この記事でわかること
- 「相続人が誰か」を確定しないと、遺産分割も相続登記も一歩も進められない理由
- 亡くなった方の「出生から死亡まで」の戸籍を集める具体的な手順と、つまずきやすいポイント
- 代襲相続(だいしゅうそうぞく)・数次相続(すうじそうぞく)で関係者が増える仕組みと、もめないための備え
- 2017年に始まった「法定相続情報証明制度」で、分厚い戸籍の束を1枚にまとめられること
- 家族でもめないために、早めに中立の専門家を入れることがなぜ大切なのか
相続の第一歩は「誰が相続人かを正確に確定する」ことです。そのためには亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍を集め、思わぬ相続人がいないかを確認します。これを飛ばすと遺産分割も登記も無効になりかねません。
私(ミヤオ ヒロキ・不動産コンサルタント業界24年)が先月ご相談を受けたケースをご紹介します。お父様を亡くされたご兄弟が「相続人は自分たち2人だけ」と思い込んで話を進めていたのですが、戸籍をさかのぼると、お父様には前のご結婚で生まれたお子さんがいたことが判明しました。誰も知らなかったため、ご家族は大変驚かれました。もし戸籍を集めずに遺産分割協議を済ませていたら、その協議そのものが無効になり、一からやり直しです。「最初に戸籍を集める」という地味な作業が、後のトラブルを防ぐ最大の保険なのだと、改めて実感した出来事でした。
なぜ「相続人の確定」が最初の一歩なのか?
相続が始まると、つい「誰が何をもらうか」の話を先に進めたくなります。しかし順番が逆です。まず**「相続人が誰なのか」を確定**しないと、その先の手続きはすべて止まってしまいます。
理由はシンプルです。
- 遺産分割協議(誰が何を相続するか話し合うこと)は、相続人全員が参加して合意しなければ成立しません。一人でも欠けていると、その協議は無効です。
- 相続登記(不動産の名義変更)も、相続人全員を証明する戸籍をそろえないと申請できません。
つまり「思わぬ相続人」が後から現れると、終わったはずの話し合いが振り出しに戻ります。だからこそ、最初に時間をかけてでも相続人を正確に確定させることが、遠回りに見えて一番の近道なのです。
出生から死亡までの戸籍を集める手順は?
相続人を確定する作業の中心が「戸籍集め」です。ポイントは、亡くなった方(被相続人)の出生から死亡まで、切れ目なくつながった戸籍を集めることです。
戸籍にはいくつか種類があります。やさしく言い換えると次のとおりです。
| 戸籍の種類 | どんなもの? |
|---|---|
| 戸籍謄本(現在戸籍) | 今、有効な最新の戸籍 |
| 除籍謄本(じょせき) | 結婚・死亡などで全員が抜けて閉じられた戸籍 |
| 改製原戸籍(かいせいげんこせき) | 法律改正で作り替える前の、古い様式の戸籍 |
なぜ古いものまで必要かというと、結婚・転籍・法改正のたびに戸籍は作り直され、新しい戸籍には前の情報が省略されることがあるからです。一番新しい戸籍だけ見ても、過去の子どもの存在は分かりません。
集め方の手順:
- まず死亡時の本籍地の市区町村役場で、最新の戸籍を取る
- その戸籍に「どこから移ってきたか(従前の本籍)」が書かれているので、さかのぼって前の戸籍を請求する
- これを出生時の戸籍にたどり着くまで繰り返す
- 本籍地が引っ越しのたびに変わっていれば、その都度、別の役場に請求する
役場の窓口で「相続手続きで、出生から死亡までの連続した戸籍が必要です」と伝えると、その役場にある分はまとめて出してくれます。郵送請求も可能です(定額小為替などで手数料を払います)。なお2024年以降は「広域交付」により、最寄りの役場で本籍地以外の戸籍もまとめて取得できる仕組みが広がっています(利用条件は2026年5月現在、お住まいの自治体でご確認ください)。
代襲相続・数次相続とは?関係者が増える仕組み
