この記事でわかること
- 2026年6月16日に日本銀行が決めた政策金利の変更内容と、それが住宅ローンに伝わるしくみ
- 金利が上がると買主の「借りられる金額」がどれくらい変わるのか(試算例つき)
- 金利が上がっても、それが直ちに「家が安くなる」とは限らない理由
- 売主が今すぐ確認しておくべき3つの数字(残債・手取り・住み替え先の資金計画)
- 金利上昇局面で売却スケジュールに余裕を持つべき理由と、次の一歩
金利が上がると、買主が借りられる金額が下がりやすくなり、売却の交渉や資金計画に影響します。ただし価格は金利だけで決まらず、売り時は「自分の残債と手取り」から逆算して判断するのが現実的です。
ROCKEDGE住まい相談室には、金利のニュースが出るたびに同じようなご不安が寄せられます。「ローンを残したままのマンションを売って住み替えたいけれど、金利が上がると聞いて動くべきか迷っている」というご相談は少なくありません。こうしたとき、まず残債と売却見込み額の概算を一緒に整理すると、手元に残る金額が数字として見えてきます。金利の話は「相場の予測」ではなく「自分の家計の逆算」に落とし込むほうが、はるかに判断しやすくなります。
2026年6月、日本銀行は政策金利をどう変えた?
日本銀行は2026年6月16日の金融政策決定会合で、金融市場調節方針を変更し、無担保コールレート(オーバーナイト物)を「0.75%程度」から「1.0%程度」で推移するよう促す方針としました(2026年7月現在)。
「無担保コールレート(オーバーナイト物)」とは、銀行どうしが担保なしで1日だけお金を貸し借りするときの金利のことです。むずかしい名前ですが、要するに銀行がお金を調達するときの、いちばん土台になる金利だと考えてください。この土台が上がると、その上に乗っている私たちの住宅ローン金利も、上がる方向に力がかかります。
政策金利が住宅ローンに伝わる2つの道すじ
住宅ローンの金利は、タイプによって影響を受ける場所が違います。一般的には次の関係で説明されます。
| 金利タイプ | 影響を受けやすいもの | ざっくりした特徴 |
|---|---|---|
| 変動金利 | 短期金利(政策金利の動きが伝わりやすい) | 政策金利の変更が比較的早く反映されやすい |
| 固定金利(全期間・当初固定) | 長期金利(10年国債利回りなど) | 将来の物価や金利の見通しを織り込んで先に動くことがある |
ポイントは、固定金利は「これから上がりそう」という市場の予想段階ですでに動いていることがあるという点です。日銀が実際に動く前から固定金利が上がっている、ということも起こります。一方で変動金利は、金融機関ごとの判断や適用時期があるため、政策金利が上がってもすぐ・同じ幅で上がるとは限りません。
なお、住宅金融支援機構の「住宅ローン利用者の実態調査」では、利用した金利タイプの割合が継続的に公表されています。日本では変動金利を選ぶ人の割合が高い状態が続いており、この点も金利のニュースが住宅市場で話題になりやすい理由のひとつです。
金利が上がると家の売り時はどう変わる?
売主にとっていちばん大事なのは、「金利が上がると、買いに来る人の財布がどう変わるか」です。
多くの買主は、月々いくら払えるか(返済額)を基準に予算を決めます。ところが同じ月10万円の返済でも、金利が違えば借りられる総額が変わります。
【試算例】毎月の返済額10万円・返済期間35年・元利均等返済の場合の借入可能額(概算)
| 金利 | 借りられる金額(目安) |
|---|---|
| 年0.5% | 約3,850万円 |
| 年1.0% | 約3,540万円 |
| 年1.5% | 約3,270万円 |
| 年2.0% | 約3,020万円 |
※筆者による概算シミュレーションです。ボーナス返済なし、諸費用・保証料等は含みません。実際の借入可能額は年収・勤務先・他の借入・審査金利などによって変わります。
金利が0.5%から2.0%になると、同じ月10万円の返済でも借りられる額は800万円以上減る計算になります。つまり金利上昇は、買主の予算を下げる方向に働くのです。これが「金利が上がると不動産は売りにくくなる」と言われる理由です。
Q: では、金利が上がったら早く売ったほうがよいのでしょうか? A: 一概にはいえません。売り急ぐと価格交渉で不利になりやすく、また住み替え先を買う側に回れば、あなた自身も高い金利で借りることになります。売却と購入はセットで考える必要があります。
金利が上がれば家は必ず安くなる?
