借地に建つ実家は、地主の承諾がなくても、裁判所の許可を得て売ることができます

親から受け継いだ実家が「借地(土地は他人のもの、建物だけが自分のもの)」に建っている方へ。地主に売却の相談をしたら渋られてしまった、話し合いが進まない、という場面でも、売る道が閉ざされたわけではありません。借地借家法19条1項には、地主の承諾に代わる許可を裁判所に出してもらう手続き(借地非訟(しゃくちひしょう))が用意されています。

何が変わったのか

変わったのは制度ではなく、「地主がうんと言わなければ売れない」という思い込みです。借地上の建物を売ると、建物だけでなく土地を借りる権利(賃借権)も買い主へ移ります。そのため、民法612条により地主の承諾が必要になります。ここで承諾が得られないとき、借地権を持っている人(借地人)の側から、土地の賃借権を譲ることの許可を裁判所に申し立てることができます。裁判所が「相当と認める」と判断すれば、地主の承諾に代わる許可の裁判が出され、それをもって譲ることができます。つまり、話し合いが行き詰まった場合の出口が法律の中にあらかじめ置かれている、ということです。

首都圏の住まいへの影響

東京・埼玉・神奈川・千葉には、戦後から長く借地のまま使われてきた住宅地が各所にあります。そこに建つ実家を相続した方が、売ろうとして最初につまずくのが、まさにこの地主の承諾です。承諾が出ない=資産価値ゼロ、と早まって結論を出し、空き家のまま固定資産税と管理の手間だけを負い続けてしまうケースが少なくありません。東京都内の物件については、東京地方裁判所の民事第22部がこの借地非訟を扱っており、同部の説明によれば、多くの事件は概ね1年以内に終わっているとされています。手続きには時間がかかるものの、「売る前提で段取りを組める期間」として見通しを立てることは可能です。

いつ・何を確認すればいいか

  • まず手元の書類を確認する。土地の賃貸借契約書、建物の登記、地代の支払い記録がそろっているかを見ておく。借地なのか所有地なのかが曖昧なままでは、どの手続きに乗るかも決まりません。
  • 地主との話し合いの経過を記録に残す。いつ、どう相談し、どう返されたかは、承諾が得られない状況を説明する材料になります。
  • 申し立てを考える段階で、借地非訟の経験がある弁護士・司法書士に相談する。手続きの要件や必要書類の判断は専門家の領域です。
  • 手続きの流れ・申立先・最新の運用は、裁判所の一次情報で確認する。期限や細かな取り扱いは本記事の範囲外なので、必ず下記の一次ソースをご覧ください。

一次ソース:裁判所 東京地方裁判所「第1 借地非訟とは」 https://www.courts.go.jp/tokyo/saiban/minji-section22/minji-section22-mokuji-1/index.html

よくある質問

Q. 地主に反対されたら、もう売れないのでしょうか。 A. いいえ。承諾が得られないときは、借地人の側から土地の賃借権を譲ることの許可を裁判所に申し立てられます。裁判所が相当と認めれば、地主の承諾に代わる許可の裁判を受けられます。

Q. どのくらいの期間がかかりますか。 A. 東京地方裁判所の説明では、この手続きを扱う民事第22部において、多くの事件は概ね1年以内に終わっているとされています。個々の事情による差については一次ソースや専門家にご確認ください。

Q. 「地主が自分で買い取る」と言い出すことはありますか。 A. あります。地主の側には、第三者に譲らせる代わりに自分が買い取る「介入権」と呼ばれる仕組みがあります。どちらの結末になるかで売却先も手取りも変わるため、申し立てを考える段階で弁護士に見通しを確認しておくのが安全です。なお、売却に伴う税金は税理士、登記は司法書士・弁護士が担当分野です。