この記事でわかること
- 「対応が悪い」という感覚を、第三者が検証できる記録に変える書き方
- 依頼した内容が管理委託契約書の業務範囲に入っているかを先に確かめる手順
- 賃貸住宅管理業法が定める業務管理者の選任(第12条)と委託者への定期報告(第20条)という交渉の足場
- 改善項目と期限を明記した書面で要求を出すまでの進め方
- 改善が見られない場合に管理会社の変更を判断するライン(解約予告期間・時期・引き継ぎ資料)
管理会社の対応が悪いときの改善要求は、時系列の記録づくり→管理委託契約書の業務範囲の確認→期限を切った書面での要求、という順で進めるのが実務的です(2026年10月現在)。この順番を飛ばして感情的な抗議から入ると、相手の社内でも「言った・言わない」の話に収束してしまいます。
ROCKEDGE住まい相談室には、「電話しても折り返しが来ない」「入居者から直接クレームが来るようになった」「年に一度の報告書を見た記憶がない」といったご相談が少なくありません。賃貸住宅を所有していて管理を委託しているものの、どこまでを管理会社に求められるのか分からず、強く言えないまま数か月が過ぎている――そうした状況で迷われる方が多くいらっしゃいます。
管理会社の対応が悪いと感じたら、まず何をすべきか?
最初にやることは、交渉ではなく記録です。「対応が悪い」は主観ですが、「3月4日に依頼した漏水対応について、3月18日時点で返答がない」は事実です。改善要求が通るかどうかは、この事実の積み上げの量でほぼ決まります。
記録しておく6項目
| 記録する項目 | 書き方の例 |
|---|---|
| 日付・時刻 | 2026年3月4日 10時20分 |
| 依頼した相手と手段 | 担当者(氏名)/電話・メール・チャットのどれか |
| 依頼した内容 | 101号室の洗面台下の漏水について業者手配を依頼 |
| 管理会社の返答 | 「業者に確認して折り返す」との回答 |
| 約束された期限 | 「本日中に折り返し」と明言 |
| その後の経過 | 3月18日時点で折り返しなし。入居者から再度連絡あり |
ポイントは、連絡手段をできる限りメールやメッセージなど文字が残るものに切り替えることです。口頭でのやり取りが続いている場合は、通話後に「本日の電話で○○をご依頼し、△△までにご回答いただく旨を伺いました」という確認メールを1本入れておくと、それ自体が記録になります。
入居者からの苦情についても、受け取った日付と内容を同じ表に並べます。入居者の不満がいつ発生し、管理会社がいつ知り、どれだけ放置されたのかが一覧になると、後述する書面の説得力が大きく変わります。
その業務は契約で約束されているか?管理委託契約書の確認手順
次に確認するのが、管理委託契約書です。感覚的な不満のうち、契約上の義務違反にあたるものと、もともと委託していない業務とを切り分ける作業です。
見るべき3か所
- 業務範囲表(別表・仕様書) — 入居者募集、賃料の収受・送金、滞納督促、クレーム一次対応、建物の点検・清掃、修繕業者の手配など、どこまでが受託範囲かが列挙されています。「督促は書面のみ」「原状回復の立会いは別途費用」など、範囲外や有償扱いの線が引かれていることもあります。
- 報告に関する条項 — 報告の頻度・方法・記載事項が書かれています。
- 緊急時・修繕時の取扱い — 一定金額までは管理会社の判断で手配可能、それを超える場合は貸主承諾が必要、といった金額の線が定められているのが一般的です。この金額を超えた工事が止まっているなら、承諾待ちで滞っているのかもしれません。
契約締結の前後に受け取っている書面も手元に集めてください。賃貸住宅管理業法では、管理受託契約の締結前に報酬や具体的な管理業務の内容・実施方法について書面で説明すること(第13条)、締結時に確定した契約条件を記載した書面を遅滞なく交付すること(第14条)が管理業者に義務づけられています。この2種類の書面は、業務範囲を確認する一次資料になります。
なお、同法でいう「賃貸住宅の維持保全を行う業務」とは、居室と、玄関・通路・階段等の共用部分、居室内外の電気設備・水道設備、エレベーター等の設備について、点検・清掃等の維持を行い、その結果を踏まえた必要な修繕を一貫して行うことを指すと整理されています。点検だけ、あるいは修繕の手配だけを単発で請け負う形態は、これに当たらない場合があります。
賃貸住宅管理業法は何を義務づけているか?
契約書に加えて、法律上の足場があります。賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(賃貸住宅管理業法)は、サブリースに関する規定が2020年12月15日、賃貸住宅管理業の登録制度に関する規定が2021年6月15日に施行されました。管理戸数200戸以上の管理業者には国土交通大臣の登録が義務づけられ、200戸未満は任意登録とされています。
業務管理者の選任(第12条)
登録を受けた管理業者は、営業所または事務所ごとに1名以上の業務管理者を選任し、その営業所における管理受託契約の内容の明確性や管理業務の適正性について、指導・管理・監督を行わせることとされています。
業務管理者になれるのは、管理業務の実務経験2年以上で登録証明事業による証明を受けた者、または宅地建物取引士で指定講習を修了した者です。つまり、担当者レベルで話が止まっているときに「この営業所の業務管理者の方に、経緯をご確認いただきたい」と伝えることは、法令上の役割に沿った筋の通った求め方になります。
委託者への定期報告(第20条)
同法第20条は、管理業務の実施状況等を定期的に委託者(貸主)へ報告することを義務づけています。報告の対象は次の2点です。
- 管理業務の実施状況(家賃等の金銭の収受状況、維持保全の実施状況など)
- 管理業務の対象となる賃貸住宅の入居者からの苦情の発生状況および対応状況
頻度は少なくとも年1回以上とされ、管理受託契約を締結した日から1年を超えない期間ごとに、および契約期間の満了後遅滞なく、管理業務報告書を作成して交付・説明することが求められます。
注目したいのは、苦情の「発生状況」と「対応状況」が報告事項に含まれている点です。入居者からの苦情を貸主に伝えないまま処理していた状態は、この報告義務の枠組みと整合しません。「過去2期分の管理業務報告書を交付してほしい」という要求は、法令上の義務の履行を求めるものであり、交渉の入口として使えます。
ただし、この定期報告義務は法施行後に締結された管理受託契約に適用され、施行前に締結された契約には適用されないと整理されています。契約の締結日もあわせて確認してください。
改善要求はどう書面にするか?項目と期限の書き方
Q: 口頭で何度も催促しているのに動きません。次の一手は?
