この記事でわかること
- 価格・税金・登記・対立・境界という目的別に、相談先をどう振り分けるか
- 不動産会社へ先に相談していいケースと、先に別の専門家を通すべき5つのケース
- 相談前に集めておく4種類の書類と、取得方法・手数料(登記事項証明書は窓口請求で600円)
- 無料相談で確認すべき質問と、その場で契約を求められたときの対応
- 宅地建物取引業者かどうかを免許番号で確かめる手順
不動産売却の相談先は、価格と売り方は不動産会社、税金は税理士、登記は司法書士、相続人との対立は弁護士、境界は土地家屋調査士と、目的別に振り分けます。
「相続した実家を売りたいが、どこに相談すればいいのか分からない」というご相談は少なくありません。不動産会社に行けば売却の話になり、税理士に行けば税額の話になり、司法書士に行けば登記の話になる。どの説明も間違っていないのに全体像が見えず、何から手をつけるべきか決められないまま時間が過ぎてしまう、という状態で足が止まる方が多くいらっしゃいます。相談先が複数あること自体が問題なのではなく、自分の悩みがどの窓口の担当範囲なのかを先に切り分けていないことが原因です。
不動産売却の相談先は? 目的別の振り分け早見表
売却に関わる専門家は資格ごとに扱える業務の範囲が法律で決まっています。まず、自分の疑問がどこに属するかを見てください。
| 相談したいこと | 相談先 | 具体的に頼めること |
|---|---|---|
| いくらで売れるか、どう売るか | 不動産会社(宅地建物取引業者) | 査定、売り出し方の設計、買主探し、契約・引渡しの実務 |
| 税金がいくらかかるか、特例が使えるか | 税理士 | 譲渡所得の計算、特例適用の判断、確定申告の代理 |
| 名義が本人でない、相続登記が済んでいない | 司法書士 | 相続登記・名義変更の申請代理、必要書類の収集 |
| 相続人や共有者と話がまとまらない | 弁護士 | 代理交渉、遺産分割調停・訴訟の代理 |
| 境界がはっきりしない、面積が不明 | 土地家屋調査士 | 境界の調査・立会い、測量、地積更正登記の申請 |
重要なのは、この順番が固定ではないことです。価格を知らなければ売るかどうかも決められないため、多くの場合は不動産会社への相談が入口になります。一方で、入口を間違えると手戻りが発生するケースもあります。
不動産会社に先に相談していいケースと、先に専門家を通すべきケース
先に不動産会社へ相談してよいケース
- 名義が自分(または共有者全員が売却に合意済み)で、相続も発生していない
- 住宅ローンの残債が、相場観から見て売却価格を下回っていそうである
- 建物が建築基準法上の道路に接しており、再建築に支障がない
- まだ売るかどうか決めていない。価格を知ってから考えたい
この条件なら、査定を複数社から取って比較するところから始めて問題ありません。査定は無料で行う会社が一般的です。
先に別の専門家を通すべき5つのケース
- 相続登記が未了 — 亡くなった方の名義のままでは売買契約の決済ができません。令和6年4月1日から相続登記の申請は義務化され、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内の申請が必要です。正当な理由なく違反すると10万円以下の過料が科される可能性があります。令和6年4月1日より前に相続を知った不動産は、令和9年3月31日までが期限です(2026年10月現在)。まず司法書士へ。
- 共有名義 — 共有者全員の同意がないと売却できません。意見が割れている、連絡が取れない共有者がいる場合は弁護士が先です。
- 借地(土地が他人の所有) — 借地権の譲渡には地主の承諾が必要で、条件交渉が売却の前提になります。
- 再建築不可の可能性がある土地 — 接道の状況によって買主の資金調達が難しくなり、売り方そのものが変わります。
- ローン残債が売値を上回る見込み(オーバーローン) — 不足分をどう埋めるかの算段がつかないと契約できません。金融機関との事前協議が必要です。
このうち2〜5は、不動産会社に相談しても構いませんが、「売れる前提」で話が進む前に条件を確定させる必要があります。
売却の相談前に集めておく書類は?
