この記事でわかること
- 不動産を売って「損(譲渡損失)」が出たとき、税金が戻る・軽くなる可能性がある仕組み
- 給与など他の所得と損を相殺できる「損益通算」と、最長3年使える「繰越控除」の違い
- 「居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」(措置法41条の5・41条の5の2)の2つの型と要件
- 確定申告をしないと一切適用されないという、見落としがちな注意点
- 損した売却でも、まずは「いまいくらで売れるか」を知ることが次の一歩になる理由
不動産売却で損(譲渡損失)が出ても、一定の要件を満たし確定申告をすれば、給与などの所得と相殺し最長3年にわたり税金が軽くなる場合があります(2026年5月現在)。
先月、ご相談者様から実際にこんなお話を受けました。「15年前に4,200万円で買ったマンションを、転勤先で家を買うために2,900万円で売ることになった。1,300万円も損したのに、税金の話まで考える気力がない」と肩を落とされていました。けれども調べてみると、住宅ローンの残りや買い替えの状況がこの特例の要件に当てはまりそうで、「損は損だが、その損で翌年以降の所得税・住民税が戻る可能性がある」とお伝えすると、表情が少し明るくなりました。損をしたときこそ、知っているかどうかで手元に残るお金が変わってきます。
そもそも「譲渡損失」とは?税金が戻る仕組み
譲渡損失とは、不動産を売った金額が、買ったときの金額(取得費)と売るためにかかった費用(譲渡費用)の合計を下回り、マイナスになった状態のことです。かんたんに言えば「買ったときより安く売れて損が出た」状態です。
通常、不動産を売って利益(譲渡所得)が出ると税金がかかります。逆に損が出た場合、その損は原則として他の所得(給与など)とは合算できません。これを「分離課税」といい、不動産の損は不動産の利益とだけ相殺するのが基本ルールです。
ところが、自分が住んでいたマイホームを売って損が出た一定のケースに限り、特例として「給与など他の所得と損を相殺してよい」と認められています。これが次に説明する特例です。給与から天引きされていた所得税が、確定申告によって戻ってくる(還付される)可能性が生まれるのです。
損益通算と繰越控除はどう違う?
この特例の効果は、大きく2段階に分かれます。言葉が似ていて混乱しやすいので、表で整理します。
| 用語 | 意味 | 効果のイメージ |
|---|---|---|
| 損益通算 | 売却した年に、譲渡損失を給与などの所得から差し引くこと | その年の課税対象が下がり、納めすぎた税が戻る |
| 繰越控除 | 損益通算で引ききれなかった損を、翌年以降に持ち越すこと | 売却の翌年から最長3年間、所得を圧縮できる |
たとえば譲渡損失が1,200万円、年間の給与所得が500万円だとします。売却した年に500万円分を損益通算で相殺し、引ききれない700万円を翌年に繰り越します。翌年さらに500万円を相殺し、残り200万円をその次の年に使う——というように、合わせて最大4年間(売却年+繰越3年)にわたって所得を小さくできるイメージです。
ただし、繰越控除を使う各年について、合計所得金額が3,000万円を超える年はその年の繰越控除が使えないなどの条件があります(2026年5月現在)。
マイホームの譲渡損失の特例には2つの型がある
「居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」には、状況に応じた2つの型があります。どちらか一方を選んで使います。
(1) 買い替え型(措置法41条の5)
旧居を売って損が出て、かつ新たにマイホームを買い替える場合の特例です。主な要件の例は次のとおりです。
- 自分が住んでいた家屋・敷地で、売った年の1月1日時点で所有期間が5年を超えていること
- 売った年の前年から翌年までの一定期間に、床面積50㎡以上の住宅を取得すること
- 買い替えた新居について、取得の翌年末までに返済期間10年以上の住宅ローンがあること
(2) 住宅ローンが残る型(措置法41条の5の2)
買い替えをしなくても、売った家の住宅ローンが売却価格を上回って残ってしまう場合に使える特例です。「オーバーローン」の状態を救う趣旨です。主な要件の例は次のとおりです。
- 売った年の1月1日時点で所有期間が5年を超えるマイホームであること
- 売買契約日の前日時点で、返済期間10年以上の住宅ローン残高があること
- 「住宅ローン残高 − 売却価格」の金額を上限に損失を通算・繰越できること
どちらの型も、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)と併用できる場合がありますが、年分や要件によって扱いが変わります。要件は毎年の税制改正で見直されることがあるため、適用年の国税庁の最新情報で確認することが大切です(2026年5月現在)。
適用されない代表的なケースに注意
この特例は「自分が住んでいたマイホーム」が前提です。次のような不動産は対象外になりやすいので注意してください。
- 別荘やセカンドハウスなど、生活の本拠でない家屋
- 投資用に貸していたワンルームや一棟アパート
- 親族など特別な関係にある人へ売却した場合
- 売った年の前年・前々年に他のマイホーム特例を受けている場合
Q: 相続した実家を売って損が出ました。この特例は使えますか? A: 自分がそこに住んでいなければ、原則この居住用の特例は使えません。ただし相続空き家の3,000万円特別控除など別の制度が関係する場合があるため、個別の事情を整理して判断する必要があります。
適用には確定申告が必須——黙っていては戻らない
最も大切な注意点です。これらの特例は、要件を満たしていても自動では適用されません。必ず確定申告で「この特例を使います」と申告する必要があります。
- 売却した年の翌年2月16日〜3月15日が原則の申告期間(還付申告は年明けから可能)
- 売買契約書・登記事項証明書・住宅ローンの残高証明書などを添付
- 繰越控除を使う年は、たとえ控除しか使わない年でも、連続して確定申告を続けることが条件
「損したのに申告なんて」と感じる方も多いのですが、申告をしないと戻るはずの税金が一切戻りません。ここが見落とされやすい落とし穴です。
ここで一つお伝えしたいのは、特例が使えるかどうかは「いくらで売れるか」が出発点だということです。売却価格が決まらないと、譲渡損失の金額も、オーバーローンに当たるかも判断できません。ROCKEDGEでは、まず無料査定で「いまいくらで売れるか」という現状把握をお手伝いし、必要に応じて税理士・司法書士とも連携しながら、売却から申告の準備まで中立的な立場で一緒に整理していくことができます。売り急がせることはありませんので、現状を知る一歩としてご活用ください。
譲渡損失や特例の適否は、所有期間・住宅ローン・買い替えの有無など個別の事情によって結論が大きく変わります。最終的な税額の判断は、必ず税理士や所轄の税務署など専門家にご相談ください。
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