この記事でわかること
- 古家付き土地のまま売る場合と、更地にして売る場合の「費用・税金・買主層」の違い
- 解体して年内に売れないと、翌年の固定資産税が上がってしまう仕組み(住宅用地特例)
- 相続した空き家を売るときの「3000万円特別控除」の要件(耐震改修または取壊し/措置法35条3項)
- 古家を残して売る場合に注意したい「契約不適合責任」と状態開示のコツ
- どちらを選ぶべきか、費用と税金から逆算して判断する考え方
古家付き土地と更地、どちらで売るべき?(結論)
結論から言えば、解体費を上回る売却益や買主層の広がりが見込めなければ「古家付き土地」のまま売る方が有利なケースが多く、まずは更地化の損得を数字で比較することが判断の出発点です(2026年5月現在)。 解体は一度行うと元に戻せず、費用も税金も「先に出ていく」ものだからです。
先月、ご相談者様から実際に受けたケースをご紹介します。地方都市にある築50年の実家を相続された方が、「とにかく古い家だから、更地にしないと売れないと思って」と解体業者の見積もりを取った段階でご相談に来られました。お話を伺うと、その物件は駅から徒歩圏で、リフォーム前提で購入したい個人や、土地として欲しい工務店の両方が見込めるエリアでした。私からは「先に解体すると今年の固定資産税の優遇が外れて来年の税額が上がります。まず古家付きで市場に出して反応を見ましょう」とお伝えし、結果的に解体せずにご売却が決まりました。慌てて壊さなかったことで、数十万円の解体費と翌年の増税の両方を避けられた一例です。
このように、「古い=更地」という思い込みは、かえって損につながることがあります。以下で費用と税金の両面から整理していきます。
古家付き土地のまま売るメリット・デメリットは?
古家付き土地とは、建物が建ったままの状態で「土地」として売り出す形態を指します。
メリット
- 解体費がかからない:木造住宅の解体費は規模や立地で幅がありますが、一般に数十万円〜200万円程度かかることが多く、これを負担せずに済みます。
- 住宅用地特例を維持できる:建物が建っている土地は、固定資産税の「住宅用地特例」により課税標準が軽減されます。総務省の制度上、200㎡以下の部分は評価額の6分の1、200㎡を超える部分は3分の1に軽減されます(2026年5月現在)。売れるまでの保有コストを抑えられます。
- 買主が再生・活用を選べる:リノベーション目的の個人や、古家をそのまま使いたい買主にも訴求できます。
デメリット
- 買主が限られる場合がある:「古い建物の解体や管理が面倒」と感じる買主には敬遠されることがあります。
- 建物の状態によっては価格交渉が入る:傷みが激しい場合、買主から解体費相当の値引きを求められることがあります。
- 契約不適合責任のリスク:建物に隠れた不具合があると、引渡し後に責任を問われる可能性があります(後述)。
更地にして売るメリット・デメリットは?
更地は建物を解体し、土地のみにした状態です。
メリット
- 買主層が広がる:新築を建てたい個人、ハウスメーカー、建売業者など、土地として検討する層に幅広く訴求できます。
- 境界・地中障害の確認がしやすい:建物がないことで土地の状態が見えやすく、買主の不安が減ります。
デメリット
- 解体費が先に出ていく:売却が決まる前に費用を負担する必要があります。
- 固定資産税が上がる:建物を取り壊すと住宅用地特例が外れ、翌年度から土地の固定資産税・都市計画税が上がります。
「年内に売れないと税金が上がる」とは?
固定資産税は、毎年1月1日時点の状況で課税対象が決まります。前年中に建物を解体して1月1日時点で更地になっていると、その土地は住宅用地特例の対象から外れ、翌年度の税額が上がります。一般に住宅用地特例で6分の1だった小規模住宅用地は、特例が外れると負担調整措置を経て最終的に大きく税額が増えることになります(具体的な増額幅は自治体・評価額により異なります)。
つまり「解体してすぐ売れる見込み」がないまま年をまたぐと、更地のまま割高な税金を払い続けることになります。解体のタイミングは、売却の見通しとセットで考える必要があります。
| 比較項目 | 古家付き土地 | 更地 |
|---|---|---|
| 解体費 | 不要 | 必要(先払い) |
| 固定資産税(売れるまで) | 住宅用地特例で軽減 | 特例外れで増額 |
| 買主層 | 再生希望者・土地希望者 | 土地希望者中心で広い |
| 契約不適合責任 | 建物分の注意が必要 | 土地のみで限定的 |
相続した空き家を売るなら「3000万円特別控除」を確認
相続した空き家を売る場合、一定の要件を満たすと譲渡所得から最大3000万円(相続人が3人以上の場合は1人あたり2000万円)を控除できる特例があります(租税特別措置法35条3項。被相続人の居住用財産=空き家を売ったときの特例)。
この特例で重要なのは、「耐震改修をして売る」か「建物を取り壊して売る」かのいずれかが要件になる点です(2026年5月現在)。つまり、古い建物を耐震基準を満たさないまま残して売ると、この控除が使えないことがあります。主な要件の概要は次のとおりです。
- 昭和56年(1981年)5月31日以前に建築された家屋であること
- 相続開始の直前に被相続人が一人で居住していたこと等
- 売却代金が1億円以下であること
- 相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること
- 耐震改修により耐震基準に適合させるか、家屋を取り壊して売ること
「古家付きで売るか更地で売るか」を、この控除の要件と照らし合わせて決めると、税負担を大きく左右します。相続空き家の場合は、取壊しが控除の条件になり得るため、解体が一概に「損」とは言えないのです。要件は細かく、適用可否は個別事情で変わるため、譲渡所得の申告前に確認しておくことをおすすめします。
古家を残すなら「契約不適合責任」をどう開示する?
古家付きで売る場合に避けて通れないのが、契約不適合責任です。これは、引き渡した目的物が契約の内容に適合しない(=聞いていた状態と違う)とき、売主が買主に対して負う責任で、民法562条以下に定められています。買主は修補・代金減額・損害賠償・契約解除などを求められる可能性があります。
築年数の経った古家は、雨漏り・シロアリ・給排水の不具合などを抱えていることがあります。これらを「知っていたのに伝えなかった」となるとトラブルの火種になります。
Q: 古家の不具合は、隠した方が高く売れるのでは? A: 逆効果です。 不具合を開示しないまま引き渡すと、後から契約不適合責任を問われ、減額や解除に発展しかねません。むしろ状態を正直に開示し、「現況有姿(現状のまま引き渡す)」での売買であることを契約書に明記しておく方が、結果的に売主を守ります。
実務では、(1)わかっている不具合を「物件状況報告書(告知書)」に具体的に記載する、(2)契約書で契約不適合責任の範囲や期間を明確にする、(3)必要に応じてホームインスペクション(建物状況調査)を活用する、といった対応で、双方が納得して取引を進められます。
古家付きか更地かで悩んだら、解体費・税金・控除要件・契約条件を一枚の表にして比較するのが近道です。ROCKEDGEでは、お手元の固定資産税通知書や物件の状況を拝見しながら、「どちらで売るといくら手元に残るか」を一緒に試算する無料相談を承っています。判断材料がそろわず不安な段階でも、お気軽にご利用ください。
なお、解体費の相場・固定資産税の増額幅・3000万円特別控除の適用可否は、物件の立地や築年、相続の経緯など個別の事情により大きく異なります。本記事は一般的な考え方の整理であり、実際のご売却にあたっては税理士・司法書士などの専門家にご相談のうえ判断されることをおすすめします。
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