条項確認や、買主・売主双方の立場からのリスク整理について無料でご相談を承っていますので、署名前の段階でお気軽にお声がけください。

契約前に確認したいチェックポイント

  • 契約書に「契約不適合責任を負わない」旨の特約が入っていないか
  • 特約がある場合、その範囲・期間(例:引渡しから○か月)はどうなっているか
  • 重要事項説明書・物件状況報告書に、雨漏り・シロアリ・浸水歴などが記載されているか
  • 設備表で「故障・不具合あり」とされた箇所はどこか
  • 売主が把握している不具合がきちんと書面で開示されているか

これらは、後から「言った・言わない」の争いを避けるための記録にもなります。

契約不適合責任は条文の理解だけでなく、契約書の文言・通知のタイミング・証拠の残し方が結果を左右します。本記事は2026年5月現在の制度を一般的に解説したものであり、個別の事情により判断は異なります。実際のトラブルや契約内容の確認については、早めに専門家へご相談ください。


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よくある質問

契約不適合責任と瑕疵担保責任は、どこが一番違うのですか?
最大の違いは判断基準です。旧法の瑕疵担保責任は「隠れた瑕疵」であることが要件でしたが、改正民法(2020年4月施行)の契約不適合責任は「契約の内容に適合しているか」で判断します。また、買主の救済手段として追完請求(562条)・代金減額請求(563条)が明文化され、損害賠償・解除と合わせて整理されました。
不適合に気づいたら、いつまでに何をすればよいですか?
民法566条により、目的物の種類・品質に関する不適合は「不適合を知った時から1年以内」に売主へ通知する必要があります。起算点は引渡し時ではなく気づいた時です。通知は後の争いを避けるため、内容証明郵便など記録の残る方法が望ましいです(別途、消滅時効の期間制限もかかります)。
契約書に「売主は契約不適合責任を負わない」と書いてあれば、買主は何も言えないのですか?
免責特約は原則有効ですが、民法572条により、売主が知りながら告げなかった事実については特約があっても責任を免れません。また、宅地建物取引業者が売主で買主が消費者の場合などは、宅建業法・消費者契約法による保護で特約が制限されることがあります。
中古の戸建てを現状有姿で売買します。売主として何に注意すべきですか?
把握している不具合(雨漏り・シロアリ・浸水歴など)は、物件状況報告書などで正直に書面開示することが重要です。免責特約を付けても、知っていて告げなかった事実は民法572条で免責されません。開示しておくことが、結果的に売主自身を守ります。
追完請求・代金減額・損害賠償・解除は、好きなものを選べますか?
状況により使える権利が変わります。実務上はまず追完(補修)を求め、応じてもらえないときに代金減額や損害賠償、契約目的を達成できない場合に解除へ進むのが基本です。いきなり解除を主張すると認められにくいことがあるため、書面での催告など手順を踏むことが大切です。

出典・参考

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