管理会社を変えたいと思っても、実際に動き出せないオーナーは多くいます。理由を聞くと、だいたい次の2つに集約されます。
- 入居者に迷惑がかかるのではないか
- 敷金や書類の引き継ぎでもめるのではないか
どちらも、契約の当事者が誰かを整理すると答えが出ます。
賃貸借契約の相手は、管理会社ではありません
まず押さえておくところです。賃貸借契約はオーナーと入居者の間の契約です。管理会社は、その物件の管理業務をオーナーから委託されている立場にすぎません。
つまり、委託先が変わっても、賃料も、契約期間も、更新の条件も変わりません。新しい管理会社が既存の入居者を審査し直して、気に入らないから出て行ってくださいと言うこともできません。契約の当事者ではないからです。
入居者にとって実際に変わるのは、次の3つだけです。
- 家賃の振込先
- 何かあったときの連絡先
- 更新や退去の手続きをする窓口
この3つを書面で伝えれば、入居者側の手続きは終わります。
手順は5段階です
1. いまの管理委託契約書を読む
最初にやることは、新しい管理会社を探すことではなく、手元の契約書の解約条項を読むことです。見るのは3か所です。
- 解約予告期間は何か月か
- 解約の申入れは書面が必要か
- 違約金の定めがあるか
国土交通省の賃貸住宅標準管理委託契約書では3か月前の解約申入れが標準とされています。ただしこれは標準であって、実際の期間はお手元の契約書の条文によります。半年前と定めている契約もあります。
契約書を開いたついでに、法定の記載事項が入っているかも見ておいてください。国土交通省の立入検査で最も多く指摘されているのが、この管理受託契約書の記載不備です。確認する箇所は「管理委託契約書に法定記載事項は入っていますか」に整理しています。
2. 次の管理会社を先に決める
解約通知を出してから探し始めると、管理の空白期間ができます。入居者からの連絡先が一時的に消えるのが、最も避けたい状態です。
先に受け皿を決めてから、解約を通知します。 順番を逆にしないでください。
3. 書面で解約を通知する
電話や口頭だけで済ませないことです。いつ申し入れたかが後から争いになります。通知は書面で行い、送った事実を残せる方法(配達証明付き内容証明郵便など)を選ぶのが確実です。
4. 引き継ぐものを一覧にする
ここが実務の中心です。次のものを引き継ぎます。
- 賃貸借契約書(全戸分の原本)
- 入居者台帳(連絡先、勤務先、緊急連絡先、保証人)
- レントロール(賃料、共益費、契約期間、更新日)
- 敷金の預り残高一覧
- 家賃保証会社との契約書、加入状況
- 家賃の入金履歴、滞納履歴
- 修繕履歴、設備の保証書
- 消防設備・受水槽などの法定点検報告書
- 鍵(本数を照合する。マスターキーを含む)
5. 入居者へ通知する
管理会社の変更と、新しい振込先・緊急連絡先を書面で通知します。振込先の変更は月末月初をまたぐと事故が起きやすいため、通知から実際の変更日まで1か月程度の余裕をとります。
敷金は、管理会社ではなくオーナーが返す義務を負います
引き継ぎで最ももめやすいのが敷金です。ここは条文がはっきりしています。
民法622条の2は、**敷金の返還義務を負うのは賃貸人(オーナー)**であると定めています。賃貸借が終了して賃貸物の返還を受けたとき、賃貸人は敷金から未払賃料などを差し引いた残額を返還しなければなりません。
管理会社が敷金を預かっているのは、あくまでオーナーの計算においてです。入居者に対する返還義務者はオーナーのままです。
これが意味するのは、前の管理会社から敷金の引き渡しを受けられていないという事情は、入居者への返還を遅らせる理由にならないということです。オーナーが自分の負担で返したうえで、前の管理会社に対して別途請求する形になります。
だからこそ、切り替えの段階で敷金残高一覧を突き合わせ、金額の合意と実際の入金までを確認しておく必要があります。書類が届いたことと、お金が動いたことは別です。
サブリースの場合は、解約しても入居者は残ります
サブリース(一括借上げ)は、オーナーと事業者の間が賃貸借契約になっているため、通常の管理委託契約とは扱いが違います。
見落とされやすいのが、解約した後に入居者がどうなるかです。民法613条3項は、賃貸人(オーナー)と賃借人(サブリース事業者)が賃貸借を合意により解除しても、それを転借人(入居者)に対抗できないと定めています。
つまり、サブリースを合意解約しても入居者はそのまま住み続け、オーナーが貸主の立場を引き継ぎます。入居者と契約を結び直すのではありません。引き継ぐのは、賃貸借契約の内容そのもの、預かっている敷金、そして家賃の入金先です。
サブリースの解約そのものの可否や条件は個別事情によります。法的な判断が必要な段階では、当社顧問弁護士事務所と連携してご案内します(弁護士法72条遵守)。
サブリースの仕組み自体についてはサブリース「家賃保証」の注意点にまとめています。
切り替える前に、原因を切り分けてください
空室が埋まらないから管理会社を変える、という判断はよくありますが、原因が募集にあるのか室内にあるのかを先に切り分けたほうが確実です。確認の順番は空室が3か月埋まらない。管理会社に確認すべき5つのことに書いています。
聞いても数字が出てこない、報告が届かないという状態が続いているのであれば、それは切り替えの理由になります。
管理会社の切り替えのご相談
ROCKEDGEでは、管理委託契約書の確認から、解約時期の逆算、引き継ぎ、入居者への通知までをお引き受けしています。契約書を1枚お見せいただければ、いつから切り替えられるかをその場で確認します。
なお、当社はサブリース(家賃保証)はお受けしていません。管理委託契約でお引き受けし、家賃はオーナーの口座に入ります。他社とのサブリース解約後の受け皿としてのご相談は承ります。
対応エリア: 東京・埼玉・神奈川・千葉(1都3県)/区分1室から