A: 改善してほしい項目と、それぞれの回答期限を明記した書面(またはPDF添付のメール)に切り替えてください。 口頭の催促は、相手の社内で記録として残らないため、担当者個人の記憶の中だけで消えていきます。書面は社内で上席や業務管理者に回覧される可能性が高く、「個人の不満」から「会社として処理すべき案件」へ性質が変わります。
書面に入れる要素は次の5つです。
- 事実の時系列 — 先に作った記録表をそのまま添付します。評価の言葉は入れず、日付と事実のみ
- 根拠 — 管理委託契約書の該当条項(第○条・別表○)と、該当する場合は賃貸住宅管理業法上の報告義務
- 改善してほしい項目 — 「対応を改善してほしい」ではなく「101号室の漏水について業者の現地調査日を確定し、日程を通知すること」のように、完了が判定できる粒度に分解する
- 期限 — 項目ごとに日付を入れる。一次回答の期限と、対応完了の期限を分けると現実的です
- 担当の明示要求 — 本件の社内担当者と、当該営業所の業務管理者の氏名・連絡方法(メールアドレス)の提示を求める
なぜ期限を切る必要があるのか — 放置は貸主に跳ね返る
入居者からの苦情が放置されたまま時間が経つと、負担は管理会社ではなく貸主側に戻ってきます。民法第606条第1項は「賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う」と定めており(賃借人の責めに帰すべき事由による場合を除く)、修繕義務の主体はあくまで貸主です。管理会社はその履行を代行しているにすぎません。
さらに2020年4月1日施行の改正民法では、第611条第1項について、賃借物の一部が滅失その他の事由により使用および収益をすることができなくなり、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は請求がなくても当然に減額されるという書き方に改められました。設備の不具合が長期間放置されれば、賃料収入の側に影響が及ぶ構造になっています。
加えて、対応の遅さが積み重なった物件では、更新時の退去や、入居者レビューを通じた募集力の低下といった形でも効いてきます。期限を切るのは相手を追い込むためではなく、損失が確定する前に処理を終わらせるためです。
改善されない場合の判断ラインと、管理会社変更の進め方
書面を出しても変わらないときは、管理会社の変更を検討する段階に入ります。判断と実行で見るべき点は3つです。
1. 解約予告期間を先に読む
管理委託契約には解約予告期間が定められているのが通常で、予告期間の長さは契約ごとに異なります(3か月とされている例が多く見られますが、6か月や自動更新条項が置かれていることもあります)。予告期間を確認する前に次の管理会社を決めてしまうと、空白期間か二重の管理料が発生します。 まず契約書の解約条項を読み、通知の方法(書面・配達証明など)まで確認してください。
2. 切り替え時期を選ぶ
賃貸の繁忙期にあたる1月から3月に引き継ぎを重ねると、募集中の空室対応・退去立会い・原状回復工事が同時に動いている最中に担当が入れ替わり、引き継ぎ漏れが起きやすくなります。退去や更新が集中する時期を外して切り替え日を設計するほうが、実務上の事故が減ります。
3. 引き継ぎ資料を項目で請求する
「資料一式」という依頼では抜け落ちます。次のように列挙して請求してください。
- 入居者台帳(契約内容・連絡先・更新履歴)
- 賃貸借契約書の原本または写し、更新合意書
- 敷金・保証金の預り残高の明細と精算状況
- 家賃保証会社・各種保険の契約内容と証券番号
- 滞納および督促の履歴
- 鍵の本数と保管状況、マスターキーの所在
- 建物設備の点検記録、修繕履歴、工事見積・請求書
- 入居者からの苦情履歴と対応結果
- 過去の管理業務報告書(第20条に基づくもの)
ROCKEDGE住まい相談室では、管理委託契約書の業務範囲と、現在起きている事象のどちらに原因があるのかを整理したうえで、改善要求と管理会社変更のどちらから進めるべきかをご一緒に検討しています。お手元の契約書と記録を見ながら整理したい場合は、お問い合わせフォームからご相談内容をお送りください。
なお、管理会社とのやり取りが損害賠償や契約解除の有効性をめぐる争いに発展している場合、また入居者との間で賃料減額や明渡しの問題が生じている場合は、法律上の判断が必要になります。登録を受けた管理業者の法令違反が疑われる事案については、登録行政庁である国土交通省の地方整備局等が相談先になります。
ここで整理した手順は一般的な進め方であり、契約条項の文言・物件の規模・管理の委託形態・入居者との関係によって妥当な打ち手は変わります。個別の事情により異なるため、詳細は専門家へご相談ください。
管理会社の変更はROCKEDGEが承ります
ROCKEDGEはいまの管理会社からの切り替えを、解約予告から引き継ぎまでお引き受けしています。「いまの管理会社に言い出しにくい」「解約できるのか分からない」という段階から構いません。現在の契約書を見せていただければ、解約の可否・時期・引き継ぎの段取りまで具体的にお答えします。無理に切り替えを勧めることはしません。
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