この記事でわかること
- 取得費がわからない家を売るときの「概算取得費5%ルール」(国税庁 No.3258)の仕組み
- 譲渡所得の基本式(譲渡価額−取得費−譲渡費用−特別控除)と、5%だと税負担が重くなりやすい理由
- 取得費を裏付けられる資料(売買契約書・通帳・住宅ローン償還表・登記費用の領収書など)の具体例
- 概算取得費(5%)と実額のどちらが有利かを比較して選ぶ判断の流れ
- 相続した古い家など、契約書が見つからないケースで取りうる現実的な対処
取得費がわからない家の売却で、結局どちらが有利になる?
結論から言うと、取得費がわからない家でも譲渡価額の5%を「概算取得費」にでき、実額の取得費が証明できればどちらか有利な方を選べます(国税庁 No.3258)。多くの場合、実額を裏付ける資料を探した方が税負担は軽くなります。
たとえば、30年前に建てた家を相続し3,000万円で売却が決まった場合、取得費不明として5%(150万円)で申告すると課税対象が一気に膨らみます。しかし通帳の古い記録や住宅金融公庫(当時)の償還表が残っていれば、取得費の一部を裏付けられることがあります。資料が「ある/ない」で結果が大きく変わる——これがこのテーマの核心です。
取得費の問題は「諦めて5%で出す」前に、できることがまだ残っているケースが少なくありません。
そもそも譲渡所得はどう計算する?
家や土地を売って利益(譲渡所得)が出ると、その利益に対して所得税・住民税がかかります。計算の基本式は次の通りです。
譲渡所得 = 譲渡価額 −(取得費 + 譲渡費用)− 特別控除
それぞれの意味を簡単に整理します。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 譲渡価額 | 家・土地を売った金額 |
| 取得費 | その家・土地を買ったとき(建てたとき)にかかった費用。購入代金・建築代金・購入手数料・設備費や改良費なども含む(国税庁 No.3252) |
| 譲渡費用 | 売るためにかかった費用(仲介手数料・印紙代など) |
| 特別控除 | マイホーム特例など、一定の要件で差し引ける金額 |
ポイントは、取得費が大きいほど譲渡所得(=課税対象)は小さくなるという関係です。だからこそ、取得費をいくらと見るかが税額を左右します(2026年5月現在の制度)。
なお、譲渡所得の計算(分離課税)の詳細は国税庁 No.3202で確認できます。
取得費がわからないとき使える「概算取得費5%ルール」とは?
Q: 買ったときの金額がまったくわからない場合、どうすればいい?
A: 譲渡価額(売った金額)の5%相当額を取得費とみなして計算できます。 これを「概算取得費」といい、国税庁のタックスアンサー No.3258「取得費が分からないとき」に定められています。
例えば3,000万円で売った場合、5%の150万円を取得費として扱えます。取得費が本当に不明なときだけでなく、実際の取得費が譲渡価額の5%より少ないときにも、この概算取得費を使えます(国税庁 No.3258)。
ただし注意したいのは、5%という数字の小ささです。次の比較を見てください。
| 項目 | 5%(概算取得費) | 実額が判明した場合の例 |
|---|---|---|
| 譲渡価額 | 3,000万円 | 3,000万円 |
| 取得費 | 150万円 | 2,000万円 |
| 差額(課税の元になる利益のイメージ) | 約2,850万円 | 約1,000万円 |
※譲渡費用・特別控除は考慮しない単純比較。実際の税額は適用できる特例等で変わります。
このように、5%で計算すると課税対象が大きくなりやすいのが最大のデメリットです。取得費が証明できれば、その分だけ利益が圧縮され、税負担が軽くなる可能性があります。
実額の取得費を裏付ける資料は何を探せばいい?
「契約書がない=5%しかない」と即断するのは早いです。取得費は、複数の資料を組み合わせて裏付けられる場合があります。契約書本体が見つからなくても、別の資料で一部を補えるケースがあります。
探してみる価値がある資料の例は次の通りです。
- 売買契約書・重要事項説明書:取得費を示す最も直接的な資料
- 預金通帳・振込控え:購入代金やローン返済の支払い記録
- 住宅ローンの償還表(返済予定表)・金銭消費貸借契約書:借入額から購入価格を推定する手がかり
- 登記費用・登録免許税・不動産取得税の領収書:購入時の付随費用の裏付け(取得費に含められるものがある/国税庁 No.3252)
- 建築請負契約書・工事代金の領収書:注文住宅の建築代金
- 購入時のパンフレット・価格表、仲介手数料の領収書
これらは、ご自宅の書類棚だけでなく、**親御さんの遺品の中、取引した金融機関、当時の仲介会社、法務局(登記簿の記録)**などに残っていることがあります。一つひとつは断片でも、組み合わせると取得費の根拠として説明できるケースがあります。
相続した古い家で資料がどうしても見つからない場合の進め方や、見つかった断片資料をどう取得費として整理するかは判断が難しいところです。ROCKEDGEの無料相談では、お手元の資料を一緒に確認しながら、どこまで実額で組み立てられそうかを整理するお手伝いをしています。
概算取得費と実額、どちらを選べばいい?
Q: 5%と実額、両方とも申告に使える?
A: 同じ譲渡について両方を二重に使うことはできませんが、どちらか有利な方を選んで申告できます。 実額の取得費が5%相当額を上回るなら実額を、資料がそろわず実額が5%を下回る(または不明な)なら概算取得費を使う、という選び方になります。
判断の流れはシンプルです。
- まず資料を探し、実額の取得費がいくらと言えそうかを見積もる
- 譲渡価額の5%(概算取得費)と比較する
- 実額 > 5% なら実額、実額が証明できない/5%以下なら概算取得費を選ぶ
ここで大切なのは、実額を選ぶならその根拠資料を保管しておくことです。税務署から確認を求められたときに説明できる状態にしておくと安心です(2026年5月現在)。逆に、断片資料しかなく根拠が弱い場合は、無理に実額にこだわらず概算取得費を選ぶ判断もあり得ます。
なお、適用できる特別控除や特例(マイホームを売ったときの特例など)の有無によっても最終的な有利・不利は変わります。取得費の選択は、特例も含めた全体像で考えるのが現実的です。
古い家・相続した家でつまずきやすいポイント
最後に、現場で多いつまずきを整理します。
- 「契約書がないから5%しかない」と思い込む:通帳やローン償還表など、間接的な資料で取得費を組み立てられる場合があります
- 譲渡費用を入れ忘れる:売却時の仲介手数料・印紙代なども差し引けます(譲渡価額からマイナスできる)
- 特例を確認しないまま申告する:マイホーム特例など、要件に合えば負担が大きく変わることがあります
- 資料を捨ててしまう:実額を選ぶなら根拠資料の保管が前提です
取得費の取り扱いや有利選択は、個別の事情(取得の経緯・相続の有無・適用できる特例)によって結論が異なります。詳細はご自身のケースに沿って、税理士などの専門家にご相談ください。 その前段として、どの資料がどこにありそうか・何を準備すればよいかを整理したい段階であれば、ROCKEDGEの無料相談をご活用いただけます。
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