この記事でわかること
- 相続税の速算表(8段階・10%〜55%)の税率と控除額の全体像
- 税率は「遺産総額」ではなく「課税遺産総額を法定相続分で割った金額」に当てるという仕組み
- 各相続人の負担額を出す4ステップの計算手順(遺産総額→基礎控除→法定相続分で按分→実際の取得割合で割り戻す)
- 「自分の相続分に最高税率55%が掛かる」という誤解がなぜ生まれるのか
- 配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例で、速算表の率と実際の負担率が一致しなくなる理由
相続税の税率は10%から55%までの8段階ですが、この率は遺産総額に直接掛けるものではありません。基礎控除を引いた課税遺産総額を法定相続分で割った金額に対して当てる率です。
ROCKEDGE住まい相談室にも「速算表を見たら税率40%と書いてあり、家を売らないと払えないのではと不安になった」というご相談は少なくありません。実際に伺ってみると、遺産総額をそのまま表に当てはめてしまっていて、基礎控除を引く前の金額で40%の行を読んでいた、というケースが多くあります。計算の順序が1つ違うだけで、想定税額が何倍にもずれてしまうテーマです。
相続税の速算表は何パーセント?8段階の税率と控除額
国税庁が公表している相続税の速算表は、2026年10月現在(タックスアンサーNo.4155・令和8年4月1日現在法令等)、次の8段階です。
| 法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000万円以下 | 10% | - |
| 1,000万円超 3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
| 3,000万円超 5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
| 5,000万円超 1億円以下 | 30% | 700万円 |
| 1億円超 2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
| 2億円超 3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
| 3億円超 6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
| 6億円超 | 55% | 7,200万円 |
「控除額」が併記されているのはなぜ?
相続税は超過累進税率です。本来は「1,000万円までの部分に10%、そこから3,000万円までの部分に15%」と段階ごとに分けて計算し、積み上げる必要があります。
速算表の控除額は、この段階計算を1行の掛け算と引き算で終わらせるための調整額です。たとえば2,600万円なら、段階計算では「1,000万円×10%+1,600万円×15%=340万円」。速算表では「2,600万円×15%-50万円=340万円」で同じ結果になります。控除額は特例や優遇ではなく、計算を省略するための数式上の係数だとご理解ください。
一番左の列の名前を読み飛ばさない
表の左端は「法定相続分に応ずる取得金額」と書かれています。遺産総額でも、実際に受け取った金額でもありません。この列名が、相続税の計算全体で最も読み違えられやすい部分です。
相続税の税率を当てる対象は?遺産総額ではない理由
Q: 遺産総額が1億円なら、速算表の「5,000万円超1億円以下・30%」の行を見ればよいのですか?
A: いいえ。1億円から基礎控除を引き、残った金額をさらに法定相続分で割った金額が、表を引く対象になります。
国税庁タックスアンサーNo.4152が示す相続税の総額の計算では、まず課税価格の合計額から基礎控除額を差し引きます。基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。
遺産総額1億円・相続人が配偶者と子2人(法定相続人3人)の場合、基礎控除は3,000万円+600万円×3人=4,800万円。課税遺産総額は1億円-4,800万円=5,200万円になります。
この5,200万円をさらに法定相続分で分けます。国税庁タックスアンサーNo.4132によれば、配偶者と子が相続人の場合、配偶者1/2、子が全員で1/2です。したがって配偶者2,600万円、子は1人あたり1,300万円。この金額に速算表を当てるため、使う行は30%ではなく15%になります。
各相続人の負担額を出す手順は?4ステップで確認する
ステップ1:遺産総額を把握する
土地・建物・預貯金・有価証券などのプラスの財産から、借入金や未払金などの債務、葬式費用を差し引きます。生命保険金や死亡退職金のみなし相続財産、一定期間内の生前贈与財産の加算も計算に含めます。不動産は時価ではなく相続税評価額で計算するため、売買の相場とは異なる金額になります。
ステップ2:基礎控除を引いて課税遺産総額を出す
「課税価格の合計額-(3,000万円+600万円×法定相続人の数)=課税遺産総額」です。ここがマイナスまたはゼロであれば、相続税はかかりません。
ステップ3:法定相続分で按分し、各人の税額を出して合計する
実際にどう分けたかに関係なく、いったん法定相続分で機械的に割ります。先の例(課税遺産総額5,200万円)なら次のとおりです。