いいえ、そうとは限りません。ここは誤解が多いところです。
不動産の価格は、金利のほかにも次のような要素で動きます。
- 立地:駅からの距離、周辺の生活利便性、学区、再開発の有無
- 築年数と建物の状態:新耐震基準か、設備の更新状況、管理状態(マンションなら管理組合の運営)
- 供給量:同じエリア・同じ間取りで売り出されている競合物件がどれだけあるか
- 需要:そのエリアに住みたい人がどれだけいるか、賃貸需要・投資需要の強さ
金利が上がっても、売り物が少なく買いたい人が多いエリアでは価格が下がらないこともあります。逆に、金利が変わらなくても供給が増えれば価格は弱含みます。国土交通省は全国の取引価格情報をもとに「不動産価格指数」を毎月公表しており、地域別・種類別の動きを確認できます。全国のニュースの見出しではなく、自分の物件があるエリアの数字を見ることが大切です。
したがって、「金利が上がった=うちも値下がりする」と決めつける必要はありません。同時に、「大丈夫だろう」と根拠なく安心するのも危険です。判断材料は、いま自分の家がいくらで売れそうかという現在地の把握から始まります。
売主が今すぐ確認すべき3つの数字
金利予測に賭けるのではなく、次の3つを具体的な金額にしてください。これができれば、迷いはかなり減ります。
① 住宅ローンの残債(あといくら返す必要があるか)
金融機関から届く「残高証明書」やネットバンキングで確認できます。売却代金で残債を返しきれるか(アンダーローンか、オーバーローンか)が最初の分かれ道です。
② 売却したときの手取り
売却価格がそのまま手元に残るわけではありません。おおまかな計算式は次のとおりです。
手取り = 売却価格 −(仲介手数料+印紙税+抵当権抹消などの登記費用+その他費用)− ローン残債
【試算例】売却価格3,500万円・ローン残債2,000万円の場合
| 項目 | 金額(目安) |
|---|---|
| 売却価格 | 3,500万円 |
| 仲介手数料(上限額・消費税込) | 約122万円 |
| 印紙税(売買契約書/軽減措置適用時) | 1万円 |
| 抵当権抹消の登録免許税+司法書士報酬 | 約2万円 |
| ローン残債の返済 | 2,000万円 |
| 手取り(概算) | 約1,375万円 |
※概算例です。引越費用、残置物の処分費、測量費、ハウスクリーニング費などは含みません。
税金については、自分が住んでいた家(マイホーム)を売った場合、一定の要件を満たすと譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例があります(国税庁 タックスアンサー No.3302)。そのため、実際には税金がかからないケースも少なくありません。控除しきれない場合、譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えていれば長期譲渡所得となり、所得税15%・住民税5%(ほかに復興特別所得税として基準所得税額の2.1%)が課されます(同 No.3208、2026年7月現在)。適用要件は細かいため、必ず最新の情報と個別の状況を確認してください。
③ 買い替えなら「売る」と「買う」の順番
住み替えでは、順番によってリスクが変わります。
- 売り先行:先に売って手取りを確定させてから購入する。資金計画が固まりやすい一方、仮住まいが必要になることがあります
- 買い先行:先に住む家を決めてから売る。引越しは楽ですが、売却価格が想定より低いと資金が不足するおそれがあります
金利が上がる局面では、購入側の借入条件も同時に変わります。売却の手取りと、新居の住宅ローン返済額を同じ紙の上で並べて確認しましょう。
この3つの数字は、査定を受けて「今いくらで売れそうか」がわかって初めて具体的になります。ROCKEDGE住まい相談室では無料査定から売却のご相談、必要に応じた税理士・司法書士との連携まで、中立的な立場でワンストップにお手伝いしています。売る・売らないを決める前の「現状把握だけ知りたい」というご相談も歓迎です。
金利上昇局面ではスケジュールに余裕を
買主が住宅ローンを組みにくくなる局面では、売却の進み方にも影響が出ます。
住宅の売買では、買主が金融機関の融資審査に通らなかった場合に契約を白紙に戻せる「ローン特約(融資利用の特約)」が付くのが一般的です。金利が上がると審査が慎重になったり、買主が借入額を見直したりすることがあり、内覧から契約、そして融資承認が下りるまでの期間が読みにくくなります。
そのため、次のような備えが有効です。
- 引渡し希望日から逆算し、想定より1〜2か月の余裕を見ておく
- 買い替えの場合、仮住まいの選択肢をあらかじめ調べておく
- 権利証(登記識別情報)、測量図、リフォーム履歴、管理規約などの書類を早めに揃えておく
- 買主から住宅ローンの事前審査(仮審査)の状況を確認できる体制にしておく
書類が揃っている物件は、話がまとまってからの進行が速くなります。これは金利が上がっても下がっても変わらない、売主側でコントロールできる数少ない要素です。
「金利を当てる」のではなく「自分の数字から逆算する」
将来の金利がどう動くかを正確に当てられる人はいません。予測に賭けて売却時期を決めるのは、ギャンブルに近い判断になります。
代わりに、次の順番で考えてみてください。
- 今の査定額を知る(現在地の把握)
- 残債を引いて手取りを出す(現実の金額)
- 住み替え先の条件と返済額を出す(次の生活の設計)
- 1〜3が成り立つなら動く/成り立たないなら条件を変える
この順番なら、金利がどちらに動いても判断の軸はぶれません。金利上昇は「誰の・何に・どう効くか」という因果で理解すれば、必要以上に怖がるものではなくなります。買主の予算に効き、あなたの新居のローンにも効き、スケジュールの読みやすさに効く——それが分かっていれば、対策は立てられます。
なお、住宅ローン控除や各種特例の適用可否、税額の計算、登記手続きは、ご家族の状況や物件の履歴によって結論が変わります。個別の事情により取扱いが異なるため、最終的な判断の前には税理士・司法書士などの専門家、および所轄の税務署にご確認ください。
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