手ぶらで行っても相談はできますが、精度の高い回答は返ってきません。次の4点が揃うと、査定・税額・登記のいずれの相談でも話が具体化します。
| 書類 | 入手先 | 何がわかるか |
|---|---|---|
| 登記事項証明書(土地・建物) | 法務局 | 名義人、面積、抵当権の有無、持分 |
| 固定資産税の納税通知書・課税明細書 | 毎年送付される書面 | 固定資産税評価額、地番・家屋番号 |
| 間取図・地積測量図・建物図面 | 購入時の資料、法務局 | 面積の根拠、境界の記録の有無 |
| ローン残高証明書・返済予定表 | 借入金融機関 | 残債額、完済に必要な金額 |
登記事項証明書の交付手数料は、登記所の窓口で請求する場合600円です。オンライン請求なら郵送受取で520円、登記所や法務局証明サービスセンターでの受取で490円と安くなります。オンラインの受付時間は平日の午前8時30分から午後9時までです(2026年10月現在)。
無料相談で確認すべき質問と、契約を求められたときの対応
無料相談は「相手を見極める場」でもあります。査定額の数字だけを比べるのではなく、次の質問をしてください。
- その査定額はどの取引事例をもとに算出したのか(事例の所在・時期・面積)
- その価格で何か月での成約を想定しているのか
- 売り出しから引渡しまでの想定スケジュールと、各段階で発生する費用
- 想定している買主層(実需か投資か、現金かローンか)
- この物件で売却の障害になりそうな点は何か
最後の質問に「特にありません」としか答えない相手は、まだ物件を調べていないと考えて差し支えありません。
Q: 無料相談の場で媒介契約書を出され、「今日決めていただければ」と言われたら?
A: その場では署名しません。 媒介契約は売却活動を1社に委ねる契約で、専任媒介契約・専属専任媒介契約の有効期間は3か月を超えることができないと定められています(宅地建物取引業法第34条の2第3項)。裏を返せば、一度締結すると原則その期間は他社へ切り替えにくくなります。「持ち帰って比較してから決めます」と伝えれば足りる話で、そこで態度が変わる相手なら判断材料がひとつ増えたということです。
一括査定サイト経由で連絡が集中するのを避ける方法
一括査定は1回の入力で複数社に情報が同時配信される仕組みのため、送信直後から各社の電話とメールが重なり、冷静に比較できない状態になりがちです。回避するには、
- 申込時に連絡希望手段をメールに限定し、希望時間帯も入力欄に明記する
- 依頼先の社数を絞れるサイトを選び、上限まで選択しない
- そもそも一括査定を使わず、自分で2〜3社を選んで個別に依頼する
という方法があります。比較に必要な社数は3社程度で、数を増やすほど判断は鈍ります。
ROCKEDGE住まい相談室でも、売るかどうかを決める前の段階のご相談をお問い合わせフォームから承っています。「どの専門家に何を聞けばよいのか」の整理だけでも構いません。
宅地建物取引業者かどうかを免許番号で確かめる手順は?
不動産の売買の媒介を業として行うには、宅地建物取引業の免許が必要です。相談先が免許業者かどうかは、次の手順で自分で確認できます。
- 名刺・広告・ホームページに記載された免許番号を確認する(「国土交通大臣(○)第○○○○号」「東京都知事(○)第○○○○号」の形式。カッコ内の数字は免許の更新回数で、数字が大きいほど営業年数が長いことを示します)
- 国土交通省の「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」で業種として宅地建物取引業者を選び、免許行政庁を指定して商号または免許番号で検索する
- 商号・所在地・免許番号が、提示された内容と一致するかを照合する
免許番号をそもそも表示していない、照合しても出てこない、という場合は、その時点で相談を止めて構いません。
相談記録を残しておく意味
相談のたびに、日付・会社名・担当者名・提示された金額・その根拠・約束された内容をメモに残してください。理由は3つあります。第一に、複数社を比較するとき記憶だけでは必ず混ざります。第二に、後から説明が変わった場合に照合できます。第三に、万一トラブルになったとき、免許行政庁や消費生活センターに相談する際の基礎資料になります。メールでやり取りを残すのも同じ効果があります。
なお、相続人の間で話がまとまらない場合は、家庭裁判所の遺産分割調停という手続もあります。申立てには収入印紙が被相続人1人につき1,200円分と、裁判所ごとに定められた郵便切手が必要です(2026年10月現在)。
税金については、マイホームを売ったときに譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例があり、適用には一定の書類を添えた確定申告が必要です。前年・前々年に同じ特例の適用を受けていないことなどの要件もあるため、使えるかどうかの判断は税理士に確認してください。
ここに挙げた振り分けは一般的な考え方であり、物件の状況・相続関係・借入の内容・税務上の履歴によって最適な順序は変わります。個別の事情により異なるため、詳細は専門家へご相談ください。
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