| 相続人 | 法定相続分 | 按分額 | 速算表の適用 | 税額 |
|---|---|---|---|---|
| 配偶者 | 1/2 | 2,600万円 | 15%・控除50万円 | 340万円 |
| 子A | 1/4 | 1,300万円 | 15%・控除50万円 | 145万円 |
| 子B | 1/4 | 1,300万円 | 15%・控除50万円 | 145万円 |
| 合計(相続税の総額) | - | - | - | 630万円 |
遺産総額1億円に対する相続税の総額は630万円、総額に対する割合は6.3%です。「30%」とも「40%」とも一致しません。
ステップ4:実際の取得割合で割り戻す
相続税の総額630万円を、各人が実際に取得した課税価格の割合で按分します。「相続税の総額×各人の課税価格÷課税価格の合計額」です。法定相続分どおりに分けたなら配偶者315万円、子は各157万5,000円。配偶者が多めに取得すれば、その分だけ配偶者側の負担額が増えます。
この按分計算の段階で各種の税額控除を適用して、最終的な納付額が決まります。
よくある誤解はなぜ起こる?「最高税率55%」の読み違い
誤解1:自分の相続分に直接最高税率が掛かる
ステップ3で使うのは「法定相続分に応ずる取得金額」です。相続人が増えれば1人あたりの按分額が小さくなり、当たる行も下がります。同じ遺産総額でも、相続人が3人なら15%の行、1人なら上の行になることがあります。
実際、遺産総額1億円で相続人が子1人だけなら、基礎控除は3,600万円、課税遺産総額は6,400万円。按分する相手がいないため6,400万円に30%・控除700万円を当てて、相続税の総額は1,220万円です。相続人の人数という条件1つで、630万円と1,220万円に分かれます。
誤解2:遺産総額の何割か取られる
超過累進税率は、金額の全体に最高税率を掛ける仕組みではありません。55%の行が使われるのは、法定相続分に応ずる取得金額が6億円を超えた部分までを含めて計算する場合で、しかも控除額7,200万円を引きます。表の右端にある数字だけを見て「半分以上なくなる」と受け取る必要はありません。
不動産が遺産の大半を占めるご家庭では、納税資金をどう用意するかが本当の論点になります。評価額と実際に売れる価格の差、共有名義にした場合の将来の扱いなど、税額の計算とは別の判断が絡みます。ROCKEDGE住まい相談室では、実家や土地を含む相続について無料でご相談を承っていますので、計算した税額を前に迷われている段階でもお気軽にお問い合わせください。
速算表の率と実際の負担率が一致しないのはなぜ?
ステップ4の後に適用する税額控除や評価減の特例によって、最終的な負担額は大きく変わります。代表的なものが次の2つです。
配偶者の税額軽減(国税庁タックスアンサーNo.4158)では、配偶者が実際に取得した正味の遺産額について、1億6,000万円と配偶者の法定相続分相当額のいずれか多い金額までは相続税がかかりません。ただしこれは申告が前提で、相続税の申告期限までに分割されていない財産は対象になりません。期限までに分割が間に合わない場合は、申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付し、期限から3年以内に分割されたときは対象になるとされています。
小規模宅地等の特例(国税庁タックスアンサーNo.4124)では、要件を満たす宅地等の評価額を減額できます。2026年10月現在、特定居住用宅地等は限度面積330㎡まで80%減、特定事業用宅地等および特定同族会社事業用宅地等は400㎡まで80%減、貸付事業用宅地等は200㎡まで50%減です。土地の評価額が下がれば、ステップ1の遺産総額そのものが変わるため、適用できるかどうかで税額が別物になります。
つまり速算表から出る率は、特例を一切使わない状態での中間計算の率です。これを「自分の手取りがこれだけ減る率」として読むと、実態から離れます。
最新年分の速算表を国税庁で確認する手順
税率表は法令改正で変わり得るため、計算の前に一次情報で確認する手順を押さえておくと安心です。
- 国税庁ウェブサイト(nta.go.jp)の「タックスアンサー(よくある税の質問)」を開く
- 「相続税」の分類から「No.4155 相続税の税率」を選ぶ
- ページ冒頭の「〔令和○年○月○日現在法令等〕」という表記を確認し、いつ時点の法令に基づく内容かを把握する
- 同じ分類の「No.4152 相続税の計算」で計算の順序、「No.4132 相続人の範囲と法定相続分」で按分割合を併せて確認する
検索結果に出てくる税率表は作成時点のまま更新されていないこともあります。日付表記のある国税庁のページで突き合わせる習慣をつけてください。
なお、相続税の申告と納税の期限は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内です。計算結果の確認と並行して、期限から逆算した準備が必要になります。
ここまでの計算手順は仕組みを理解するためのものです。財産の評価方法、相続人の確定、適用できる特例の判定は個別の事情により異なるため、具体的な申告額の算定については税理士などの専門家へご相談ください。
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