この記事でわかること
- 借地権を売るには原則として地主(借地権設定者)の承諾が必要で、承諾料の相場観も含めて整理できます
- 地主が承諾してくれないときに使える「借地非訟(しゃくちひしょう)」という裁判所の手続きがわかります
- 底地(地主側の権利)と借地権(借地人側の権利)を同時に売る・等価交換すると価値が上がりやすい理由がわかります
- 路線価図に書かれた「借地権割合」で、底地と借地権のおおよその価値配分を自分で把握できるようになります
- 借地借家法による借地人保護(更新・存続期間)の基礎を押さえ、慌てて安売りしないための判断材料が得られます
結論を先に言うと——借地権・底地の売却は「地主の承諾」と「借地権割合による価値配分」の2点が要です。承諾が得られなくても借地非訟で道は開け、底地と同時売却すれば双方が得をしやすくなります。
私(ミヤオ ヒロキ・不動産コンサルタント業界24年)が先月実際にお受けしたご相談です。親から相続した木造アパートの敷地が「借地」で、地主さんに売却の相談をしたところ「うちは買わない、でも第三者に売るのも認めない」と言われ、八方ふさがりになってしまった——というケースでした。ご相談者様は「もう価値はゼロかもしれない」と肩を落としていらっしゃいましたが、後述する借地非訟と同時売却の選択肢をご説明すると、表情が変わっていきました。借地権は、扱い方を知っていれば十分に換金できる資産です。
そもそも借地権・底地とは?売れるのか
「借地権」とは、建物を所有する目的で他人の土地を借りる権利のことです。法律上は、地代を払って借りる土地賃借権と、より強い物権である地上権の2種類がありますが、実務で多いのは前者です。一方、その土地を貸している地主側に残る所有権を「底地(そこち)」と呼びます。
ひとつの土地を、地面の所有者(地主=底地)と建物を建てて使う人(借地人=借地権)が分け合って持っている状態、とイメージするとわかりやすいでしょう。
Q: 借地権は売れるのですか? A: 売れます。 借地権は財産的価値のある資産で、第三者への譲渡(売却)が可能です。ただし、土地賃借権の場合は譲渡に地主の承諾が必要になる点が、所有権の土地売却と決定的に違うところです(2026年5月現在の借地借家法・民法の枠組み)。
底地のほうも、地主が第三者に売ることができます。地代収入を生む資産として、底地専門に買い取る業者も存在します。
借地権の売却に「地主の承諾」が必要な理由は?
土地賃借権を第三者に譲渡するには、原則として地主(借地権設定者)の承諾が必要です。これは、誰に土地を貸すかは貸主にとって重要な利害である、という考え方に基づくものです。
実務では、承諾の見返りに「譲渡承諾料(名義書換料)」を地主へ支払うのが一般的です。金額は当事者の合意で決まりますが、借地権価格の1割程度を目安として交渉されることが多いというのが、現場での肌感覚です(地域・地主との関係により大きく変動するため、あくまで目安です)。
承諾を得る際は、口頭ではなく書面で「譲渡承諾書」を取り交わしておくことが、後のトラブル防止につながります。
承諾がもらえないときは?「借地非訟」という手続き
地主が正当な理由なく承諾を渋るケースは、決して珍しくありません。このとき借地人を救うのが**借地非訟(しゃくちひしょう)**という裁判所の手続きです。
借地借家法第19条は、借地権者が賃借権を第三者に譲渡しようとする場合に、地主が承諾しないときは、裁判所が「地主の承諾に代わる許可」を与えることができると定めています。裁判所が相当と認めれば、地主の承諾がなくても適法に借地権を譲渡できる、という仕組みです。
ポイントを整理します。
- 申立先は、対象となる土地を管轄する地方裁判所です
- 申立てを代理人に依頼する場合、代理人は弁護士に限られます(裁判所の案内による)
- 申立手数料は、借地権が設定された土地の価格を基礎に算定され、収入印紙で納めます
- 裁判所が許可を出す際、地主へ支払う給付金(承諾料に相当)の額を併せて定めることがあります
冒頭のご相談者様には、まず地主との話し合いを尽くし、それでも動かなければ借地非訟という選択肢がある——とお伝えしました。「拒否されたら終わり」ではないと知るだけで、交渉のテーブルでの立ち位置はずいぶん変わるものです。
底地と借地権を「同時売却」すると価値が上がるのはなぜ?