戸籍をたどると、「相続人になるはずの人がすでに亡くなっている」ケースに出会うことがあります。ここで関係するのが代襲相続と数次相続です。混同しやすいので、図のイメージで整理します。
代襲相続(下の世代が引き継ぐ)
代襲相続とは、本来の相続人(子や兄弟姉妹)が被相続人より先に亡くなっている場合に、その子ども(孫など)が代わりに相続人になることです(民法887条2項など)。
- 子が先に死亡 → その子(被相続人の孫)が代襲。孫も亡くなっていれば、ひ孫へと再び代襲します
- 兄弟姉妹が先に死亡 → その子(被相続人の甥・姪)が代襲。ただし兄弟姉妹の代襲は一代限りで、甥・姪の子へは引き継がれません
数次相続(相続が連鎖して重なる)
数次相続とは、ある人の相続の遺産分割が終わらないうちに、相続人の一人がさらに亡くなることです。たとえば祖父の相続を話し合っている途中で父が亡くなると、父の相続人(母や子)まで話し合いに加わることになります。
代襲相続と数次相続の違いは「亡くなったタイミング」です。
- 代襲相続 … 被相続人より先に亡くなっていた
- 数次相続 … 被相続人より後に、遺産分割前に亡くなった
いずれも話し合いに参加すべき人が一気に増え、関係が遠い親族同士で合意を取らなければならなくなります。年月が経つほど関係者は増え、連絡先も分からなくなりがちです。「相続が起きたら、できるだけ早く手続きを始める」ことが、複雑化を防ぐ最大のコツです。
集めた戸籍を1枚にまとめる「法定相続情報証明制度」とは?
戸籍を集め切ると、分厚い束になります。これを銀行・法務局・税務署などに何度も提出するのは大きな負担でした。
そこで2017年(平成29年)5月29日から始まったのが「法定相続情報証明制度」です。集めた戸籍一式と相続関係を一覧にした図(法定相続情報一覧図)を法務局(登記所)に提出すると、登記官が内容を確認し、「誰が相続人か」を公的に証明する一覧図の写しを無料で交付してくれます。
メリットは次のとおりです。
- 分厚い戸籍の束の代わりに、一覧図の写し1枚で各種手続きが進められる
- 必要枚数を複数発行でき、銀行・法務局・税務署で同時並行に手続きできる
- 戸籍原本を預けっぱなしにせず手元に残せる
ただし、この制度を使うにも結局は出生から死亡までの戸籍をそろえる必要があります。順番としては「①戸籍を集める→②相続人を確定する→③一覧図を作って法務局へ→④写しを使って各手続き」となります。
もめないための備え ― 不動産は「分けにくい」からこそ早めの相談を
相続人が確定したら、次は遺産分割の話し合いです。ここで火種になりやすいのが不動産です。現金は1円単位できれいに分けられますが、自宅や土地は物理的に分けにくく、すぐ現金化もできないため、「誰が引き継ぐのか」「公平にどう分けるのか」で意見が割れやすいのです。
感情面の配慮も欠かせません。「長男だから当然」「介護をしたのだから多めに」といった思いが、言い出しにくさや不公平感につながります。こうしたときは、家族だけで抱え込まず、中立の立場の専門家を早めに入れることが、結果的にもめない一番の方法です。
解決策の一つが**換価分割(かんかぶんかつ)**です。これは不動産を売却して現金に換え、その現金を相続人で分ける方法で、「公平に分けたい」「誰も住む予定がない」というご家族に向いています。
私たちROCKEDGEでは、不動産の査定から売却、提携する税理士・司法書士との連携までを中立の立場でワンストップでお手伝いしています。「まず全体像を知りたい」という段階でも構いません。売り急ぎをあおることは決していたしませんので、安心してご相談ください。
なお、相続の取り扱いは個別の事情(家族構成・遺言の有無・財産の種類)によって大きく異なります。本記事は一般的な考え方の解説です。具体的な手続きや税務の判断は、必ず司法書士・税理士などの専門家にご相談ください。
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