借地権だけ、あるいは底地だけを単独で売ろうとすると、買い手が限られ、価格も伸び悩みがちです。借地権だけ買っても地代を払い続ける必要があり、底地だけ買っても自分で使えないからです。
ところが、底地と借地権を一体(=完全な所有権)にして同時に売却すれば、話は変わります。土地を自由に使える「普通の更地・一戸建て」として市場に出せるため、買い手の母数が一気に広がり、価格も上がりやすくなります。1+1が2より大きくなる、というイメージです。
具体的な進め方には、主に次のパターンがあります。
| 方法 | 内容 | 向いているケース |
|---|---|---|
| 同時売却 | 地主と借地人が協力し、第三者へ所有権として一括売却。代金を借地権割合等で按分 | 双方に売却意思がある |
| 借地人が底地を買う | 借地人が地主から底地を買い取り、完全所有権にしてから売却 | 借地人に購入資金がある |
| 地主が借地権を買う | 地主が借地人から借地権を買い取り、所有権を回復 | 地主に購入資金・利用予定がある |
| 等価交換 | 底地と借地権を価値に応じて分割・交換し、それぞれが完全所有権の区画を持つ | 土地に分割の余地がある |
いずれも、地主・借地人の双方が「協力したほうが得」と納得できるかが成否を分けます。感情的な対立が長引いている場合ほど、第三者である専門家が間に入る意味が大きくなります。
路線価図の「借地権割合」で価値配分を把握する方法は?
底地と借地権の価値をどう分けるか。その出発点になるのが、国税庁が毎年公表する**路線価図の「借地権割合」**です。
借地権の評価額は、原則として「その土地を自分の所有地として使った場合の価額(自用地価額)× 借地権割合」で求めます(国税庁タックスアンサー No.4611)。この借地権割合は、路線価図・評価倍率表に地域ごとに表示されています。
路線価図では、各路線価の数字の後ろにアルファベット(A〜G)が付いており、これが借地権割合を表します。**A=90%、B=80%、C=70%、D=60%、E=50%、F=40%、G=30%**という対応です(国税庁の路線価図の表示による)。
たとえば借地権割合が70%(記号C)の地域なら、土地全体の価値のうち、おおむね借地権が7割・底地が3割という配分が目安になります。
ただし注意したいのは、これは相続税の評価上の割合であって、実際の売買価格がぴたりとこの比率になるとは限らない点です。底地は単独だと評価割合より安くなりやすい、といった市場の現実があります。あくまで「話し合いの出発点となる客観的なものさし」として使うのが賢い向き合い方です。
借地借家法は借地人を守っている——慌てて安売りしないために
「地主に出ていけと言われたら従うしかない」と思い込んでいる方が、本当に多くいらっしゃいます。実際には、借地借家法は借地人を手厚く保護しています。これを知っているかどうかで、売却交渉での足腰の強さがまるで違ってきます。
存続期間と更新の基礎を押さえておきましょう(借地借家法、平成3年法律第90号)。
- 当初の存続期間は30年(これより長い期間を定めることも可能)
- 更新後の期間は、最初の更新で20年、2回目以降は10年
- 契約期間が満了しても、借地上に建物がある場合、借地人が更新を求めれば、地主に正当の事由がない限り従前と同じ条件で契約は更新される
つまり、地主の都合だけで一方的に借地契約を終わらせることは簡単ではありません。借地権は法的に保護された、しっかりした財産だということです。だからこそ、「早く手放さないと」と焦って相場より安く売ってしまうのは、もっとも避けたい失敗です。
借地権・底地の売却は、地主との関係、承諾料、借地非訟、同時売却の組み立て、税務評価と実勢価格のズレ——と、論点が多層的に絡みます。ROCKEDGEでは、こうした借地・底地の権利調整を数多く見てきた立場から、まず「あなたのケースで一番損が少ない出口はどれか」を一緒に整理するところから始めます。判断に迷ったら、動き出す前の段階でお気軽にご相談ください。
なお、本記事は一般的な制度の解説です。承諾料の水準や借地非訟の見通し、税額は個別の事情により大きく異なるため、具体的な手続きや金額の判断は、弁護士・税理士・不動産の専門家へご相談ください。
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